《櫻井ジャーナル》

2018/12/15(土)09:14

辺野古での新基地建設は米国の世界制覇プランに基づく戦争の準備

 日本政府は12月14日、沖縄県名護市辺野古のアメリカ軍キャンプ・シュワブ南側の沿岸部に土砂を投入し始めたという。アメリカ軍の「普天間飛行場を移設」するためだとしているが、これは口先だけで、「新基地建設」が実態だろう。 首相だった橋本龍太郎と駐日大使のウォルター・モンデールが普天間基地の返還合意を発表したのは1996年4月。その前年にアメリカ兵が少女を暴行するという事件が引き起こされ、それが「移設」の口実に使われた。 1995年は日本がアメリカの戦争マシーンへ組み込まれる節目の年である。その年の2月にアメリカの国防次官補だったジョセイフ・ナイが「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表、国連中心主義の立場を放棄してアメリカの単独行動を容認するように求めている。 ナイ・レポートが発表された翌月20日に帝都高速度交通営団(後に東京メトロへ改名)の車両内でサリンが散布され(地下鉄サリン事件)、同月30日に警察庁長官だった國松孝次が狙撃されて重傷を負っている。 8月27日付けのスターズ・アンド・ストライプ紙には、1985年8月12日に墜落した日本航空123便に関する記事が掲載された。その当時、大島上空を飛行していたアメリカ軍の輸送機C-130の乗組員だったマイケル・アントヌッチの証言に基づいている。記事の内容は割愛するが、自衛隊の責任を示唆するものだった。 基地へ戻ったアントヌッチたちに対し、アメリカ軍の上層部は墜落に関する話をしないように命令したが、その10年後にアメリカ軍の準機関紙にその話が掲載された。軍の上層部が許可したということだ。 1994年6月に長野県松本市で神経ガスのサリンがまかれた事件(松本サリン事件)を含め、日本政府を震撼とさせる出来事が相次いでいる。 当時、アメリカは1992年2月に作成された世界制覇プランに基づいて動き始めていた。1991年12月にソ連が消滅するとネオコンはアメリカが唯一の超大国になったと認識し、他国に配慮することなくアメリカが単独で行動できる時代が来たと考えた。 その考えに基づき、国防総省のDPG草案という形で作成したのだ。当時、国防次官だったポール・ウォルフォウィッツが中心になって書き上げられたことからウォルフォウィッツ・ドクトリンとも呼ばれている。 ソ連を消滅させる決定はロシア大統領だったボリス・エリツィンが行ったが、この人物はアメリカなど西側支配層の傀儡。ソ連は解体され、ロシアはシティやウォール街の属国になって略奪されることになる。 ネオコンが次に潰す相手と考えたのは中国。そこで東アジア重視を打ち出す。明治維新以来、アングロ・サクソンが中国を侵略する拠点として使う国は日本にほかならない。こうした流れの中で「普天間飛行場移設」が浮上したのである。その先には中国との戦争が見える。 ここで詳しくは書かないが、ナイ・レポート以降、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれ、自衛隊はアメリカの傭兵になりつつある。アメリカは中東や北アフリカで侵略の道具としてジハード傭兵、つまりアル・カイダ系武装集団やダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)と似たような役割を求められている。 アメリカ支配層の戦略に合わせ、安倍晋三政権は戦争体制を整えてきた。「民意」など無視した強引なことを繰り返してきたが、そうしたことが可能な態勢を作る上で重要な役割を果たしたのが検察、マスコミ、そして野党だ。 ネオコンの戦略を実行する上で障害になりそうだった鳩山由紀夫内閣が2009年9月に成立するが、そうした展開を見越して2006年には鳩山の同志的な存在だった小沢一郎に対するメディアの攻撃が始まる。 例えば、週刊現代の2006年6月3日号に「小沢一郎の“隠し資産6億円超”を暴く」という記事が掲載された。2009年11月には「市民団体」が陸山会の政治収支報告書に虚偽記載しているとして小沢の秘書3名を告発、翌年の1月に秘書は逮捕された。また「別の市民団体」が小沢本人を政治資金規正法違反容疑で告発している。マスコミと検察がタッグを組み、小沢を潰しにかかったと言える。そして民主党の菅直人政権と野田佳彦政権は自爆した。 「普天間飛行場移設」はアメリカが中国と戦争するための準備の一環だと考えるべきだろう。21世紀に入ってロシアが再独立、バラク・オバマ政権は2014年2月にウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを成功させたが、その結果、中国とロシアは戦略的な同盟国になった。中国との戦争はロシアとの戦争にもなる。状況は大きく変化したのだが、アメリカの好戦派は武力を利用した制圧の方針を変えていないようだ。

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