《櫻井ジャーナル》

2019/06/16(日)18:00

ホルムズ海峡周辺での戦乱で原油価格が高騰、米石油産業が潤っても社会は崩壊

 オマーン沖でタンカーを攻撃したのはイランだとアメリカ政府は批判、イギリス政府が同調しているのだが、証拠はない。ドイツの外相や国連事務総長がイラン批判に参加しないのはアメリカの支配層が信頼されていないからだ。 世界制覇を目指すネオコンは支配の重要な要素であるエネルギー資源を独占するため、中東を制圧しようとしてきた。その手始めとしてイラクのサダム・フセイン体制を倒そうとしたのだ。これは1980年代に言われていた。 フセイン体制を倒してイラクに親イスラエル国を築き、トルコ、イラク、ヨルダンという親イスラエル国帯を作り上げようとしたのである。当時、トルコは親イスラエルと見なされていた。この帯で自立志向の強かったシリアとイランを分断、両国を個別撃破するということだ。 ベンヤミン・ネタニヤフを含む大イスラエルを目指す勢力にとってもイランは制圧の重要なターゲット。宗教的なライバルであるサウジアラビアもイランの破壊を目指している。 ドナルド・トランプ政権はイランを倒すために同国の石油輸出を阻止しようと考え、世界の国々を脅している。イランの石油をホルムズ海峡から外へ出さないということだろうが、イランはアメリカがイラン産原油の輸出を阻止するなら、ペルシャ湾から石油を誰も運び出せなくすると警告している。 イラクでの経験から考え、​イランを占領するためにアメリカ軍は約240万人を導入する必要があるとも推計​されている。予備役を投入してもアメリカ軍にそれだけの戦力はない。核攻撃で破壊するという手段もあるが、そうなると人類の存続が問題になる。 アメリカ軍がイラン占領を目指さなくてもペルシャ湾からの石油輸出は難しくなるだろうが、それだけでなくサウジアラビアなども無傷ではいられない。当然、原油相場は暴騰する。 中東から石油が手に入らなくなり、価格が暴騰するとアメリカの石油産業が復活するという見方がある。コストの高いアメリカのシェール・ガスやシェール・オイルがビジネスになるということだが、こうした展開はロシアも経済的に潤す。ベネズエラの石油をアメリカが支配できていれば、アメリカの立場はさらに強くなっただろうが、これは失敗した。 言うまでもなく、原油価格が高騰すれば石油を使う産業はダメージを受け、アメリカ社会も大きな影響を免れない。

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