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《櫻井ジャーナル》

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2019.03.25
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 アメリカのドナルド・トランプ米大統領がシリア領のゴラン高原におけるイスラエルの主権を認める時期だと表明した頃、​マイク・ポンペオ国務長官​はイスラエルを訪問していた。そこで同長官はクリスチャン放送網のインタビューを受け、その中でトランプ大統領が現れたのはイランの脅威からユダヤの民を救うためなのかと聞かれる。その答えは「キリスト教徒として、それは確かにありえると思う」だったという。

 ポンペオはマイク・ペンス副大統領と同じようにキリスト教系カルト(ファンダメンタリスト)で、トランプ大統領がアメリカ軍にシリアから撤退するように命じたときは激しく反発していた。その命令にはペンスとポンペオだけでなく、アメリカの有力メディアや議員たちも同じように反発していた。

 バラク・オバマ政権の政策は東部シリア(ハサカやデリゾール)にサラフ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)の支配国を作ることになる可能性があると2012年8月にDIAは警告していたが、その当時のDIA長官、マイケル・フリンをトランプは国家安全保障補佐官に任命した。そのフリンを有力メディアや議会は激しく攻撃、2017年2月に解任される。その直後の3月、​トランプ大統領を排除してペンス副大統領を後釜に据えるという計画​があるとする情報が流れた。

 1991年当時、国防次官だったネオコン(イスラエル至上主義の一派)のポール・ウォルフォウィッツはイラク、シリア、イランを殲滅すると口にしていた。これはウェズリー・クラーク元欧州連合軍(現在の作戦連合軍)最高司令官の話。(​ココ​や​ココ​)

 ネオコンは1980年代にも似たことをホワイトハウスで主張していた。イラクのサダム・フセイン政権を倒して親イスラエル体制を樹立、シリアとイランを分断して両国を殲滅すると言っていたのだが、ジョージ・H・W・ブッシュ副大統領(当時)などイラクをペルシャ湾岸産油国の防波堤と考えるグループと対立、スキャンダルが発覚する一因になった。

 キリスト教系カルトがイスラエルへ接近したのは1970年代のこと。ネオコンがアメリカで政治の表舞台へ出てくる時期、つまりジェラルド・フォード政権と重なる。ベトナム戦争でアメリカ軍が苦しんでいた1967年に引き起こされた第3次中東戦争でイスラエル軍が圧勝、カルトの信者たちはそこに新たな「神の軍隊」を見たようだ。

 キリスト教の「新約聖書」は何人かが書いた文書を集めたもので主義主張に違いがあるわけだが、その中で最も強い影響力を持っているのが「ヨハネの黙示録」。そこで日本語版を読んだことがあるのだが、おどろおどろしい妄想にしか思えなかった。

 新約聖書を研究している田川健三によると、黙示録にはふたりの人物、つまり原著者と編集者によって書かれた文章が混在している。ギリシャ語の能力が全く違い、思想も正反対であることから容易に区別できるという。原著者は初歩的な文法についてしっかりしているのに対し、編集者の語学力は低く、知っている単語や表現をまるで無秩序に並べ立てただけだというのだ。(田川健三訳著『新約聖書 訳と註 第七巻』作品社、2017年)

 この説明を読み、黙示録の支離滅裂さの理由がわかった。本当の問題は語学力ではなく、その思想の違いにあるのだ。元の文章を書いた人物はすべての民族、すべての言語の者たちを同じように扱い、ユダヤ人の存在そのものが意識されていないのだが、元の文章に加筆した人物は極端に偏狭なユダヤ主義者で、異邦人は神によって殺し尽くされると考えている。

 後のキリスト教は異邦人を異教徒に読み替え、侵略、破壊、殺戮、略奪を繰り返してきた。十字軍の中東侵略やアメリカ大陸での先住民殲滅と略奪は勿論、ピューリタンはカトリックの信者が多いアイルランドなどへ攻め込み、アジアやアフリカも植民地化して殺戮と破壊の限りを尽くした。

 そうした流れの中、中国(清)を略奪するために始めたのがアヘン戦争であり、イギリス(シティ)は兵力の不足を補うために日本人を傭兵として使った。その戦略はアメリカ(ウォール街)が引き継いでいる。

 ポンペオ長官のトランプ大統領に関する話が事実だったとしても、驚くほどのことではない。アメリカとはそういう国なのである。






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最終更新日  2019.03.25 17:29:23



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