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《櫻井ジャーナル》

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2021.03.03
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 ​アメリカはロシアに対する新たな「制裁」を課そうとしていると伝えられている​。今回、その口実として利用されているのはアレクセイ・ナワリヌイを巡る話だ。西側では「民主派」として宣伝され、一部の人にからはスター扱いされているナワリヌイだが、ロシアでの支持率は2%にすぎない。ロシア人からは相手にされていないのだ。

 そのナワリヌイは2013年7月にロシアの法廷で横領執行猶予付きの有罪判決を受け、翌年にも別の件で有罪になった人物。ところが執行猶予の条件を破って出国、今年1月17日に帰国、逮捕、収監された。今年2月2日に懲役3年半が言い渡されたが、自宅に軟禁されていた期間が除かれるので、実質は2年半になる。

 不法出国の理由として「神経ガスによる攻撃」が宣伝されている。つまり、2020年8月20日にシベリアのトムスクからモスクワへ航空機で移動しているときにナワリヌイは倒れて昏睡状態になり、シベリアの都市オムスクへ緊急着陸、そこの病院で治療を受けて回復したのだ。その直前、彼は側近6名を伴ってシベリアを訪問していた。

 回復したナワリヌイを彼の側近はドイツへ不法出国させ、そこから「神経ガス」キャンペーンが始まる。毒を盛られたと最初に主張したのはドイツ軍の研究機関。「ノビチョク(初心者)」なる神経ガスが使われたとも言われているが、その毒性は別の神経ガスVXの10倍だと宣伝されている。VXガスの致死量は体重70キログラムの男性で10ミリグラムなので、ノビチョクは1ミリグラムということになる。大変な毒薬のように思えるが、なぜか人を殺すことができない。

 今年2月5日にジョセップ・ボレルEU外務安全保障政策上級代表(外相)がモスクワを訪問、セルゲイ・ラブロフ露外相と会談したが、その際にボレルはナワリヌイを釈放するように求め、ラブロフに軽くあしらわれている。ボレルは帰国後、対応が甘かったと批判されたが、その背後にジョー・バイデン政権を操っている私的権力がいるだろう。

 ナワリヌイ自身、アメリカの私的権力と深く結びついている。彼はアメリカのエール大学で奨学生として学んでいるが、この留学を手配をしたのはマイケル・マクフォール。2012年1月には大使としてモスクワに赴任するが、​その3日後にロシアの反プーチン派NGOの幹部が挨拶に出向いている​。2月に予定されていたロシアの大統領選挙に対する工作を指揮することが任務だったと見られている。その2年前の8月、ムスリム同胞団を使って中東から北アフリカにかけての地域でアメリカ支配層にとって目障りな体制を転覆させるためにPSD-11をバラク・オバマ大統領は承認したが、その計画を作成したチームにマクフォールは含まれていた。

 また、ナワリヌイの妻の父親、ボリス・アブロシモフはロンドンにおけるロシア人の財産を管理している銀行家で、元KGB。ロシアの富豪で元KGBのアレクサンダー・レベデフの同僚だという。

 ナワリヌイはビル・ブロウダーという人物から資金援助を受けてきたと言われている。ブロウダーはシカゴで生まれたが、ボリス・エリツィン時代にヘルミテージ・キャピトルをロシアで設立して大儲けした。エリツィン時代にはクレムリンの腐敗勢力と手を組んでロシア国民の資産を盗み、巨万の富を手にした若者がいる。オリガルヒだ。その背後にはミハイル・ゴルバチョフを操っていたKGBの上層部が存在、そのひとりがKGBの頭脳と言われ、政治警察局を指揮していたフィリップ・ボブコフだとされている。こうしたKGBの腐敗分子はジョージ・H・W・ブッシュをはじめとするCIA人脈とつながっていた。(F. William Engdahl, “Manifest Destiny,” mine.Books, 2018)

