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《櫻井ジャーナル》

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2019.12.12
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 シリア市民防衛(SCD、通称「白いヘルメット」)の創設者で、イギリスの対外情報機関MI6の「元」オフィサーと言われているジェームズ・ル・ムズリエが死亡したのは11月11日のことだった。自殺とされていたが、ここにきて他殺説が強まっている。

 トルコでの報道によると、​ル・ムズリエは2階の窓から傾斜のある屋根へ出て10メートルほど歩き、7メートルほど下の道路へ落下​している。当初、妻は夫が睡眠薬を飲んで午前1時半から2時半の間にベッドへ入ったとしていた。死んだのはその3時間から4時間後。死んだ時に着ていた服は寝る前と同じで、腕時計も外していなかった。

 ル・ムズリエは2013年3月にトルコでSCDを編成、訓練を始めたとされているが、そのメンバーがアル・カイダ系武装集団と重複していることは早い段階から指摘されていた。そうしたことを示す動画や写真の存在するのだ。

 その前年、2012年の8月にアメリカ軍の情報機関DIAはバラク・オバマ政権が支援している武装勢力はサラフィ主義者やムスリム同胞団が主力だとする​報告書​をホワイトハウスへ提出している。その中で政府軍と戦っている戦闘集団としてアル・ヌスラ(AQIと実態は同じだと指摘されていた)の名前を挙げ、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告していた。その警告が2014年にダーイッシュ(イスラム国、IS、ISIS、ISILとも表記)という形で現実なったのである。


 DIAの報告書がホワイトハウスへ提出された2012年8月、オバマ大統領はシリアに対する直接的な直接的な軍事介入のレッド・ラインは生物化学兵器の使用だと宣言した。12月には国務長官だったヒラリー・クリントンがシリアのバシャール・アル・アサド大統領は化学兵器を使う可能性があると語っている。

 そして2013年1月29日付けのデイリー・メール紙には、イギリスの軍事関連企業ブリタム防衛の社内電子メールにオバマ政権がシリアで化学兵器を使ってその責任をアサド政権に押しつける作戦を大統領が許可したという記述があるとする記事が載る。(同紙のサイトからこの記事はすぐに削除された)

 実際、3月にアレッポで爆発があって26名が死亡、そのときに化学兵器が使われたという話が流れた。シリア政府は侵略軍であるジハード傭兵が使用したとして国際的な調査を要請、それに対してイギリス、フランス、イスラエル、そしてアメリカは政府軍が使ったという宣伝を展開する。

 そうした中、イスラエルの​ハーレツ紙​は攻撃されたのがシリア政府軍の検問所であり、死亡したのはシリア軍の兵士だということを指摘してシリア政府軍が使ったとする主張に疑問を呈した。国連独立調査委員会メンバーだった​カーラ・デル・ポンテ​も反政府軍が化学兵器を使用した疑いは濃厚だと発言している。

 その後、アメリカをはじめとする国々は化学兵器話を繰り返すが、その「情報源」としてSCDは利用されてきた。

 2015年9月末にシリア政府の要請でロシア軍が攻撃を始めてからジハード傭兵の支配地域が急速に縮小、武装集団が撤退した後の建造物でSCDと隣り合わせで活動していたことを示す証拠などがジャーナリストのバネッサ・ビーリーやエバ・バートレットらによって確認されている。

 そうした事実が明らかにされたこともあり、ロシア外務省の広報官を務めるマリア・ザハロワは11月8日にル・ムズリエをイギリスの対外情報機関、つまりMI6に所属していたと指摘、「アル・カイダ」と彼がどのように関係していたかを明らかにするよう求めたわけだ。アメリカなど侵略勢力にとってル・ムズリエは自分たちにとって都合の悪い話を知りすぎた人物であり、その死は好都合だっただろう。






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最終更新日  2019.12.12 03:56:32



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