《櫻井ジャーナル》

2022/05/08(日)23:19

米国やウクライナの政府にとって不都合な住民証言を独誌が間違って報道して混乱

 マリウポリのアゾフスタル製鉄所から住民が脱出している。そのひとりであるナタリア・ウスマノバの証言を​シュピーゲル誌は3分間の映像付きで5月2日に伝えた​のだが、すぐに削除してしまった。この事実はドイツの日刊紙​ユンゲ・ベルトによって報道されている​。 シュピーゲル誌はこの映像をロイターから入手したとしているが、ロイターが流した映像は1分間。アメリカのジョー・バイデン政権やウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー政権にとって都合の悪い部分を「編集済み」だった。日本のマスコミが垂れ流しているゼレンスキー政権の主張もそうした種類のものだが、そうした話が事実に反していることを明らかにするウスマノバの証言をシュピーゲル誌は伝えたのだ。脱出したほかの住民と同じように、彼女は西側有力メディアが広めている話を否定したのだ。 製鉄所で働いていた彼女はアゾフ大隊(アゾフ特殊作戦分遣隊)が住民を2カ月間掩蔽壕へ閉じ込め、恐怖の生活を強いたとしている。ロシア軍が設定した脱出ルートの存在は知っていて、脱出しようと試みたが、アゾフ大隊が許さなかったという。ほかの住民と証言と一致している。西側のメディアはこうした事実を無視しようとするだろうが、すでに少しずつ外へ漏れ出ている。 西側の有力メディアは創設当初からプロパガンダ機関としての役割を果たしてきたが、1970年代までは気骨あるジャーナリストの活躍する余地は残っていた。それが1980年代に私的権力によるメディア支配が強まるにつれて余地が狭まり、21世紀に入ると「マトリックス化」が進んだ。 2011年春にバラク・オバマ政権はジハード傭兵を利用してリビアやシリアを侵略するが、それ以降、有力メディアが伝える話の中から事実を探し出すことが困難になっていく。「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)騒動」やウクライナに関する話はまるでハリウッド映画のシナリオだ。 第2次世界大戦で日本が降伏してから1年近くを経た1946年8月、映画監督の伊丹万作は『戦争責任者の問題』と題した文章を映画春秋に書いている: 戦争が本格化すると、「日本人全体が夢中になって互に騙したり騙されたりしていた」。「このことは、戦争中の末端行政の現れ方や、新聞報道の愚劣さや、ラジオの馬鹿々々しさや、さては、町会、隣組、警防団、婦人会といったような民間の組織がいかに熱心に且つ自発的に騙す側に協力していたかを思い出してみれば直ぐに判ることである。」 そして、「幾ら騙す者がいても誰一人騙されるものがなかったとしたら今度のような戦争は成り立たなかったに違いないのである。」と指摘した。 「騙されたものの罪は、只単に騙されたという事実そのものの中にあるのではなく、あんなにも雑作なく騙される程批判力を失い、思考力を失い、信念を失い、家畜的な盲従に自己の一切を委ねるように成ってしまっていた国民全体の文化的無気力、無自覚、無反省、無責任等が悪の本体なのである。」  「『騙されていた』と言って平気でいられる国民なら、恐らく今後も何度でも騙されるだろう。いや、現在でも既に別の嘘によって騙され始めているに違いないのである。」

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