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EU(欧州連合)やG7(アメリカ、イギリス、カナダ、ドイツ、イタリア、フランス、日本)はロシア産原油の輸入価格に1バレルあたり60ドルの上限を12月5日から設けることで合意したという。アメリカ政府の命令に従うと言うことだろうが、ロシアのアレクサンドル・ノバク副首相はそうした上限価格を課す国へ石油や石油製品を輸出することをロシア政府は禁止すると語った。ロシアは中国やインドへ振り向けるという。60ドルならロシア政府は受け入れると考えた国もあるようだが、読み間違えだったようである。 アメリカの傀儡だったボリス・エリツィンが1991年12月にソ連を消滅させ、ロシアを西側支配層が制圧、食い物にした。ソ連消滅の時点でネオコンはアメリカが「唯一の超大国」になったと認識、世界制覇プランを作成する。それが「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」だ。 1999年3月にNATOはユーゴスラビアを先制攻撃して国を解体し、さらにアフガニスタン、イラク、リビアなどで軍事作戦を実行して破壊した。かつてヨーロッパ諸国を上回る生活水準を誇ったリビアは侵略、破壊、殺戮、略奪で無法国家になっている。現在、その矛先はウクライナ、ロシア、そして中国へも向けられているが、「国際社会」を自称する欧米はロシアの反撃で苦境に陥っている。 アメリカ支配層がまだロシアを属国だと信じていた2004年から05年、ウクライナで東部や南部を地盤とするビクトル・ヤヌコビッチが大統領に就任することを阻止するため、ジョージ・W・ブッシュ政権は「オレンジ革命」を仕掛け、新自由主義者のビクトル・ユシチェンコを大統領に据えた。 ユシチェンコの政策によって国の富は欧米の巨大資本へ流れて行き、その手先になった一握りのウクライナ人が「オリガルヒ」と呼ばれる富豪になり、その一方で大多数の庶民は貧困化。そこで2010年の1月から2月にかけて行われた大統領選挙でヤヌコビッチが勝利する。 そこで7月にヒラリー・クリントン国務長官(当時)がキエフへ乗り込み、ヤヌコビッチに対してロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めたが、拒否された。そしてバラク・オバマ政権のクーデター計画が始まる。オバマ政権は2013年11月にクーデターを始動させ、14年2月にヤヌコビッチの排除に成功。その時、クーデターの実行部隊として使ったのがネオ・ナチだ。 ヤヌコビッチの支持基盤でロシア語を話す住民が多い東部や南部ではクーデターが拒否され、クリミアではいち早く住民投票が実施されてロシアと統合の道を選ぶ。ドンバス(ドネツクやルガンスク)の住民は2014年5月11日にドネツクとルガンスクでも住民投票が実施、ドネツクでは89%が自治に賛成(投票率75%)、ルガンスクでは96%が独立に賛成(投票率75%)している。 この結果を受けて両地域の住民はロシア政府の支援を求めたが、ロシア政府は動かなかった。キエフのクーデター体制は軍の戦車部隊をドンバスへ突入させ、戦闘がはじまるわけだ。この反クーデター軍を潰すためにアメリカ/NATOは軍事支援を続けた。今年2月にロシア軍が軍事作戦を始めたのはその結果だ。 ウクライナの東部から南部に広がるステップ(大草原)が凍結する冬を待ち、ロシア軍は新たな軍事作戦を始めると言われている。すでにT-90M戦車や防空システムS-400を含む兵器がドンバス周辺へ運び込まれた。部分的動員で集められた兵士のうち約8万人はすでにドンバス入りし、そのうち5万人は戦闘に参加しているともいう。訓練中の約32万人も新作戦が始まる前には合流するはずで、ロシア/ドンバス軍の戦力はこれまでの2倍以上になるとみられる。 ハリコフやヘルソンへウォロディミル・ゼレンスキー政権が戦力を集中させた際、ロシア/ドンバス軍は部隊を撤退させたが、これはステップという自然環境を考慮してこのこと。特にヘルソンの場合はドニエプル川の西岸が孤立する可能性があった。ヘルソンの少し上流にあるカホフカ・ダムをキエフ軍はHIMARS(高機動ロケット砲システム)などで砲撃、破壊しようとしていたことも撤退した一因。洪水で被害が出るだけでなく、物資の供給が難しくなり、包囲されることが予想されたからだ。 しかし、新たな作戦が始まれば西岸も制圧、ウクライナとロシアを隔てる非武装地帯をロシア軍は作るとも考えられている。南部ではドニエプル川を渡って100キロメートル以上進み、北部ではドニエプル川までを制圧すると推測する人もいるが、非武装地帯の幅は300キロメートルになるという見方もある。射程距離が300キロメートルの兵器をすでに受け取ったとゼレンスキー政権のオレクシー・レズニコウ国防相が語っているからだ。 アメリカ統合参謀本部のマーク・ミリー議長は11月9日、ウクライナ軍がロシア軍に勝利することはないかもしれないとニューヨークの経済クラブで発言、冬が本格化する前にロシアとの交渉を始めるべきだと主張しているが、これは常識的な見方。欧州委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は11月30日、演説の中でウクライナの将兵10万人以上が戦死したと語っている。これまでジョー・バイデン政権が有力メディアを使い、西側で広めていた幻影が消えかかっている。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.12.04 10:54:08
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