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《櫻井ジャーナル》

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2021.03.17
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 アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官とロイド・オースチン国防長官が3月15日に来日し、翌日には茂木敏充外相と岸信夫防衛相に会い、その後に開かれた記者会見でブリンケン長官は中国の「威圧的で攻撃的な姿勢」を批判した。オースチン国防長官はミサイルで有名なレイセオンの重役を務め、ブリンケン国務長官はCSISのシニア・フェローだった人物。

 言うまでもなく、「威圧的で攻撃的な姿勢」を示しているのはアメリカにほかならない。本ブログでは繰り返し指摘しているように、遅くとも20世紀初頭、おそらく19世紀から続くイギリスの長期戦略はユーラシア大陸の周辺部を支配し、内陸部を締め上げていくというもの。最終的にはロシアを制圧し、世界の覇者になるというプランだ。

 この長期戦略を引き継いだのがアメリカで、ジョージ・ケナンの「封じ込め政策」やズビグネフ・ブレジンスキーの「グランド・チェスボード」もその理論に基づいている。

 こうした米英の戦略に対抗するため、ロシアはシベリア横断鉄道を建設し、今ではパイプラインや道路を建設して対抗している。中国が打ち出している「一帯一路」は「海のシルクロード」と「陸のシルクロード」で構成され、「海のシルクロード」の東端が南シナ海から東シナ海にかけての海域だ。

 2015年6月、総理大臣だった安倍晋三は赤坂にある赤坂飯店で開かれた懇親会で​「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」​と口にしたというが、これはアメリカの手先として日本は中国と戦いますということを意味している。

 南シナ海を支配できれば中国の海運をコントロールでき、中東からのエネルギー資源輸送を断つこともできる。中国がミャンマーでパイプラインを建設、パキスタンでも輸送ルートを建設しようとしている理由もそこにある。ミャンマー情勢は理解するためには、こうした背景を頭に入れておく必要がある。現在の混乱を利用し、中国のミャンマー・ルートをアメリカは潰そうとするだろう。

 米英の長期戦略を知れば、彼らにとって日本は重要な場所にあることがわかる。日本列島から琉球諸島、そして台湾へ至る弧状に並ぶ島々はアメリカにとって重要な意味を持つ。

 イギリス系の私的権力は中国を侵略するためにアヘン戦争を仕掛け、一応勝利したが、内陸を支配することはできなかった。それだけの戦力がなかったからだ。そのイギリスの支援を受けてクーデターを成功させたのが長州や薩摩を中心とする勢力。明治政府がイギリス政府や同国を拠点とする巨大資本と関係が深くなるのは必然だった。

 クーデターで実権を握った薩長は明治体制を樹立、続いて琉球を併合し、台湾へ派兵、李氏朝鮮の首都を守る江華島へ軍艦を派遣して挑発する。そして日清戦争、日露戦争へと進んだ。当時も今も日本の役割に大きな差はない。

 日本は米英の支配下にあり、今後も彼らの手先として動くことになるのだろうが、その他の東アジア諸国は日本のようには従属していない。日本がイギリスの従属国であるオーストラリアがRAA(相互アクセス協定)を結ぶのはそのためだろう。

 この協定は日本とオーストラリアの軍事演習や軍事作戦を迅速に行うためのもので、グローバルNATOを視野に入れている。NATOの事務総長を務めるイェンス・ストルテンベルグはNATO2030なるプロジェクトを始めると今年6月8日に宣言、NATOの活動範囲を太平洋へ広げ、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、そして日本をメンバーにする計画を明らかにした。ただ、ニュージーランドや韓国がどう動くかは明確でない。

 21世紀に入り、世界支配を目指すアメリカに足並みをそろえている国の代表的な国はイギリスやフランス。​フランスは潜水艦を、イギリスは空母を中心とする艦隊をそれぞれ東アジアへ派遣​している。そのほかカナダは1月に自国の戦艦を台湾海峡へ派遣した。

 アメリカが新疆ウイグル自治区の「人権問題」を宣伝している理由も南シナ海や東シナ海の話と共通している。この自治区は「陸のシルクロード」の要衝なのだ。

 ここには約1000万人のイスラム教徒が住んでいるが、その中へサラフィ主義者(ワッハーブ派、タクフィール主義者)やムスリム同胞団が入り込んでいる。中東や旧ソ連圏でアメリカなどの手先として活動してきた、つまりアル・カイダ系戦闘集団の主力だ。

 2018年には約100万人のウイグル人が再教育キャンプへ送り込まれ、約200万人が再教育プログラムに参加させられていると「人種差別削減委員会」のゲイ・マクドーガルが発表した。

 この委員会は人種差別撤廃条約に基づいて設置されたNGO。国連の機関ではない。マクドーガルが信頼できる情報源としているのは​CHRD(中国人権防衛ネットワーク)​だ。このCHRDの情報源は8名のウイグル人にすぎない。

 CHRDと並ぶウイグル問題の情報源はキリスト教系カルトの信者であるエイドリアン・ゼンズ。「神の導き」でコミュニズムと戦っているというタイプの人間だ。1993年にアメリカ政府が設立した「コミュニズムの犠牲者記念基金」でシニア・フェローとして中国問題を研究していた。

 この基金を創設したのはレフ・ドブリアンスキーとヤロスラフ・ステツコである。ステツコはウクライナでナショナリストを自称していたステファン・バンデラ派、つまりOUN-Bのナンバー2だった。この組織は第2次世界大戦中、ナチスと関係があり、ステツコも例外ではない。ナンバー3だったミコラ・レベドは第2次世界大戦が勃発した1939年にゲシュタポ警察学校へ入学している。

 1946年に彼はイギリスの情報機関MI6のエージェントになり、ABN(反ボルシェビキ国家連合)の議長に就任している。この団体は1966年にAPACL(アジア人民反共連盟/後のアジア太平洋反共連盟)と合体、WACL(世界反共連盟)になった。WACLはその後、WLFD(自由民主主義世界連盟)に改名された。

 ゼンズが「100万人説」の根拠にしているのは亡命ウイグル人組織がトルコを拠点にして運営している「イステクラルTV」。そこに登場するETIM(東トルキスタン・イスラム運動)のメンバーが情報源だが、このETIMはアメリカ政府や国連の安全保障理事会もアル・カイダ系だとしていた。

 この組織から推計1万8000名がシリアへ戦闘員として送り込まれている。戦闘員の一部は新疆ウイグル自治区からカンボジアやインドネシアを経由、トルコの情報機関MITの手引きで戦闘員としてシリアへ入ったようだ。ETIMの政治フロントがTIP(トルキスタン・イスラム党)だ。

 日本の過去と現状を考えると、アメリカの主張に同調することが個人的な利益につながることは明白だろう。安全だとも言える。事実を尊重しようとするなら、それはアメリカの私的権力が定めた枠からはみ出すことになり、不利益につながる。






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最終更新日  2021.03.17 09:00:05



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