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《櫻井ジャーナル》

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2021.04.07
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 イランの最高実力者である​アリー・ハーメネイー​はアメリカの交渉について、カネと力(飴と鞭)を使い、最初に決めた目的を追求し続けるとしている。アメリカは相手から利益を引きだそうとし、それを拒否されると騒ぎ立て、屈服させる。アメリカは約束するだけで約束を守らず、実際には何も相手へ利益を渡さないというわけだ。JCPOAもそうだと分析している。

 リビアもこの手口で破壊された。アメリカと交渉する過程でカダフィ政権は2003年に核兵器や化学兵器の廃棄を決めたが、アメリカは約束を守らず、「制裁」を解除しなかった。そして2010年、オバマ大統領はムスリム同胞団を使った侵略計画(PSD11)を作成、政権転覆に着手したのだ。リビアは侵略され、カダフィ体制は崩壊、カダフィ自身は惨殺された。リビアは現在、破壊、殺戮、略奪が横行、暴力が支配する破綻国家だ。

 ほかのケースでもアメリカは約束を守っていない。ドイツを巡ってソ連と交渉した際、アメリカ政府は東西ドイツ統一の後にNATOを東へ向かって拡大しないと約束していた。例えば、国務長官だったジェームズ・ベイカーはソ連のエドゥアルド・シェワルナゼ外務大臣に対し、統一後もドイツはNATOにとどまるものの、東へNATOを拡大することはないと約束している。ドイツのシュピーゲル誌によると、ロシア駐在アメリカ大使だったジャック・マトロックはアメリカがそのようにロシアへ約束したと語っている。

 しかし、アメリカは約束を守らず、今ではロシアとの国境線に到達している。これを西側の有力メディアはロシアが西側に接近してきていると表現する。

 アクバル・ハシェミ・ラフサンジャニ元イラン大統領の弟、モハマド・ラフサンジャニは2018年8月、ドナルド・トランプ米大統領との交渉は間違いだと発言、ジャバド・ザリフ外相はトランプ大統領は信頼できないとしていた。

 JCPOAからの離脱を宣言する前、トランプは2017年4月にシリアをミサイル攻撃している。地中海に配置されていたアメリカ海軍の2駆逐艦、ポーターとロスから巡航ミサイル(トマホーク)59機をシリアのシャイラット空軍基地に向けて発射したのだ。

 数機では対応されてしまうと考えたのかこれだけのミサイルを発射したのだが、目標に到達したのは23発にすぎなかったとされている。それでもロシア側は防衛体制が不十分と考えたようで、その後、短距離用の防空システム、パーンツィリ-S1の配備を進めた。

 その1年後、4月にアメリカ、イギリス、フランスの3カ国がシリアをミサイル攻撃した。アメリカ軍によると、発射された巡航ミサイルは紅海にいたモンテレイから30機、ラブーンから7機、ペルシャワンにいたヒギンズから23機、地中海にいたジョン・ウァーナーから6機、フランスのロングドークから3機、B-1爆撃機から19機、イギリスのタイフーンやトルネード戦闘機から8機、フランスのラフェルやミラージュから9機で合計105機。

 アメリカ側の説明によると、そのターゲットはバルザー化学兵器研究開発センター(76機)、ヒム・シンシャー化学兵器貯蔵施設(22機)、ヒム・シンシャー化学兵器(7機)だったという。さほど大きくない施設に大量のミサイルを撃ち込んだことになる。

 それに対してロシア国防省は違った説明をしている。攻撃されたのはダマスカス国際空港(4機。全て撃墜)、アル・ドゥマイル軍用空港(12機。全て撃墜)、バリー軍用空港(18機。全て撃墜)、サヤラト軍用空港(12機。全て撃墜)、メゼー軍用空港(9機。うち5機を撃墜)、ホムス軍用空港(16機。うち13機を撃墜)、バザーやジャラマニの地域(30機。うち7機を撃墜)だという。攻撃に使われたミサイルの約7割を撃墜したというわけだ。

 アメリカ/NATO軍がシリアへ軍事的に制圧することは難しいことを2度のミサイル攻撃が証明した。この攻撃に対する迎撃能力を含め、ロシア軍の戦闘能力が高いことを世界は目撃し、アメリカに対する恐怖心は薄くなっていく。欧米の好戦派は計算を間違えた。トランプ大統領がJCPOAからの離脱を宣言したのは2度目のミサイル攻撃から1カ月後のことだ。

 ネオコンが主導するオバマ政権は2014年にウクライナでネオ・ナチを使ったクーデターを実行、香港では反中国運動を展開した。ロシアと中国、そしてEUを揺さぶるつもりだったのだろう。

 ところが、それを切っ掛けにして中国とロシアは接近、両国は2015年に一帯一路(BRI/帯路構想)とユーラシア経済連合(アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギスタン、ロシア)を連結させると宣言した。中国とロシアは戦略的同盟国だ。さらにイランが中国やロシアと手を握り、インドやパキスタンも仲間に入ろうとしている。

 バイデン政権はアメリカを「唯一の超大国」だと考え、どのような相手でも脅せば屈すると考えているようだが、そうした時代はすでに去った。この状況で勝負に出た欧米の私的権力は厳しい戦いを強いられることになるだろう。

 他国にアメリカが何をしでかすかわからない国だと思わせれば、自分たちが望む方向へ世界を導けるとリチャード・ニクソンは考えた。イスラエルのモシェ・ダヤン将軍は、狂犬のように思わせなければならないと語った。バイデン政権は究極的な「瀬戸際作戦」を仕掛けてくるかもしれない。(了)







最終更新日  2021.04.07 12:00:08



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