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《櫻井ジャーナル》

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2016.07.17
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 オランダのハーグにある「常設仲裁法廷(PCA)」は南シナ海で中国とフィリピンが争っている領有権の問題でフィリピンの主張に沿う仲裁を出したようだ。ちなみに、このPCAは1899年に設立された仲裁機関で、裁判所ではない。国際司法裁判所とは別の組織だ。この問題で仲裁にあたった法律家はアメリカ、フランス、ポーランド、オランダ、ドイツの出身。南シナ海の領有権問題は事実上、中国とアメリカの争いであり、このメンバーを見るだけで結果は明らかだった。マルコ・ポーロの『東方見聞録』くらいは読んでおくべきだったとも揶揄されている。

 この問題をPCAに持ち込んだのはフィリピンの大統領だったベニグノ・アキノ3世。父親は1983年8月にマニラ国際空港で殺されたベニグノ・アキノ・ジュニアで、母親は86年2月から92年6月まで大統領を務めたコラソン・アキノだ。

 コラソンが大統領に就任した1986年2月には、それまでフィリピンに君臨していたフェルディナンド・マルコスがアメリカ軍によってフィリピンの外へ連れ出されている。本ブログではすでに紹介したことだが、この拉致作戦の黒幕はポール・ウォルフォウィッツだと言われている。当時、彼は東アジア太平洋問題担当の国務次官補だった。その直後、4月からインドネシア駐在のアメリカ大使に就任している。

 両親と同じようにベニグノ・アキノ3世はアメリカの支配層と関係が深く、南シナ海の領有権問題で中国と話し合うことを拒否していたが、今年6月に大統領はロドリゴ・ドゥテルテに交代、新政権は中国と話し合いで解決する姿勢を示し、経済関係の修復も図りつつある。ドゥテルテ大統領が中国に会談を申し入れたのは、PCAが仲裁を示す1週間前のことだった。

 領有権問題で中国側は数千年にわたって自分たちが主権を保持してきたと主張しているようだが、この地域は歴史的に何度も支配者が入れ替わり、欧米の植民地にもなっていて複雑な問題を抱えている。当事者が話し合うしかないのだが、それを最も嫌っているのがアメリカだ。

 日本と中国との間でも領有権をめぐる争いがある。言うまでもなく尖閣諸島(釣魚台群島)の問題だが、1972年に田中角栄と周恩来はこれを「棚上げ」にすることで合意した。周は「大同を求めて小異を克服」すべきだと提案、田中は「具体的問題については小異を捨てて、大同につくという周総理の考えに同調する」と応えたとされている。

 これによって日本と中国との交流は進み、日本企業にとって中国は重要な生産拠点、そして消費地になった。ウィン-ウィン、つまり両国にとって好ましい方向へ進んだわけだ。その関係を破壊する動きが日本で表面化したのが2010年9月。「日中漁業協定」を無視する形で尖閣諸島の付近で操業していた中国の漁船を海上保安庁が取り締まったのだ。

 ベニグノ・アキノ3世がフィリピンの大統領に就任したのは、海上保安庁が協定を無視して取り締まる3カ月前の2010年6月。領有権の問題で中国と対決する意思を示すため、2011年には南シナ海を西フィリピン海と呼ぶことを決めている。

 ドゥテルテ政権は中国と話し合う姿勢を示しているが、これでこの海域が平和になるようには見えない。PCAの仲裁を利用してアメリカが軍事的な挑発、例えば軍艦や軍用機をこれまで以上に露骨な形で送り込んでくる可能性が高いからだ。当然、中国もそうした展開を予測、対抗してくると見られている。そこにロシアも絡んでくるだろう。非常に危険な状況へ向かっている。その海域へ安倍晋三政権は足を踏み入れているわけだ。

 6月1日に開かれた官邸記者クラブのキャップとの懇親会で安倍晋三首相は、「安全保障法制」について「南シナ海の中国が相手」だと口にしたという。この話は週刊現代のサイトで取り上げられ、国外でも問題になった。

 ネオコン/シオニストをはじめとするアメリカの好戦派が中東やウクライナで進めている侵略計画は思惑通りに進まず、「同盟国」や「友好国」の離反が始まっている。闇雲に軍事的な圧力を強め、ロシアとの核戦争が現実味を帯びてきたことから危機感を持つ人が増えている。そうした中、アメリカの支配層は東アジアへ「転進」を図っているように見える。この海域が核戦争の発火点になる可能性があるということだ。






最終更新日  2016.07.18 13:53:35

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