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《櫻井ジャーナル》

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2022.09.25
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 日本の自由民主党が「世界平和統一家庭連合(統一教会)」に侵食されていると指摘され始めて久しい。「ズブズブの癒着」をマスコミも熟知していたはずだが、これまで大して問題にしてこなかったのである。安倍晋三元首相を銃撃したとされている山上徹也が犯行の動機として安倍と統一教会との関係を口にしたとはいうものの、自民党と統一教会との関係が突然、問題にされ始めたことに違和感を感じる。

 統一教会は1954年に韓国で文鮮明が創設、日本では59年から伝道が開始された。1964年には久保木修己を初代会長にして宗教法人の認可を獲得、68年には「国際勝共連合」を設立している。

 統一教会が創設される際、韓国軍の将校4名が教団の幹部として参加して重要な役割を果たした。そのひとりが朴普煕。1950年に士官学校へ入り、朝鮮戦争を経験してからアメリカのフォート・デニングにある陸軍歩兵学校で訓練を受けている。

 統一教会の創設に関わった4将校は陸軍情報局に所属していた金鐘泌と緊密な関係にあり、1961年5月に朴正煕が実行したクーデターに参加した。1962年10月にはサンフランシスコで統一教会の幹部と秘密裏に会談、韓国における政治的な支援を教団側に約束したという。(Jeffrey M. Bale, “The Darkest Sides Of Politics, II,” Routledge, 2018)

 統一教会が創設された1954年に韓国では「APACL(アジア人民反共連盟、後にアジア太平洋反共連盟に改名)」が創設されるが、その際に中心的な役割を果たしたのは台湾の蒋介石と韓国の李承晩。日本からは児玉誉士夫や笹川良一が参加、日本支部を設置する際には岸信介が推進役になったとされている。岸の孫が安倍晋三だ。

 APACLは1966年、アメリカの情報機関を後ろ盾とする東ヨーロッパ出身の親ファシスト組織である「ABN(反ボルシェビキ国家連合)」と合体、WACL(世界反共連盟。1991年にWLFD/世界自由民主主義連盟へ名称変更)になる。(Scott Anderson & Jon Lee Anderson, “Inside the League”, Dodd, Mead & Company, 1986)

 ポーランドやウクライナを含む東ヨーロッパに「神聖ローマ帝国」、あるいは「ポーランド・リトアニア連邦」を復活させたいと考える人びとがいる。そうした願望と「インテルマリウム」は重なる。この計画は2015年に「3SI(三海洋イニシアチブ)」として復活した。

 インテルマリウムを1947年7月にABNは吸収、9月にはポーランドの反ロシア組織「プロメテウス同盟」も合流。その翌年に新装ABNはウクライナのステパン・バンデラ信奉者で組織されたOUN-Bで幹部を務めていたヤロスラフ・ステツコを中心として活動を開始する。その延長線上にウクライナのネオ・ナチは存在、現在のウクライナ情勢につながる。

 当初、WACLはAPACL系の人脈を中心に動いたが、1970年代になるとCAL(ラテン・アメリカ反共同盟)が実権を握った。ラテン・アメリカは第2次世界大戦後にアメリカやローマ教皇庁の支援でナチスの幹部や協力者が逃げ込んだ場所だということもあり、ヨーロッパのナチス人脈との結びつきが強く、中でもイタリアの反コミュニスト人脈との関係は深い。必然的に、そうした人脈を利用してアメリカやイギリスの情報機関が編成した「NATOの秘密部隊」ともつながる。

 中央アメリカのニカラグアでは1979年7月にサンディニスタがアメリカの巨大資本を後ろ盾とし、シオニストと関係がソモサ家を武力で倒した。「ニカラグア革命」だが、すぐにCIAはこの革命政権を倒すために秘密工作を開始、ソモサ体制の軍人を集めて「コントラ」を編成し、反革命戦争を始めた。その際、CIAは資金を調達するためにコカイン取引を利用する。ベトナム戦争でヘロインの取り引きで資金を調達した構造と基本的に同じだ。

