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《櫻井ジャーナル》

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2019.09.22
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 ドナルド・トランプ米大統領が解任したジョン・ボルトン国家安全保障補佐官が話し合いを潰してきたのはイランにとどまらず、東アジアの軍事的な緊張も高めてきた。​アメリカのとの実務者協議で主席代表を務める金明吉(キム・ミョンギル)は9月20日に解任を歓迎すると語った​という。

 今年(2019年)2月27日と28日にかけてベトナムのハノイで実施されたアメリカと朝鮮の首脳会談で合意に至らなかった原因はボルトンやマイク・ポンペオ国務長官にあると言われている。このふたりはマイク・ペンス副大統領と同じように相手は自分たちに屈服するべきだという典型的なアメリカ型の思考をする。

 朝鮮側の説明によると、​朝鮮が制裁を部分解除する条件として核施設の廃棄を提示したところ、アメリカはそれを拒否して核プログラムの完全的な廃棄を要求、さらに生物化学兵器も含めるように求めた​のだとされている。全面降伏の要求であり、朝鮮側が受け入れるはずはない。それを承知での要求、つまり交渉を潰そうとしたのだろう。

 朝鮮半島の非核化でアメリカは3モデルを提示している。リビア・モデル、ドイツ・モデル、ベトナム・モデルだ。

 リビアの場合、アメリカがイラクを先制攻撃した2003年にムアンマル・アル・カダフィ政権が核兵器や化学兵器の廃棄を決定したところから始まる。アメリカは「制裁」を解除するはずだったが、アメリカは約束を守らずに「制裁」は続いた。そして2010年にバラク・オバマ大統領はムスリム同胞団を使った侵略計画(PSD11)を作成、リビアは侵略され、現在は暴力が支配する破綻国家だ。

 ドイツの場合、アメリカ政府とソ連政府が東西ドイツの統一で合意したところから始まる。交渉でアメリカの国務長官だったジェームズ・ベイカーはソ連のエドゥアルド・シェワルナゼ外務大臣に対し、統一後にNATOが東へ拡大することはないと約束した。これは記録に残っているのだが、アメリカは約束を守らない。すでにNATO軍はロシアの玄関先まで到達、軍隊を駐留させ、ミサイルを配備してロシアを恫喝、軍事的な緊張は高まっている。

 ベトナムの場合、戦争でアメリカに勝利したものの、国土は惨憺たる状態。アメリカ軍による「秘密爆撃」ではカンボジアやラオスでも国土が破壊され、多くの人々が殺された。戦闘では通常兵器だけでなく、化学兵器の一種である枯れ葉剤(エージェント・オレンジ)やナパーム弾が使われ、CIAのフェニックス・プログラムでは人々が殺され、共同体は破壊されたのである。

 ところが、ベトナムはIMFなどに要求された政策、つまり新自由主義を受け入れることになった。いわば「毒饅頭」を食べさせられたのだ。その理由のひとつは1991年12月のソ連消滅だろう。ベトナム戦争中にアメリカ側が行った犯罪的な行為は不問に付され、ベトナムの庶民は低賃金労働者として西側巨大資本の金儲けに奉仕させられている。

 この3モデルを受け入れるということは、アメリカに全面降伏することを意味している。金正恩やその側近たちが「お人好し」、あるいは私的な利益のために国を売り飛ばそうとしているのでないかぎり、そうした提案に乗らないだろう。

 朝鮮半島で軍事的な緊張が緩和されはじめたのは2018年4月27日のこと。韓国の文在寅大統領と朝鮮の金正恩労働党委員長が板門店で会談したのである。

 ソ連が消滅した直後の1992年2月にウォルフォウィッツ・ドクトリンが作成され、アメリカは世界に残された自立した国を潰しにかかるのだが、その前提はロシアが西側巨大資本の属国になったということ。2001年9月11日の出来事を利用してアメリカは侵略戦争を本格化させるが、その時期からロシアは再独立、ウォルフォウィッツ・ドクトリンの前提が崩れた。それにもかかわらずアメリカは侵略戦争を続行、自らを苦境へ追い詰めることになった。

