《櫻井ジャーナル》

2015/08/11(火)16:43

日本が米国の侵略にどう関わるかは米支配層が決めることで、安倍首相の約束は何の意味もない

 集団的自衛権が認められた場合、日本はアメリカの命令に従って戦争に参加し、行動することになる。戦争に参加するかどうかはアメリカ支配層の都合次第ということで、安倍晋三首相の「約束」など何の意味もない。  そのアメリカは1992年に世界規模で侵略戦争を始めたが、思惑通りに進まず、もがいている。日本が参加することになる戦争はこれから始まるのではなく、その侵略戦争にほかならない。集団的自衛権を議論するなら、そうした戦争、例えばユーゴスラビア、アフガニスタン、イラクへの先制攻撃、リビアやシリアでの傭兵を使った体制転覆プロジェクト、ウクライナのクーデターなどを直視することから始めねばならないということだ。集団的自衛権に反対だと言いながら、アメリカの侵略から目を背けている人が少なくない。  アメリカが展開中の侵略戦争は1992年にアメリカ国防省で作成されたDPG草案、いわゆる「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」。これは中身が危険だということで草案の段階でリークされ、書き直されているが、そのプランは生き残り、その後の政策決定に影響しているのだが、この話を日本の政治家、学者、記者、編集者といった類いの人びとは取り上げたのだろうか?  このドクトリンが作成される前年、ボリス・エリツィンらを使った工作もあり、ソ連は解体され、消滅した。西側の傀儡であるエリツィンが大統領を務めたロシアはアメリカの属国になり、不正な手段で巨万の富を築いた「オリガルヒ」が登場する一方、庶民は貧困化している。エリツィンは西側の巨大資本だけでなく、国内では犯罪組織、そして日本ではオウム真理教とつながっていた。  一方、中国の場合、支配層の子弟をアメリカへ留学させ、そこでアメリカ流の生き方、つまり強欲を善とする考え方を叩き込んでいるので、自分たちに逆らうことはないとアメリカの支配者たちは思い込んでいたようだ。  ロシアと中国を支配下におき、自分たちは唯一の超大国になったと認識したアメリカの支配層は、DPG草案で新たなライバルの再登場を阻止することを第1の目標だと宣言、旧ソ連のほか、西ヨーロッパ、東アジア、南西アジアを警戒地域に挙げている。  アメリカの好戦派はネオコン/シオニスト、戦争ビジネス、人道的軍事介入派、東欧から移住してきた嫌ソ/嫌露派の4本柱。ネオコンの中心的な存在であるウォルフォウィッツは1991年の段階でイラク、シリア、イランを殲滅すると宣言、嫌ソ/嫌露派は旧ソ連圏の制圧を目指した。戦争ビジネスは軍事的な緊張が高まることが望みで、人道的軍事介入派は嫌ソ/嫌露派と近い関係にある。  2001年からアメリカはウォルフォウィッツ・ドクトリンに基づいて自立した国々を侵略しはじめ、内政面では1980年代から始まったCOGプロジェクトに基づいて憲法の機能を停止させたが、ロシアが再独立、中国もコントロールできていなことに気づく。  それでも、2006年の段階では楽観していたようで、例えば、キール・リーバーとダリル・プレスはロシアと中国の長距離核兵器をアメリカの先制第1撃で破壊できるとする論文をフォーリン・アフェアーズ誌(CFR/外交問題評議会が発行)に書いている。アメリカの好戦派はそう考えていたのだろう。この勢力の命令に従っている日本の「エリート」もそう信じたようで、日本の防衛省幹部の中には、「オフレコの会」で「今なら中国に勝てる」と公言している人もいた。  その2年後、2008年8月にミヘイル・サーカシビリは南オセチアを深夜近くにミサイルで奇襲攻撃、軍事侵攻した。この攻撃を立案したのはイスラエルだと推測する人もいるが、その作戦はすぐに失敗だということが判明する。ロシア軍が素早く反撃、侵攻作戦を粉砕してしまったのだ。  ロシアを属国だと認識していた時期にもアメリカの好戦派は支配システムを築く努力はしていた。ウクライナを支援するために1991年から50億ドルを投資したとビクトリア・ヌランド国務次官補は2013年12月に米国ウクライナ基金の大会で発言している。システムの構築にはNGOを利用している。  この手法はロナルド・レーガン政権が始めた「プロジェクト・デモクラシー」から始まったもので、その中心にあるのが1983年に創設されたのがNED(民主主義のための国家基金)。そこから資金はNDI(国家民主国際問題研究所)、IRI(国際共和研究所)、CIPE(国際私企業センター)、国際労働連帯アメリカン・センターへ流れ、USAID(米国国際開発庁)もCIAの資金を流す上で重要な役割を果たしている。

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