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《櫻井ジャーナル》

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2020.01.01
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 イラク軍の指揮下にあるPMU(人民動員軍)の部隊がアメリカ軍に攻撃され、戦闘員25名以上が殺されたことを受け、バグダッドにあるアメリカ大使館の周囲で数千人が抗議活動を繰り広げていると伝えられている。

 アメリカ大使館がある場所は警備の厳しい通称「グリーン・ゾーン」にある。大使館員は避難、アメリカ軍の「危機対応特別目的海兵空地任務部隊」がクウェートから派遣されたようだ。

 抗議のために集まった人の中にはPMUの隊員も含まれてとする話も流れているが、イラク国民がアメリカに良い感情を持っていないことは確かだろう。イラク政府も同じだ。2006年5月から14年9月までイラクの首相を務めたノウリ・アル・マリキもそうしたひとり。ダーイッシュ(IS、ISIS、ISIL、イスラム国とも表記)の創設でバラク・オバマが重要な役割を果たしたとマリキは2019年2月24日にイラクの地方局で語っている。

 マリキによると、2013年に反シリア政府軍の部隊がシリアとイラクの国境沿いに集結していることを示す航空写真などの情報をアメリカは示していたという。当然のことながら、アメリカ軍はそうした武装勢力の動きを監視していたわけだ。

 本ブログでは何度も書いてきたが、アメリカのバラク・オバマ大統領は2010年8月にPSD-11を出し、ムスリム同胞団を手先に使って中東から北アフリカにかけての地域を制圧しようとした。そして「アラブの春」が始まる。

 その段階でマリキ政権はジハード傭兵、つまりムスリム同胞団やサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)を中心とする武装勢力の動きを懸念、アメリカ政府に対してF-16戦闘機を供給するように要請、契約した。

 マリキはF-16でオバマ政権が手先にしているジハード傭兵を攻撃しようとしていたわけで、契約は守られなかった。新たな支援要請も断られ、ヘリコプターの部品なども手に入らなくなる。

 2011年10月にリビアでアメリカ/NATO軍と手先のアル・カイダ系武装勢力はムアンマル・アル・カダフィ体制を崩壊させ、カダフィ自身を惨殺、その後に戦闘員と武器/兵器をシリアへ移動させた。戦力をシリアへ集中させたわけだ。

 そうした行為の危険性をホワイトハウスに警告したのがアメリカ軍の情報機関DIAだった。その時のDIA局長がマイケル・フリン中将である。

 DIAが提出した報告書には、​シリアで政府軍と戦っている武装勢力の中心がサラフィ主義者やムスリム同胞団だと指摘されていた​。つまり「穏健派」ではない。アル・カイダ系とされるアル・ヌスラ(AQIと実態は同じだと指摘されていた)の存在も記述されている。ちなみにアル・ヌスラの主力はサラフィ主義者やムスリム同胞団だ。

 そうした警告を無視する形でオバマ政権はシリアの「過激派」を支援、懸念されたようにシリア東部からイラク西部にかけての地域がダーイッシュによって支配されるようになる。

 2015年8月、アル・ジャジーラの番組でダーイッシュの勢力を拡大させた責任を問われたフリンは自分たちの任務は正確な情報を提出することにあると反論、​その情報に基づいて政策を決定するのはバラク・オバマ大統領の役目​だと指摘した。

 アメリカがジハード傭兵を編成、戦力を増強していることを理解していたマリキ政権は2013年6月、ロシアに支援を要請して受け入れられた。数日のうちに5機のSu-25近接航空支援機がイラクへ運び込まれている。素早い対応だった。

 2014年にダーイッシュが売り出された。その年の1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言され、6月にはモスルが制圧された。その際にトヨタ製の真新しい小型トラック「ハイラックス」を連ねてパレード、その様子は撮影され、世界に配信された。

 その間、​2014年3月にマリキ首相はサウジアラビアやカタールが反政府勢力へ資金を提供していると批判​していたが、その背後にはアメリカがいただろう。ジハード傭兵の動きをアメリカの情報機関や軍は衛星や航空機による偵察、通信傍受、古典的な人間による情報収集などでダーイッシュの動きを把握していたはずで、ダーイッシュのパレードは絶好の攻撃目標。ところがアメリカ軍は動かなかった。ジハード傭兵の危険性を警告していたフリンはその年に退役へ追い込まれている。

 ダーイッシュが速いペースで支配地域を拡大できた一因として、一部のイラク軍幹部が戦闘を回避したことが挙げられている。武器/兵器を置いて逃げたのである。マリキ首相もそのように認識していたようで、何人かの将軍を解任した。

 2014年4月に行われた議会選挙ではそのマリキを党首とする法治国家連合が勝利した。通常ならマリキが首相を続けたはずだったが、フアード・マアスーム大統領はハイダル・アル・アバディを指名した。アメリカ政府の意向だと言われている。アメリカ政府はイギリスのマンチェスター大学で博士号を取得したアバディをコントロールできる人物だと見ていたのだろう。

 2015年にオバマ政権は国防長官や統合参謀本部議長を交代させ、好戦シフトをとる。リビアと同じようにNATO軍の航空機とジハード傭兵の地上部隊が連携してシリアに対する本格的な軍事侵略を始めるという雰囲気が出てきた9月30日、ロシア軍がシリア政府の要請で介入、ジハード傭兵の支配地域は急速に縮小していく。

 こうした展開を見たイラク政府はロシア政府に対し、​シリアで行っているような空爆をイラクでも実施するように求めるかもしれないという報道​もあった。

 アメリカの支配層はイラクでも従属度が高いとみられる人物を首相の座に据えてきたが、思惑通りには進んでいない。似たことはイランでも行われて失敗している。

 フセインを排除して親イスラエル派の体制を樹立しようとして親イラン政権を出現させ、その親イラン政権を潰すためにフセイン派の残党と手を組んだのだが、混乱が収まる気配は感じられない。親イスラエル派体制を樹立するというプランを放棄し、シリア、イラク、イランを含むイスラエル以外の中東全域を「石器時代」にしようとしているのかもしれない。







最終更新日  2020.01.01 14:21:34



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