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《櫻井ジャーナル》

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2016.04.23
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 レジェップ・タイイップ・エルドアンは首相時代、軍幹部、弁護士、学者、ジャーナリストなどを大量摘発した。グラディオ(NATOの秘密部隊)のネットワークによる「クーデター計画」がその口実で、275名が有罪になっている。この判決を最高裁は4月21日に無効とする判決を言い渡した。

 グラディオはイタリアの組織で、1960年代から80年代にかけて「赤い旅団」を装って爆弾攻撃を繰り返していたことで知られている。イタリアは歴史的にコミュニストの影響力が強い国だったが、その爆弾攻撃で「左翼」は大きなダメージを受け、治安体制は強化された。グラディオを動かしていたのはイタリアの情報機関だが、その背後にはCIAが存在している。

 NATO加盟国である以上、トルコにも「NATOの秘密部隊」は存在している。そうした組織を摘発するということはアメリカ支配層と対決することを意味するわけで、エルドアンがそうしたことをするはずはない。アメリカ政府が反発していないことを見てもエルドアン側の主張が嘘である可能性は高い。秘密部隊はエルドアン側についているはずだ。

 ところで、グラディオの存在が表面化する切っ掛けを作ったのはイタリアの子ども。イタリア北東部の森の中にあった武器庫のひとつを偶然、見つけたのだ。発見から3カ月後、カラビニエーレ(国防省に所属する特殊警察)の捜査官が調べていた不審車両が爆発して3名が死亡、ひとりが重傷を負うという出来事が起こる。警察は「赤い旅団」が事件を起こしたとして約200名のコミュニストを逮捕するが、捜査は中断して放置された。(Philip Willan, "Puppetmasters", Constable, 1991)

 その事実に気づいた判事のひとりが捜査の再開を命令、警察が爆発物について嘘の報告をしていたも発覚する。再捜査の結果、使用された爆発物は「赤い旅団」が使っているものではなく、NATO軍が保有しているプラスチック爆弾C4だということも判明、100カ所以上の武器庫が存在している事実もつかんだ。

 追い詰められたジュリオ・アンドレオッチ首相は1990年7月に対外情報機関SISMIの公文書保管庫を捜査することを許可、そこでグラディオの存在が確認され、報告書を出さざるを得なくなったわけだ。このあと、NATO加盟国で同じような秘密部隊が存在、ネットワークを形成していることも明らかになる。その源は第2次世界大戦の終盤、米英の情報機関が編成した破壊活動部隊のジェドバラだ。

 トルコの秘密部隊は、CIAのヘンリー・シャートとデュアン・クラリッジの助言で創設された武装集団「対ゲリラ・センター」だと言われているが、「灰色の狼」も含まれているとする話もある。(Douglas Valentine, “The Strength Of The Pack”, Trine Day, 2008 / Peter Dale Scott, “American War Machine”, Rowman & Littlefield, 2010)1981年5月にローマ教皇ヨハネ・パウロ2世をサンピエトロ広場で銃撃したモハメト・アリ・アジャは「灰色の狼」に所属していた。

 昨年11月24日、トルコ軍のF-16がロシア軍のSu-24を待ち伏せ攻撃で撃墜したが、その際に脱出した乗組員のひとりを地上にいた部隊が殺害している。その殺害を指揮したとされているアレパレセラン・ジェリクも「灰色の狼」に所属していた。ジェリクはトルコ領内で自由に行動していたが、後に逮捕された。

 内部告発支援グループのWikiLeaksによると、この撃墜は10月10日にエルドアンが計画している。撃墜の当日から翌日にかけてポール・セルバ米統合参謀本部副議長がトルコのアンカラを訪問、トルコ軍の幹部と討議していたのも「奇妙な偶然」だ。

 エルドアン大統領を中心とする勢力がサウジアラビアと手を組み、アル・カイダ系武装集団やそこからは派生したダーイッシュ(IS、ISIS、ISILとも表記)を使ってシリアを侵略していることは本ブログで何度も書いてきた。ネオコン/シオニストなどアメリカの好戦派やイスラエルも仲間だ。アル・カイダ系武装集団やダーイッシュも「グラディオのネットワーク」に含まれていると見るべきかもしれない。

 トルコに今でも存在しているであろう「グラディオのネットワーク」はアメリカの支配層に動かされているのであり、エルドアンと結びついていると考えなければならない。このエルドアンが摘発した人びとが「グラディオのネットワーク」に属しているとは考えられない。実際、摘発された軍人は中国との関係を強めていたと伝えられている。

 本ブログでも書いたように、傭兵会社ブラックウォーター(現在の社名はアカデミ)を創設、現在はフロンティア・サービス・グループの会長を務めているエリック・プリンスが3月にトルコを訪れ、MIT(トルコの情報機関)の高官らと会談している。トルコ軍が対応できない事態が生じているのか、その軍を信用できない状況になっていると言われていたが、今回の最高裁判決を見ると、トルコ国内の情勢が大きく変化していると考えざるをえない。





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最終更新日  2016.04.24 05:57:13



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