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《櫻井ジャーナル》

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2020.01.27
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 リビアの戦乱に終止符を打とうという動きが出ている。今年に入り、1月12日からの停戦を目指す話し合いがモスクワで実施されたのもそうした動きのひとつ。

 しかし、前途多難ではある。トリポリを拠点とするGNA(国民合意政府)のファイズ・サラージは署名したものの、ベンガジを拠点とするLNAのハリファ・ハフタルは署名せずに立ち去ってしまう。そこで1月19日にベルリンで停戦を目指す会議が開かれた。

 国連が承認しているのはGNAだが、LNAのハフタルは1960年からCIAに保護されてきた人物で、彼に従う武装グループはアメリカで軍事訓練を受けている。

 LNAはペルシャ湾岸の産油国やエジプトの支援を受け、捕虜になったLNAの空軍幹部によると、その​エジプトがF-16戦闘機でトリポリやミスラタのGNA軍を空爆している​という。その幹部によると、フランスの専門家チームが偵察、通信傍受、兵站活動を指揮しているともいう。

 それに対し、トルコがGNAを支援するため、2019年5月頃から戦闘部隊をリビアへ派遣しているとも言われている。トルコは2011年3月から始まったシリア侵略にムスリム同胞団を中心とする武装勢力を送り込んでいたのだが、その武装勢力がシリアのイドリブに取り残されて扱いに苦慮している。

 トルコ政府はシリアの戦乱を終息させるため、その武装勢力をリビアへ移動させるという見方もあるのだが、それによって戦闘が激しくなる可能性があるだろう。

 しかし、リビアで新たな戦争が始まろうとしているとは言えない。2011年2月から戦乱は続いているのだ。その戦乱を引き起こしたのはアメリカ政府を操ってきたネオコン(シオニストの一派)にほかならない。アメリカ、イギリス、フランス、サウジアラビア、イスラエル、カタール、トルコといった国々がリビアを破壊し、問題を生み出したのだ。その侵略戦争に西側の有力メディアが協力したことも忘れてはならない。

 ネオコンの戦略に基づいてジョージ・W・ブッシュ政権がイラクを正規軍で先制攻撃したのが2003年3月。その攻撃によってサダム・フセイン政権は倒され、中東で地獄の門が開いた。

 イラクでの戦争によって親イスラエル派の体制を樹立することがネオコンのプランAだったが、失敗する。イランに近い政権が誕生したのだ。そこでアメリカ政府はイラクを「石器時代」にするというプランBへ切り替える。ブッシュ政権は​2007年のはじめ、スンニ派の武装勢力を使った傭兵戦へ向かって進み始めた​のだ。的として想定されたのはシリア、イラン、そしてレバノンのヒズボラ。


 2009年にアメリカ大統領となったバラク・オバマはブッシュ政権の方針を引き継ぎ、2010年8月にPSD-11を出してムスリム同胞団を主力とする体制転覆プロジェクトを始めた。編成された武装集団はムスリム同胞団のほかサラフィ主義者も参加することになる。

 リビアへの軍事侵攻にはフランスやイギリスも積極的に関与している。2011年3月上旬にイギリスは「外交チーム」をリビアへ送り込むが、その実態は破壊活動、秘密工作を専門とするSAS(特殊部隊)やMI6(対外情報機関)の集団。このチームはベンガジから約30キロメートルの地点で反政府軍に拘束されるが、2日後に解放され、帰国している。

 この段階で戦闘は激しくなっていたが、アル・カイダ系戦闘集団のLIFGを主力とする地上部隊だけで政府軍に勝つことは難しい。そこで2011年3月17日に国連の安全保障理事会は飛行禁止空域の導入を決議した。これによってアメリカ、イギリス、フランスをはじめとするNATO軍はシリア上空での制空権を握ることになり、空爆が始まる。

 NATO軍は8月20日に首都攻撃を開始、ムハンマド・アル・カダフィは首都トリポリから故郷シルテへ向かうのだが、そのシルテも10月20日に攻略され、カダフィは惨殺された。その数週間前からNATOはカダフィの動きを正確に把握していたと言われている。

 そして反カダフィ軍による宗教的な弾圧、虐殺、民族浄化が始まるが、その一方で戦闘員や武器/兵器がシリアへ運び込まれていたことは本ブログでも繰り返し書いてきた。

 例えば、2011年11月には元アムネスティ・インターナショナル事務総長で国連事務総長特別代表だったイアン・マーティンがアル・カイダ系戦闘員1500名をリビアからトルコへ「難民」として運んだとも報告されているほか(Thierry Meyssan, “Before Our Very Eyes,” Progressive Press, 2019)、12月になると​マークの消されたNATOの軍用機​がトルコの軍事基地へ武器を運んできたと報道されている。

 こうした侵略戦争による殺戮と破壊の結果、リビアは暴力に支配される破綻国家になった。教育、医療、電力料金が無料、農業は元手なしで始めることができるという国だったリビアは無残なことになっている。ヨーロッパを上回る生活水準を維持していたリビアは地上から消え、今は暴力が支配する破綻国家だ。

 リビアのカダフィ体制を破壊した大きな理由のひとつと考えられているのは、カダフィがアフリカを欧米から自立させようとしていたこと。自分たちの通貨体制を作りだし、ドルやフランによる支配から抜けだそうとしたのだ。アフリカの資源を盗むことで自分たちの社会を維持している欧米の支配層にとっては深刻な事態だ。

 ​フィナンシャル・タイムズ紙によると​、リビアの中央銀行が保有する金の量は少なくとも143.8トンあった。ウィキリークスが公表したシドニー・ブルメンソールからヒラリー・クリントンへあてた2011年4月2日付け電子メールによると、リビア政府が保有していた金の量は143トン。同量の銀も保有していたという。カダフィはこの金は利用し、ディナールというアフリカ共通の通貨を導入しようとしていたのだ。









最終更新日  2020.01.27 13:38:40



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