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《櫻井ジャーナル》

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2016.06.13
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 シリアの「停戦」は終わり、ロシア軍は戦闘機部隊をシリアへ戻しそうだ。シリアとロシア両政府は戦略を見直したのだろう。アメリカの好戦派はバシャール・アル・アサド体制の打倒に執着、この停戦を利用してアメリカの好戦派は侵略部隊に武器/兵器を供給、戦闘員を増派するだけでなく、戦闘能力の高い新部隊を新たに編成してヨルダンからシリア領内へ入れたと伝えられている。アメリカ側はかつて「テロリスト」だとしていたアル・カイダ系の武装集団を「穏健派」だと称し、ロシア側へ攻撃しないように申し入れたとも言われている。ロシア政府はシリアでの戦闘が「第3次世界大戦」へ発展しないように配慮しているようだが、アメリカの好戦派はそれを逆手にとっている。

 トルコからシリアの侵略軍へ伸びている兵站線はロシア軍の攻撃でダメージを受けたものの、まだ存在している。アル・カイダ系武装勢力やそこから派生したダーイッシュへ戦闘員を増派しているだけでなく、アメリカ、イギリス、フランスは自国の特殊部隊員を送り込んでいる。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン体制はシリア領内にクルドの支配地を作り、そこへトルコにいるクルドを移住させるつもりだとも言われている。

 勿論、状況がここにきて急変したわけではない。例えば、2月19日付けシュピーゲル誌に掲載されたサウジアラビア外相へのインタビューでは、シリアの戦況を変えるために地対空ミサイル、つまりMANPADを供給しはじめたと公言、また昨年10月、BBCのフランク・ガードナーはTOW500基を反シリア政府軍へ提供したことをサウジアラビアの高官は認めたとツイッターに書き込んでいる。

 アメリカやサウジアラビアはロシアを経済的に締め上げるため、1980年代に成功した作戦、つまり原油価格の暴落をしかけたと言われている。ところが窮地に陥ったのはロシアでなくサウジアラビアやアメリカだった。

 つまり、アメリカのシェール・ガス/オイル業界が壊滅的なダメージを受け、サウジアラビアでは2014年の財政赤字が390億ドル、15年には980億ドルへ膨らんだという。この状況に変化がなければ、サウジアラビアの金融資産は5年以内に底をつくと予測され、そうなるとドルを支えているペトロダラーの仕組みが崩壊し、投機市場も収縮して金融パニックになる可能性がある。アメリカを中心とする支配システムは崩壊しかねないということだ。

 アメリカ/NATOやサウジアラビアは石油相場を利用した攻撃を諦め、軍事力に絞った可能性が高いのだが、シーモア・ハーシュが2007年3月5日付けのニューヨーカー誌でシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラに対する秘密工作を始めたとして挙げた3カ国、つまり飴零下、サウジアラビア、イスラエルのうちイスラエルはロシアに接近している。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が国防大臣に据えたアビグドル・リーバーマンは狂信的なユダヤ至上主義者だが、ロシア政府とのパイプを持っている。6月7日にはネタニヤフ首相がウラジミル・プーチン露大統領と会談した。重要な問題で何らかの合意があったわけではなく、イスラエルとパレスチナの和平プロセスを進めるべきだと指摘されたようだが、イスラエルがロシアを重視していることは間違いないだろう。

 アメリカの大統領選挙は民主党のヒラリー・クリントンと共和党のドナルド・トランプの争いになりそうだが、クリントンが勝てば、軍事的な緊張はさらに高まる。

 この陣営で最も注目されている人物はヒューマ・アベディン。彼女の母親サレハはパキスタン出身だが、ルーツはサウジアラビア。ムスリム同胞団の女性部門を指導している。ムスリム同胞団のモハメド・ムルシ元エジプト大統領の妻であるナグラ・アリ・マームードと近い。ヒューマ父親であるシードはアル・カイダ系の団体と関係、ヒューマ自身はサウジアラビアがホワイトハウスへ送り込んだスパイだと疑う人もいる。

 アベディンは1996年、ジョージ・ワシントン大学の学生だった時、インターンとしてヒラリーの下で働き始めている。19歳だった。それから20年にわたってヒラリーの国際認識に大きな影響を及ぼしてきた。

 ファースト・レディーだったヒラリーはマデリーン・オルブライトやビクトリア・ヌランドというネオコン/シオニスト系の好戦派とも親しくしていた。夫であるビル・クリントンとは逆の立場だ。ヒューマが結婚したアンソニー・ウィーナーは筋金入りの親イスラエル派/シオニストで、ヒラリーと親しい。ムスリム同胞団とネオコンが敵対関係にあるとは思えない。ちなみに、ウィーナーは下院議員だったが、2011年にセックス・スキャンダルで辞職している。

 ムスリム同胞団は運動であり、統一された組織はないとされているが、エジプトの同胞団員は1954年10月にガマル・ナセル大統領の暗殺を試みて失敗、少なからぬメンバーがサウジアラビアへ逃げ込んだ。そこでムスリム同胞団はワッハーブ派/サラフ主義者(サウジアラビアの国教)の強い影響を受けている。1970年代の終わりにズビグネフ・ブレジンスキーの秘密工作を実行するために編成された戦闘集団の中心メンバーはワッハーブ派やムスリム同胞団だった。

 この構図はその後も大きくは崩れず、DIAが2012年8月に作成された報告書によると、11年春からシリア政府軍と戦っている戦闘集団の主力はAQI、ワッハーブ派、ムスリム同胞団。支援は西側、ペルシャ湾岸諸国、そしてトルコから受けていたとしている。

 ヒラリー・クリントンが大統領に選ばれた場合、彼女のスポンサーである戦争ビジネスや巨大金融資本だけでなく、ネオコン、ワッハーブ派、ムスリム同胞団の強い影響を受けることになる。ヒラリーと親しいヌランドの動きを見れば、ネオ・ナチもここに加わる。そして西側の有力メディアはこの集団を「民主化勢力」と呼ぶのだろう。






最終更新日  2016.06.14 00:47:17


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