《櫻井ジャーナル》

2021/11/05(金)14:43

イランでも軍事的な挑発を続けている米国を少なからぬ国が苦々しく思っている

 先月の終わりにアメリカがオマーン湾でイランの石油を運ぶタンカーを拿捕し、その石油を押収しようとしたとイラン政府は発表していた。​11月3日にイラン政府が公表した映像​にはイランのタンカーの近くをアメリカの駆逐艦が航行している様子が映っている。 それを見ると、イランが派遣した複数の高速艇がアメリカの艦艇の周辺を航行する一方、ヘリコプターからIRGC(イラン革命防衛隊)の兵士がタンカーへ降りている。これに対し、アメリカ政府は自国の駆逐艦について、イラン側の作戦を見ていただけだと主張している。 アメリカやイギリスはイランの収入源を絶つため、軍事的に石油の輸出を妨害してきた。その合法性を問題にしても仕方がない。アメリカが言う「法の支配」の前提は「俺が法律だ」である。言い換えると、「俺に従え」だ。その命令に従わせるために軍隊や情報機関だけでなく、金融システムも使われてきた。 アメリカやイスラエルにはイランを軍事攻撃するべきだと主張する人たちがいる。これはイスラム革命から間もない頃から言われていることで、例えば、シオニストの一派であるネオコンは1980年代からイランを殲滅するべきだとしていた。ネオコンの戦略はイラクのサダム・フセイン政権を倒して親イスラエル派の体制を築き、トルコ、イラク、ヨルダンの親イスラエル国帯でシリアとイランを分断、個別撃破するというものだった。2003年3月のイラクへの先制攻撃や2011年3月から始まったシリアへの侵略作戦もこのプランに従ってのことだ。 イランとの戦争が現実的でないことはアメリカ軍も熟知しているだろうが、文民の中に強硬派がいる。破壊するだけなら可能だろうが、​占領するためには約240万人の兵士が必要だと推計されている​。予備役を投入してもアメリカ軍にそれだけの戦力はない。他の国の軍隊を使うとしても、応じる国を見つけることは困難。核攻撃で破壊するという手段もあるが、ロシアや中国が手をこまねくだけで何もしないということは考えられない。 イランで戦争が始まれば、中東からの石油供給は困難。現在、中国は中東の石油をタンカーで運んでいるが、そのルートはマラッカ海峡、南シナ海、東シナ海を通る。その海域でアメリカ海軍が活動を活発かさせている最大の理由は「油断」だろう。それに協力するのが日本、台湾、オーストラリア、イギリスだ。  中国はパキスタンやミャンマーで石油を降ろし、パイプラインで運ぶ計画を進めているが、それをアメリカは妨害してきた。その対策としてロシアからのエネルギー資源輸入を増やすのは必然。  中国とロシアはすぐ仲違いするとある種の人びとは信じていた。今でも信じている人がいるだろうが、そうした希望的観測が現実になるとは思えない。 石油や天然ガスの供給が止まって困る国は中国に限らない。「温暖化対策」やCOVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)対策による世界経済の破壊で石油の需要を減らしても、世界は大混乱に陥る可能性が高い。世界を不安定化させるアメリカの政策を苦々しく思っている国は少なくないはずだ。

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