 不正な手段で手に入れた資産をロシアから持ち出すために使われた銀行の中にリパブリック・ナショナル銀行ニューヨークがある。この銀行を創設したエドモンド・サフラはプラウダーと共同でヘルミテージ・キャピタル・マネージメントなる会社を創設した。

 1991年12月にソ連が消滅する直前、ゴスバンク(旧ソ連の国立中央銀行)には2000トンから3000トンの金塊が保管されていたが、400トンに減っていることが判明した。CIAとKGBの腐敗グループが盗んだと見られているが、その金塊横領でもサフラの名前が出てくる。なお、この金塊の行方を追った金融調査会社のジュールズ・クロール・アソシエイツは不明だとしているが、この調査会社とCIAとの緊密な関係は有名だ。

 ヘルミテージ・キャピタルはモスクワの法律会計事務所ファイアーストーン・ダンカンと契約、その事務所で税金分野の責任者だったのがセルゲイ・マグニツキー。この人物を弁護士だとする人もいたが、実際は会計士だ。受託者はHSBC(昔は香港上海銀行と呼ばれた)だった。

 ​ECHR(欧州人権裁判所)が2019年8月に出した判決​によると、捜査対象になっていたマグニツキーがイギリスのビザを請求、キエフ行きのチケットを予約、しかも登録された住所に彼が住んでいないことが判明したためだという。その捜査は正当なもので、政府高官の不正をマグニツキーやブラウダーが主張し始める数年前から当局はふたりを脱税容疑で調べ始めている。そして2009年11月、マグニツキーは獄中で死亡した。

 マグニツキーは心臓に持病があり、適切な医療が受けられなかったと考えられているが、彼の妻も直接的な死因は心臓病だと考えているようだ。(Andrey Nekrasov, “The Magnitsky Act. Behind the Scenes,” 2016)適切な医療が受けられなかった可能性が高いのだが、それはロシアの刑務所におけるシステム的な問題。マグニツキーの事件だけの個別的な問題ではない。

 この死を利用してブラウダーは反ロシアの法律をアメリカで制定することに成功、さらに宣伝映画を作ろうと決める。そこで監督として雇われた人物がプーチンに批判的なことで知られていたアンドレー・ネクラソフだ。

 ところが、調査を進めたネクラソフはブラウダーの話が事実に反していることに気づく。不正を内部告発したのはブロウダーの会社で働いていた女性で、脱税はブロウダーが行っていたという事実を知ったのだ。しかも、その不正にマグニツキーは金庫番として関わっていたことも判明した。ネクラソフはその事実をドキュメンタリーの中に盛り込んだためにブロウダーと対立、作品を西側で公開することが困難になる。

 ブラウダーは2013年7月に脱税で懲役9年の判決を受け、ロシア当局は2017年10月にブラウダーを国際手配。それにアメリカ議会は反発、インターポールはロシアの手配を拒否した。

 ところで、ナワリヌイのシベリア訪問に同行、ただひとりロシアの警察による事情聴取要請を拒否して2020年8月22日に出国したマリーナ・ペブチフという女性がいる。1987年にロシアで生まれ、イギリスの永住権を持っている。

 ロシアでの報道によると、ペブチフがナワリヌイの活動に合流したのは2009年で、その当時、イギリスの国会議員のアシスタントをしていた。2010年にはモスクワ・ロモノソフ大学を卒業、現在はイギリスやオーストラリアで書店チェーンを経営している。彼女は反ウラジミル・プーチンの富豪、ミハイル・ホドルコフスキーやイエブゲニー・チチバルキンと親しいと言われているので、資金的な後ろ盾はしっかりしているのだろう。

 ジョー・バイデン大統領はジョージ・W・ブッシュ政権やバラク・オバマ政権と同様、ロシアへの経済戦争を激化させようとしているわけだが、これはEUに対する圧力でもある。EUを完全に従属させようとしているのだろう。COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)のパンデミック騒動で政治経済が麻痺し、余裕がなくなっている現在は絶好のタイミングだとアメリカの私的権力は考えているだろう。






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最終更新日  2021.03.03 08:24:30



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