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《櫻井ジャーナル》

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2019.11.12
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 トルコ内務省は11月8日、拘束しているダーイッシュ(イスラム国、IS、ISIS、ISILとも表記)戦闘員のうちヨーロッパ出身者を国外へ追放すると発表した。そのトルコでシリア市民防衛(SCD、通称「白いヘルメット」)創設者のジェームズ・ル・ムズリエが11月11日に死亡、注目されている。

 その3日前、ロシア外務省の広報官、マリア・ザハロワはル・ムズリエをイギリスの対外情報機関、つまりMI6に所属していたと指摘したうえで、「アル・カイダ」と彼がどのように関係していたかを明らかにするよう求めていた。以前からル・ムズリエはMI6の「元」エージェントだと指摘されていた人物で、SCDはジハード傭兵の医療部隊だとも指摘されている。

 ダーイッシュが売り出されたのは2014年だった。アメリカをはじめとする外国勢力がシリアのバシャール・アル・アサド政権を倒す目的で侵略戦争を始めたのは2011年3月。リビアより1カ月遅れだ。

 その年の10月にリビアのムアンマル・アル・カダフィ体制は倒され、カダフィ自身は惨殺された。リビアではNATO軍が空爆、地上ではアル・カイダ系のLIFGを中心とする戦闘集団が政府軍と戦っていた。カダフィ体制が崩壊した後、戦闘員は武器と一緒にトルコ経由でシリアへ移動したのである。

 その段階でNATO軍がアル・カイダ系戦闘集団と手を組んでいることを知る人が増え、その事実が西側の有力メディアでも伝えられた。それに対し、バラク・オバマ米大統領は自分たちが支援しているのは「穏健派」だと主張するようになる。

 その​オバマ政権の「穏健派支援」を危険だと警告したのがアメリカ軍の情報機関DIAだった​。オバマ政権が支援している武装勢力はサラフィ主義者やムスリム同胞団が主力で、政府軍と戦っている集団としてアル・ヌスラ(AQIと実態は同じだと指摘されていた)の名前を挙げている。シリアの反政府軍に穏健派は存在しないということであり、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるともDIAは警告していた。


 その警告通り、2014年にサラフィ主義者の支配地域が出現する。そのサラフィ主義者、つまりダーイッシュは自らの残虐さをアピール、世界の人びとにショックを与えた。そのショックを利用してアメリカ軍はシリア政府の承認を得ないままシリア領内で空爆を始める。

 DIAがオバマ政権の「穏健派支援」が危険だと警告した頃、つまり2012年8月にオバマ大統領は軍事介入の「レッド・ライン」として生物化学兵器の使用を掲げ、同年12になると国務長官だったヒラリー・クリントン国務長官がアサド大統領は化学兵器を使う可能性があると語った。

 そして2013年1月29日付けのデイリー・メール紙には、イギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールに、オバマ政権がシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつける作戦をオバマ大統領が許可したという記述があるとする記事が載った。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除された)その後、西側の政府や有力メディアはシリア政府軍が化学兵器を使ったという宣伝を展開する。

 そうした中、2013年3月にル・ムズリエはトルコでSCDを編成し、訓練を始めた。公開された映像からそのメンバーは医療行為の訓練を受けていないと指摘する人もいる。

 SCDのメンバーがアル・カイダ系武装集団と重複していることを示す動画や写真の存在、アル・カイダ系武装集団が撤退した後の建造物でSCDと隣り合わせで活動していたことを示す証拠などがバネッサ・ビーリーやエバ・バートレットらによって確認されている。

 設立資金の30万ドルはイギリス、アメリカ、そして日本から得たという。その後、西側のNGOやカタールを経由してアメリカ政府とイギリス政府から1億2300万ドルが渡ったとされている。

 ル・ムズリエはイギリス軍の元軍人で、2000年に退役、その後オリーブ・グループという傭兵組織の特別プロジェクトの幹部になった。この組織は後にアカデミ(ブラックウォーターとして創設、Xeに改名、現在に至る)に吸収されている。

 2008年に彼はオリーブ・グループを離れてグッド・ハーバー・コンサルティングへ入り、アブダビを拠点として活動し始めるのだが、この段階でもイギリスの情報機関と緊密な関係を維持している。







最終更新日  2019.11.12 18:31:24



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