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《櫻井ジャーナル》

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2018.03.18
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 ロシア外務省は3月17日にイギリス大使を呼び出し、同国の外交官23名を国外へ追放すると伝えた。該当者は1週間以内に出国するように求められている。また英国文化振興会の閉鎖、サンクト-ペテルブルグのイギリス領事館を再開させる合意を取り消すとも通告されたようだ。


 勿論、これはイギリス政府が行ったロシア外交官23名の国外追放とロシア人の資産凍結に対する報復。ボリス・ジョンソン英外相は、ロシアのエージェントが神経ガスで元GRU(ロシア軍の情報機関)大佐のセルゲイ・スクリパリとその娘のユリアを3月4日に攻撃したと主張しているが、その証拠、根拠は示されていない。自分たちを神だとでも思っているのか、例によって「我々を信じろ」という態度だ。


 スクリパリ親子の事件が起こる3日前、​ロシアのウラジミル・プーチン大統領はロシアやその友好国が存亡の機を招くような攻撃を受けた場合、ロシア軍は反撃するとロシア連邦議会で演説​している。中国、シリア、イランなどが攻撃されたならロシアが報復するということだ。

 その報復手段として、原子力推進の低空で飛行するステルス・ミサイル、海底1万メートルを時速185キロメートルで航行して射程距離は1万キロに達する遠隔操作が可能な水中ドローン、2000キロメートルの距離をマッハ10で飛行、軌道を操作できて正確に目標を捉えられるミサイルであるキンザル、マッハ20で飛行する大陸間ミサイルRS-26ルビエシュを含む兵器を示した。レーザー兵器の存在も明らかにしている。


 アメリカ軍の先制第1撃でロシアと中国の長距離核兵器を破壊できるようになる日は近いとする​キール・リーバーとダリル・プレスの論文​が掲載されたのはフォーリン・アフェアーズ誌の2006年3/4月号。アメリカはロシアと中国との核戦争で一方的に勝てると見通しているのだが、これが間違いだというはアメリカとイスラエルの支援を受けたジョージア軍が2008年、北京オリンピックに合わせて行った南オセチアへの奇襲攻撃で明確になっている。


 ロシア軍は2015年にシリア政府の以来で軍事介入、そこでも戦闘能力の高さを示した。アメリカの高額兵器はロシアの高性能兵器に太刀打ちできない。ロシアやその友好国がアメリカやその同盟国に攻撃された場合、その高性能兵器を報復のために使うとプーチンは宣言したのだ。


 その直前、​アメリカ政府内でシリア攻撃について話し合われた​と伝えられている。アメリカをはじめとする侵略勢力の傭兵がダマスカスを攻撃する拠点にしてきた東グータに対する政府軍の制圧作戦が進む中、それを止めようとする動きがあり、その話し合いはその延長線上にあると言えるだろう。


 攻撃の口実は例によって化学兵器の使用。何度も同じようなストーリーが語られ、その後の調査で否定されてきたが、アメリカはそれを繰り返す。すでに庶民を騙そうという熱意を失い、意味を失った呪文として口にしている。


 アメリカ国務省のヘザー・ナウアート報道官は2月上旬にシリア政府軍が化学兵器を使用したと主張、それを口実にしてアメリカ、イギリス、フランスはダマスカスを空爆する姿勢を見せていたが、アメリカ国防省のダナ・ホワイト報道官はそうしたことを示す証拠を見たことがないと発言、ジェームズ・マティス国防長官は化学兵器を政府軍が使ったとするNGOや武装勢力の主張を裏付ける証拠は確認していないとしている。ドナルド・トランプ政権内で戦争を望んでいるのは国務省とCIAだ。国防長官も納得していないような「おとぎ話」で世界を核戦争で破壊しようとしている。


 マティス国防長官は3月10日、プーチン大統領が3月1日の演説で示した兵器の実戦配備は何年も先だと語った。ショックを和らげようとしたのかもしれないが、その日にロシアはミグ31がキンザルを発射する映像を公表した。このミサイルは昨年12月に発射実験を成功させていると言われ、これが事実ならアメリカを含む西側の軍や情報機関はその時点である程度の性能を把握していただろう。3月10日のテストは無視しようとする西側支配層への警告だとも理解できる。


 ロシア外務省がイギリス大使に外交官追放などを伝えた3月17日、ロシア国防省はアメリカ人教官がタクフィール主義者に化学兵器の使い方を教え、偽旗作戦を実行しようとしていると主張している。シリア政府軍が化学兵器を使ったとしてアメリカ主導軍が直接、シリアを攻撃しようと目論んでいるという警告だ。現代のタクフィール主義者はサラフィー主義から派生、サウジアラビアの支配体制と深く結びついている。


 また、セルゲイ・ラブロフ露外相はシリア国内へアメリカ、イギリス、フランスを含む国々の特殊部隊が侵入、すでに「代理戦争」ではなくなっていると3月17日に語った。こうした国々は2011年3月にシリアへの侵略戦争を始めた当時から特殊部隊を入れているのだが、ロシアはそうした事実を口にしなかった。ロシア政府は西側との話し合いは無駄だと悟った可能性がある。


 特殊部隊をシリアへ侵入させ、空爆を勝手に始めたバラク・オバマ大統領は地上部隊を派遣しないとしていた。が、これが嘘だったことは本ブログでも指摘してきた。手先のダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)やアル・カイダ系武装集団の敗北が見通されるとアメリカ軍は自らがシリアへ侵入、基地を建設してきた。トルコ政府によると、アメリカ軍が建設した基地の数は13だが、その後、ロシアの安全保障会議はアメリカ軍は20カ所に基地を作ったとしている。


 こうした基地をアメリカ軍、イギリス軍、フランス軍だけでなく手先の武装勢力の拠点として利用、周辺のクルド勢力とも連携する計画だったのだが、トルコ軍がシリア北西部のアフリンを攻撃、その計画が揺らいでいる。NATOの一員であり、戦略的に重要な位置にあるトルコとアメリカは戦争するわけにいかず、アフリンのクルドは見捨てられた状況。助けに入ったのはシリア政府側だ。イラクのクルドは指導者たちが1960年代からイスラエルの影響下にあり、イスラエルがイラクを揺さぶる道具として機能していた。シリアのクルドはシリア政府と友好的な関係にあったが、ロシア軍が介入した後、その指導層がアメリカ側の影響下に入ったことで厳しい状況に陥った。


 そうした状況をクルドが理解したなら、アメリカは扱いにくくなる。自分たちが出て行くしかないということだ。イラクに続いてシリアとイランを潰すというプランは1991年にポール・ウォルフォウィッツが口にしていたことを本ブログでもしつこく書いてきた。それがウォルフォウィッツ・ドクトリンにつながり、ジョージ・W・ブッシュ政権の政策になり、9/11によって軍事侵略が始まった。このドクトリンを実現しようとすれば、全面核戦争の可能性は高まる。


 1950年代に具体化したソ連に対する先制核攻撃の計画はジョン・F・ケネディ大統領が反対したこともあって実行されず、「冷戦」という形になった。今回も冷戦に持って行こうとする動きもあるようだが、当時と違ったアメリカに生産能力はない。






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最終更新日  2018.03.18 16:31:08



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