 来年は大統領選挙の年でもあり、トランプはイランや朝鮮で何らかの成果がほしいだろうが、その障害になっているのがボルトン。この人物を解任することで話し合いを再開させる糸口を作ろうとしたのかもしれない。戦争は大統領選挙の後、ということだ。

 ボルトンの後任に選ばれたチャールズ・クッパーマンはネオコンと兵器産業と深く結びついていることで知られ、そうした意味でヒラリー・クリントンに近い存在。ボルトンとは2016年の大統領選挙より前から緊密な関係にあったと言われている。ボルトンが解任されても情況に大きな変化はないのだが、それでもボルトンというタグが外される意味は大きい。実際、朝鮮は姿勢を変化させた。

 しかし、2018年4月の板門店における首脳会談の背後にはロシアや中国が存在している。その前月に金委員長は特別列車で北京へ入り、釣魚台国賓館で中国の習近平国家主席と話し合う。そして板門店での会談だ。

 今年8月にアメリカ軍と韓国軍が合同軍事演習を実施、朝鮮は反発して韓国との和平交渉の継続を拒否、ミサイル発射実験を実施した。その直後に朝鮮人民軍総政治局の金秀吉(キム・スギル)局長を団長とする代表団が北京を訪問、中国と朝鮮の軍事的なつながりは一層、強化されると伝えらている。

 ロシアが朝鮮にアプローチしたのはさらに早く、2011年の夏にはドミトリ・メドベージェフ首相がシベリアで朝鮮の最高指導者だった金正日と会っている。その際、ロシア側は110億ドル近くあったソ連時代の負債の90%を棒引きにし、鉱物資源の開発などに10億ドルを投資すると提案している。朝鮮は資源の宝庫。豊かになれる可能性を秘めた国なのだ。そのためには主権を維持、植民地化を防がなければならない。

 ロシアや中国はユーラシア大陸に鉄道網を張り巡らせ、エネルギー資源を運ぶパイプラインを建設しようという計画を持っている。朝鮮が同意すれば、朝鮮半島を縦断する鉄道とパイプラインを建設できる。

 これらは中国の中国の一帯一路(BRI/帯路構想)とつながる。人間や物資を陸上で運ぼうという計画で、これは海路を支配して内陸国を締め上げるというイギリスやアメリカの伝統的な戦略を揺るがすものだ。その海上支配も最近では揺らいでいる。

 ロシアの提案を金正恩の父にあたる金正日は受け入れたのだが、2011年12月に急死。朝鮮の国営メディアによると、12月17日に列車で移動中に車内で急性心筋梗塞を起こして死亡したというが、韓国の情報機関であるNIS(国家情報院)の元世勲院長(2009年~13年)は暗殺説を唱えていた。

 板門店で韓国と朝鮮の首脳が会談する直前、軍事的に大きな出来事があった。その13日前、アメリカ軍、イギリス軍、フランス軍はシリアに向けて100機以上の巡航ミサイル(トマホーク)を発射、その7割がロシア製の防空システムで無力化されてしまったと言われている。

 その1年前、2017年4月7日にはアメリカ海軍が地中海に配備していた2隻の駆逐艦、ポーターとロスから59機の巡航ミサイル59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射、その6割が無力化されている。

 2017年の攻撃はトランプ大統領と中国の習近平国家主席がフロリダ州でチョコレート・ケーキを食べている最中に実行された。アメリカ側としては中国を恫喝するつもりだったのだろうが、逆効果だった。

 アメリカが仕掛けたミサイル攻撃はロシアの防空システムが優秀だということを示すことになったが、それを朝鮮の指導部も見ていたはず。アメリカに対する恐怖心は和らいだことだろう。

 ロシアのウラジミル・プーチン大統領は自分の計画を進めるにあたり、きちんとした手順を踏もうとする。アメリカと朝鮮の話し合いは必要だと考えているはずだが、その話し合いがアメリカを中心として動くと考えるべきではない。






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最終更新日  2019.09.22 15:28:23



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