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《櫻井ジャーナル》

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2016.04.22
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 サウジアラビアのサルマン・アル・サウド国王やトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はシリアのバシャール・アル・アサド体制を軍事的に倒す計画を放棄していない。

 この両国やカタールのほか、イギリスやフランスをはじめとする西側諸国はシリアの戦闘を政治的に解決する意思はないとシリアのナーディル・アル・ハルキー首相は主張、4月中旬にはアレッポの北西地域などへトルコから5000名以上の戦闘員が侵入したとも語っている。アメリカのネオコン/シオニストやイスラエルもシリアのアサド体制を破壊しようとしている。

 侵略勢力は戦闘員を送り込むだけでなく、武器/兵器の供給にも力を入れている。ここにきて注目されているのは携帯型の防空システムMANPADだ。2月19日付けシュピーゲル誌に掲載されたサウジアラビア外相へのインタビュー記事によると、戦況を一変させた空爆に対抗するため、地対空ミサイル、つまりMANPADを供給しはじめたという。

 ネオコンの大物、ポール・ウォルフォウィッツがイラクやイランと同じようにシリアを5年以内に殲滅すると語ったのは1991年のこと。彼は国防次官だった。その年の12月にソ連が消滅、翌年の初めにはウォルフォウィッツが中心になって世界制覇プランを国防総省のDPG草案という形で作成、それを危険だと考えた人が政府内にいたようで、有力メディアが報道している。

 この草案はアメリカが「唯一の超大国」なったという前提で書き上げられ、潜在的なライバル、つまり旧ソ連圏、西ヨーロッパ、東アジアなどがソ連のようなライバルに成長することを防ぎ、膨大な資源を抱える西南アジアを支配して真の覇者になることを目指している。。リークによって書き直されたようだが、プラン自体は生き残り、「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」と呼ばれている。

 このドクトリンが作成された2年後、国防大学のスタッフだったマイケル・グリーンとパトリック・クローニンがカート・キャンベル国防次官補を介してジョセフ・ナイ国防次官補やエズラ・ボーゲルに会い、日本が自立の道を歩き出そうとしていると主張、そして発表されたのが1995年の「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」。ここから日本はアメリカの軍事侵略を支援する態勢を整備しはじめ、安倍晋三政権につながる。

 安倍政権を成立させる前に好戦派は大きな問題に直面する。小沢一郎が率いる民主党が政権を握りそうな展開になったのだ。その小沢を事実上の冤罪で排除したのが東京地検特捜部とマスコミ。小沢と親しい鳩山由紀夫が首相になると、強引に引きずり下ろした。事実上のクーデターだ。

 クーデターの一翼を担ったマスコミは国際情勢に関し、ネオコンが作り出す幻影を宣伝してきた。そのマスコミがシリアへ送り込んだ山本美香がアレッポで殺されたのは2012年8月20日のこと。当時、日本の首相は野田佳彦だった。安倍が首相になるのはこの年の12月だ。

 トルコ南部のキリスから国境を越えてアレッポ入りたという。「自由シリア軍」に同行していたと報道されたが、トルコからシリアへ入る地域を支配していたのはトルコの情報機関MITと、その支援を受けているアル・カイダ系武装集団。山本たちが同行した戦闘集団を「反体制武装組織」ともマスコミは表現していたが、これは取材不足による間違いなのか、嘘である。「反体制」ではない。どのようなタグを付けていたかは別としてアル・カイダ系武装集団だったはずで、シリアを侵略している戦闘集団は山本との死を「予定」していたようにも見える。

 この当時、つまり2012年8月にアメリカ軍の情報機関DIAが作成したシリア情勢に関する報告書によると、反シリア政府軍の主力はサラフ主義者(ワッハーブ派)、ムスリム同胞団、そしてアル・カイダ系武装集団のAQIで、西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコの支援を受けているとしている。DIAによると、アル・ヌスラとはAQIがシリアで使っていた名称で、AQIとアル・ヌスラの実態は同じだ。

 本ブログでは何度も書いているようにムスリム同胞団はワッハーブ派の強い影響下にあり、1979年にズビグネフ・ブレジンスキーがアフガニスタンで秘密工作を始めて以来、ワッハーブ派やムスリム同胞団は戦闘集団の主力で、アメリカの軍や情報機関から訓練を受けてきた。

 ロビン・クック元英外相によると、アル・カイダとはCIAから訓練を受けた「ムジャヒディン」のコンピュータ・ファイル。アル・カイダはアラビア語で「ベース」を意味し、「データベース」の訳としても使われている。AQIにしろ、アル・ヌスラにしろ、後に登場するダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)にしろ、傭兵だ。

 2012年から14年までDIA局長を務めたマイケル・フリン中将はアル・ジャジーラのに対し、ダーイッシュの勢力が拡大したのはバラク・オバマ政権が決めた政策によると語っている山本が殺された頃、アメリカ政府はシリア政府軍と戦っている集団がアル・カイダに重なる集団だいうことをDIAから警告されていたと言える。

 以前にも書いたが、山本が同行した武装集団は当時、西側ジャーナリストの死を望んでいた節がうかがえる。例えば、イギリスのテレビ局、チャンネル4の取材チームで中心的な存在だったアレックス・トンプソンによると、彼らは反政府軍の罠にはまり、危うく政府軍から射殺されるところだったという。

 同行していた部隊の兵士はイギリスやドイツなどの情報機関から政府軍の位置は知らされているはずで、その情報に基づいて取材チームを交戦地帯へと導き、政府軍に銃撃させるように仕向けた可能性が高い。トンプソンたちは危険を察知して逃げることに成功したが、危うく殺されるところだった。

 2012年12月13日には、NBCニュースの取材チームが同じシリアで拉致され、5日後に解放されるという出来事があった。チームのひとりで主任外国特派員のリチャード・エンゲルは翌年4月号のバニティ・フェア誌で政府軍と連携している武装勢力が実行したと主張したが、後にその主張を取り下げ、反シリア政府軍につかまっていたと認めた。

 実は、エンゲルらが解放された直後から、拘束したのは反シリア政府軍ではないかという報道もあった。エンゲルも自分たちが携帯していたGPSでNBCの幹部が拉致を察知、その場所が反政府軍の支配している地域であることも認識していたというのだ。しかも拉致したグループと救出したグループの指揮官は一緒。つまり、バニティ・フェア誌の記事は「誤解」ではなく、嘘だった可能性が高いということだ。

 サウジアラビア、トルコ、カタール、イギリス、フランス、あるいはアメリカの好戦派はこうした戦いを続け、戦線を拡大しようとしている。その手先になっている戦闘集団に「同行」という形で日本のマスコミも、少なくとも結果として、協力した過去は消えない。シリアを侵略している勢力は、中国を侵略して泥沼から抜け出せなくなったかつての日本と似ている。もしアメリカの支配層が戦略を転換した場合、日本は以前と同じ状況に陥るだろう。






最終更新日  2016.04.23 03:34:24

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