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《櫻井ジャーナル》

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2018.11.13
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 ワシントン・ポスト紙のコラムニストだったジャマル・カショーギは10月2日にトルコのイスタンブールにあるサウジアラビア領事館へ入り、そのまま行方不明になった。その5日後にトルコの警察当局はカショーギが領事館で殺され、細かく解体されて運び出された発表、サウジアラビア政府もカショーギが殺害されたことを認めている。殺害の様子はカショーギ本人が領事館へ持ち込んだアップル・ウォッチで録音され、外にいた婚約者へiPhoneで送信されたという。

 アメリカとイギリスの電子情報機関、つまりNSAとGCHQは全世界の通信を傍受、記録していると言われている。そこで事前にカショーギの命が危ないことを察知していたはずだが、警告はなかった。またカショーギの言動は​イスラエルの会社NSOグループが開発したスパイウェアー、ペガサスによって監視​されていたとエドワード・スノーデンは11月6日に語っている。

 NSOの創設者はイスラエルの電子情報機関8200部隊(ISNU)の出身。私企業を起こす「元隊員」が少ないないのだが、それらの実態は8200部隊と関係の深いフロント企業だと見られている。アメリカでも1970年代後半からCIAは議会の監視の目を避けるために「民営化」を推進してきた。

 トルコ政府が事件を明らかにした直後、アメリカを含め、世界規模でサウジアラビアの現体制に対する批判が高まったのだが、ほどなくして沈静化した。そうした中、トルコ政府は録音された音声をフランス、ドイツ、サウジアラビア、イギリス、そしてアメリカへ渡した。レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、殺害命令がサウジアラビア政府の最高位に就いている人物から出ていると主張している。

 これに対してフランスのジャン-イヴ・ル・ドリアン外相は音声テープを受け取っていないと反論、エルドアン大統領は嘘をついていると発言し、トルコ側の怒りを買った。音声を含む資料は10月24日にフランス政府へ渡したという。そうしたやりとりと並行し、フランスのサイクス・ピコ協定コンビのイギリスはジェレミー・ハント外相をサウジアラビアへ派遣、外相は国王と会談している。

 この問題にはサウジアラビアやシオニストの内部での対立が関係しているが、それだけでなくアメリカの支配システムが関わっている。

 カショーギ殺害の黒幕と言われているモハマド・ビン・サルマン皇太子はドナルド・トランプやイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と近く、カショーギは20歳代の頃、サウジアラビアやアメリカの情報機関、つまりGIP(総合情報庁)やCIA(中央情報局)のエージェントとして活動、ムスリム同胞団のメンバーでもあった。1979年から2001年9月1日、つまり9/11の10日前までGIPの長官だったタルキ・ファイサル・アル・サウドはカショーギのボスだ。タルキの下で働いていたひとりがオサマ・ビン・ラディン。

 このふたりはブレジンスキーがアフガニスタンで実行した秘密工作に参加していたのである。その関係からカショーギとビン・ラディンは親しかった。カショーギがサウジアラビアの奴隷制を支持、ダーイッシュ(イスラム国、IS、ISIS、ISILとも表記)による斬首を賞賛していたことは不思議でない。

 ところで、ジャマル・カショーギはロッキード事件でも登場したサウジアラビアの富豪、アドナン・カショーギの甥に当たる。ウェールズ公妃ダイアナの恋人だったドディ・ファイードは従兄弟だ。ダイアナとファイードは1997年8月31日に自動車事故で死亡している。

 2016年のアメリカ大統領選挙でヒラリー・クリントンが敗北、ドナルド・トランプが勝利するとサウジアラビアの権力バランスも変化、そのひとつの結果として皇太子が交代した。2017年6月、ヒラリー・クリントンと近いホマメド・ビン・ナイェフからモハメド・ビン・サルマンに替わったのだ。

 皇太子の交代から3カ月後にカショーギはサウジアラビアを出国してワシントン・ポスト紙のコラムニストになり、その2カ月後にサウジアラビアでは大規模な粛清が実行された。王族、閣僚や元閣僚、軍人などサルマン皇太子のライバルやその支持者と目される人々が拘束されている。

 粛清された人びとはCIAとの結びつきが強く、ブッシュ一族、ヒラリー・クリントン、そしてネオコンのメンバーを含むアメリカ支配層に支援されていた。アメリカの内部抗争がサウジアラビアでも反映された形だ。

 そこでジャマル・カショーギの事件はアメリカやヨーロッパの一部支配層を激怒させたが、サウジアラビアはドルを支える重要な柱の1本。アメリカはOPEC加盟国に石油取引の決済をドルに限定し、産油国へ集ったドルをアメリカへ還流させる仕組みを1970年代に作った。いわゆるペトロダラーだ。その中心がサウジアラビア。この国の崩壊はドル体制を大きく揺るがすことになり、それはアメリカの支配システムを壊すことになりかねない。そうした展開になることを防ぐため、アメリカ、イギリス、フランスといった国はカショーギの事件を有耶無耶にし、沈静化させようとしている。







最終更新日  2018.11.13 21:53:25

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