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《櫻井ジャーナル》

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2020.03.01
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 シリア西部のイドリブでシリア政府軍とトルコ軍が戦闘状態に入っている。その過程でトルコ軍部隊が攻撃されて数十人が死亡したが、その後、トルコ政府はNATOへ支援を要請した。加盟国への攻撃はNATO全加盟国への攻撃と見なすという取り決めに基づくものだ。

 シリアで政府軍と戦っている武装集団はバシャール・アル・アサド政権の打倒を目指す外国勢力が送り込んだジハード傭兵だった。クルド軍が出てくるのは2015年9月末にロシアがシリア政府の要請で軍事介入、ジハード傭兵を敗走させてからのことだ。

 そのジハード傭兵が支配する最後の地域がイドリブ。昨年8月にロシアを訪問したトルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はウラジミル・プーチン露大統領に対し、配下の武装集団タハリール・アル-シャームの解体を約束、地域を正常化することで両国は合意したと言われているが、実現していない。その月の下旬にはトルコ領へ逃げ込もうとしてトルコ軍に押し戻された戦闘員がエルドアンを「裏切り者」と罵り、大統領の写真を焼という出来事もあったという。反発する武装集団を12月までトルコ政府は説得しようと試みたものの、不調に終わる。それを見たシリア政府軍は攻撃を開始したと考えられている。

 トルコ政府は12月後半にイドリブから約3万人の戦闘員をリビアへ移動させはじめていたが、2500人を運んだところで中断する。1月19にベルリンでリビアに関する会議が開かれ、停戦、武器の禁輸、政治的なプロセスへの復帰などが決められたが、その影響だと見られている。

 会議の裏側で何が話し合われたか不明だが、その後、トルコはロシアとの戦争に向かった動き始める。その幕開きとも言える出来事がトルコを後ろ盾とする武装勢力によるロシア軍将校の暗殺。アレッポで2月1日に4名が殺されたのだ。

 シリア政府軍がイドリブ南部を支配するタクフィール主義者の武装背力SNAを攻撃、その地域の相当部分を奪還するが、それに対し、約400名のトルコ軍部隊がSNAを支援するために南部へ向かう。

 ​その部隊の車列をシリア政府軍のSu-22戦闘爆撃機2機が空爆​、兵士が道路脇の建造物へ避難すると、その建造物をロシア軍のSu-34戦闘爆撃機が破壊した。33名から55名のトルコ軍兵士が殺されたという。それだけでなく、ロシア軍は地中海へ2隻のフリゲート艦を派遣したと伝えられている。トルコ軍が戦闘をエスカレートさせた場合、イドリブのトルコ軍を全滅させるという脅しだろう。そしてトルコ政府はNATOに支援を求めたわけだ。トルコ政府はロシアがNATO加盟国を攻撃しないと思っていたのかもしれない。


 EUを脅すため、トルコは難民を使ってきた。トルコにいる難民をEUへ押し出した場合、その人数次第でEUはパニックになる。

 2011年10月、リビアでムアンマル・アル・カダフィ体制を倒した後、アメリカをはじめとする侵略勢力はジハード傭兵と武器/兵器をトルコ経由でシリアへ運んでいた。アムネスティ・インターナショナルの元事務総長で国連事務総長特別代表だったイアン・マーティンによると、アル・カイダ系戦闘員1500名がリビアからトルコへ「難民」として運ばれている。トルコにいる難民の中には相当数の戦闘員が含まれているはずだ。(Thierry Meyssan, “Before Our Very Eyes,” Progressive Press, 2019)

 輸送の拠点になっていたのがベンガジのアメリカ領事館。その領事館が2012年9月11日に襲撃され、クリストファー・スティーブンス大使が殺されている。大使はその前日に領事館でCIAの工作責任者と会談、その翌日には海運会社の代表と会っている。

 こうした工作が知られると、バラク・オバマ大統領は穏健派を支援しているのだと弁明するが、それをアメリカ軍の情報機関DIA(国防情報局)が否定する。2012年8月の段階で否定、​その政策の危険性を指摘する報告書を政府へ提出​した。

 その報告書はシリアで政府軍と戦っている主力をサラフィ主義者やムスリム同胞団だとし、戦闘集団としてアル・カイダ系のアル・ヌスラ(AQIと実態は同じだと指摘されていた)の名前を挙げていた。それだけでなく、オバマ政権の政策はシリアの東部(ハサカやデリゾール)にサラフィ主義者の支配地域を作ることになるとも警告している。

 それを無視してオバマ政権は反シリア政府軍への支援を継続、2014年1月にイラクのファルージャで「イスラム首長国」の建国が宣言された。宣言したのはサラフィ主義者だ。

 その勢力は6月にモスルを制圧するが、その際にトヨタ製小型トラック「ハイラックス」の新車を連ねた「パレード」を行う。その様子を撮影した写真が世界に伝えられ、広く知られるようになるが、そうしたパレードは格好の攻撃目標だが、アメリカ軍は動かなかった。勿論、偵察衛星、無人機、通信傍受、人間による情報活動などでアメリカの軍や情報機関は武装集団の動きを熟知していたはずだ。







最終更新日  2020.03.01 15:03:25



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