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《櫻井ジャーナル》

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2019.03.23
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 イスラエルでは4月9日に選挙が予定されている。現在の第1党は120議席のうち30議席を占めるリクード。この党を率いているのがベンヤミン・ネタニヤフ首相だが、同国の司法当局はネタニヤフを汚職容疑で起訴する意向だと伝えられている。選挙を前にしてネタニヤフは逆風にさらされている。そうした中、ドナルド・トランプ米大統領はイスラエルのゴラン高原における主権を認める時期だと表明したわけだ。

 アメリカ議会でもゴラン高原におけるイスラエルの主権を認めるべきだとする動きがある。例えば、昨年12月にはふたりの上院議員、つまりテッド・クルーズとトム・コットンがイスラエルのゴラン高原における主権を認めることを求める​決議案​を提出している。

 ところで、2016年の大統領選挙でトランプ陣営に対する最大のスポンサーはカジノ経営者でネタニヤフと親しいシェルドン・アデルソンだった。ラスベガス・サンズなどを経営している人物で、ラスベガスのほか、ペンシルベニア、東南アジアのマカオとシンガボールにカジノを持っている。​2013年11月には自民党の細田博之に対して東京の台場エリアで複合リゾート施設を作るという構想の模型を披露しながらスライドを使って説明​したという。細田は2010年に発足した国際観光産業振興議員連盟(IR議連)、いわゆるカジノ議連の会長だ。

 ところで、ゴラン高原は1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領したシリア領。この戦争は同年の3月から4月にかけてイスラエルがゴラン高原のシリア領にトラクターを入れて土を掘り起こし始めるなどしたところから始まる。

 イスラエルはシリアに対して軍事的な挑発を行ったわけだが、イスラエルの思惑通りに軍事的な緊張は高まり、イスラエルがシリアを攻撃すると信じていたエジプトのガマル・ナセル大統領は5月15日に緊急事態を宣言して2個師団をシナイ半島へ入れてイスラエルとの国境沿いで防衛態勢をとらせた。21日には10万の予備軍に動員令を出し、22日にアカバ湾の封鎖を宣言している。

 イスラエルはこの封鎖を「イスラエルに対する侵略行為」と主張し、モサドのメイール・アミート長官がアメリカへ乗り込む。帰国したアミート長官は6月3日に開かれた秘密会合でリンドン・ジョンソン米大統領が開戦を承諾、イスラエルの撤兵を求めることもないと説明している。

 そして6月5日にイスラエル軍はエジプトに対して空爆を開始、第3次中東戦争が勃発するのだが、この時にアメリカ空軍は4機の偵察機RF4Cをドイツからスペインのモロンへ移動させ、さらにイスラエルのネゲブにある基地でイスラエル軍の航空機のように塗装を替えている。そのRF4Cはエジプトの地上軍がどのように動いているかを偵察、撮影してイスラエルへ渡していた。

 この戦争でアメリカ軍は情報収集船リバティをパレスチナ沖へ派遣しているのだが、その船をイスラエル軍はアメリカの艦船だということを知った上で攻撃している。その攻撃で乗組員9名が死亡、25名が行方不明になり、171名が負傷した。

 この攻撃を事前にジョンソン政権が承認していた疑いもある。ジョンソン政権で秘密工作を統括していた「303委員会」で1967年4月にフロントレット615という計画が説明されている。リバティを潜水艦と一緒に地中海の東岸、イスラエル沖へ派遣するとされているのだが、そのリバティを沈没させ、責任をエジプト、あるいはソ連の押しつけて戦争を始めようとしたと疑いがあるのだ。サイアナイド作戦と呼ばれている。

 リバティは攻撃で多くの死傷者を出したが、沈没は免れ、生存者もいた。そのためにイスラエルが攻撃したことを隠せなくなり、アメリカ政府とイスラエル政府は「誤爆」を主張する。この出来事を隠蔽する工作の責任者はジョン・マケイン・ジュニア(ジョン・マケイン上院議員の父親)だった。アメリカやイスラエルの交信を記録したNSAのデータは廃棄されている。

 戦争によるイスラエル軍の占領は無効だとする国連安保理決議242が1967年11月に可決されているが、その後もイスラエルは不法占領を続けた。そのひとつがゴラン高原だ。

 イスラエルがゴラン高原を占領する大きな理由は3つある。ひとつは戦略的な重要性。シリアを含む周辺を監視、攻撃することが容易になる。最近でもイスラエル軍機はゴラン高原を盾のように使ってシリアを攻撃した。

 第2は水源。言うまでもなく、人間は水なしに生きていくことができない。飲料水というだけでなく、農業にも水は絶対に必要。日本で水道の私有化を進めようとしている理由もここにある。私的な権力が日本を支配しようとしているのだ。

 第3はエネルギー資源。イスラエル政府はジェニー・イスラエル・オイル・アンド・ガスなる会社に対し、ゴラン高原の南部396.5平方キロメートルの地域で油田開発することを許可したのだが、その親会社はジェニー・エナジー。その戦略顧問会議のメンバーにはリチャード・チェイニー元米副大統領、メディア界の大物であるルパート・マードック、ジェームズ・ウールジー元CIA長官、ラリー・サマーズ元財務長官、そしてジェイコブ・ロスチャイルドが含まれている。

 国連安保理決議242はあるものの、「国際社会」はイスラエルの不法占拠に対して有効な手段を講じていない。日本のマスコミが言う「国際社会」はアメリカを指すので当然かもしれないが、国連も「制裁」していない。民間でイスラエルに対してBDS(ボイコット、資本の引き揚げ、制裁)運動が広がると、アメリカではそうした運動を禁止しようとする動きが議会で起こる。

 中東でもサウジアラビアをはじめ、イスラエルと友好的な関係を結んでいる国は少なくないが、それはエリート層の話。庶民は違う。ゴラン高原の主権問題はイスラエルとシリアの軍事的な緊張にとどまらず、中東全域を不安定化させる可能性があるのだが、今、中東で劣勢のアメリカはそれを望んでいる可能性がある。






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最終更新日  2019.03.23 15:47:14



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