 そして1980年7月、ボリビアでルイス・ガルシア・メサのクーデターがあった。大物麻薬業者6人と軍人が手を組んで実行したことから「コカイン・クーデター」とも呼ばれている。計画の立案者は元ゲシュタポ幹部で「リヨンの屠殺人」とも呼ばれたクラウス・バルビー。大戦中、バルビーはフランスのリヨンでゲシュタポを指揮、レジスタンスの英雄であるルネ・アルディを拷問死させている。

 ところで、ドイツ軍はソ連に対する攻撃に全兵力の4分の3以上を投入したが、ソ連軍の反撃に苦しむ。スターリングラードの戦いで1942年11月にドイツ軍25万人はソ連軍に完全包囲され、43年1月に生き残ったドイツの将兵9万1000名は降伏。ここからナチスとアレン・ダレスたちの接触が始まる。

 ドイツ軍の敗走を見て慌てたイギリスは1943年5月にアメリカとワシントンDCで会談、7月に米英両軍はシチリア島に上陸した。ハスキー計画だ。9月にはイタリア本土を占領、イタリアは無条件降伏。ドイツ軍の主力は東部戦線で壊滅していたわけで、難しい作戦ではなかった。ハリウッド映画で有名になった「ノルマンディー上陸作戦(オーバーロード作戦)」は1944年6月だ。この段階で米英の支配層はソ連との戦争を始めている。大戦後の1948年に作成されたNSC20では、「結果として戦争を起こし、ソ連政府を打倒する」という方針が示されていた。

 その1948年にアメリカの国務省はコミュニズムに反対する亡命者、つまりナチスの元幹部や元協力者の逃走を助け、保護し、雇い入れる「ブラッドストーン作戦」を始めた。このブラッドストーン作戦で助けられたひとりがバルビーにほかならない。(クリストファー・シンプソン著、松尾弌訳『冷戦に憑かれた亡者たち』時事通信社、1994年)

 ボリビアのコカイン・クーデターは背後にラテン・アメリカの軍事政権やCIAが存在していたが、ガルシア・メサは軍の支持を失い、つまりアメリカやイタリアの情報機関から見捨てられ、1981年8月に辞任を強いられる。後ろ盾を失ったバルビーは1983年に逮捕され、フランスへ引き渡された。そこで終身刑の判決を受け、刑務所の中で1991年9月に癌で死亡している。

 コカイン・クーデターがあった1980年、統一教会は南アメリカへ活動の範囲を広げ、ボリビアへの影響力を強める。文鮮明は側近の朴普煕を含むチームをボリビアへ派遣、クーデターで実権を握ったグループと協力関係に入る。クーデター政権はWACLのラテン・アメリカにおける組織であるCALと手を組んでいる。

 その統一教会がラテン・アメリカで行っていたマネーロンダリングの拠点が銀行の秘密厳守が保証されていたウルグアイだったが、1996年に同国にある銀行の労働組合がそうした資金洗浄について内部告発している。組合によると、例えば、統一教会は女性信者約4200名にひとり2万5000ドルをモンテビデオにある統一教会系銀行のバンコ・デ・クレディトへ預金させている。総額は約1億0500万ドルになるが、それがどこから来たのかは不明だ。

 こうしたことは1990年代の後半には知られていたが、日本で問題にされたという話は寡聞にして知らない。統一教会はジョージ・H・W・ブッシュへ「講演料」という形で多額の報酬を与えていたことでも知られている。ブッシュはジェラルド・フォード政権でCIA長官を務めたが、遅くともエール大学でCIAにリクルートされた可能性が高い。なお、ブッシュの父親はアレン・ダレスとウォール街仲間で、親しい。

 これは日本の外で問題になった話の一端。「霊感商法」に焦点が当てられることはないと言えるだろう。こうした「宗教団体」を創設した文鮮明は2012年9月3日に死亡し、内部が分裂しているとする話が伝えられている。

 マスコミがこうした宗教団体に人びとの目を向けさせている今、アメリカの戦争マシーンに組み込まれている日本は中国やロシアとの戦争に向かい、進んでいる。アメリアの支配層は沖縄を中国へミサイル攻撃する拠点として整備しつつあり、ロシアとの関係も悪化している。アメリカやイギリスを拠点とする私的権力は中国やロシアだけでなく、日本やEUも破壊しようとしていると言えるだろう。







最終更新日  2022.09.25 01:00:28



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