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《櫻井ジャーナル》

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2022.12.19
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 日本政府は軍事力増強を打ち出しているが、本ブログで繰り返し書いてきたように、これはアメリカの支配層がソ連消滅の直後から始めた世界制覇プランに従ってのことだ。1995年2月にジョセイフ・ナイが「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表した後、日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれていったのである。

 アメリカはNATO軍を使い、1999年3月にユーゴスラビアを先制攻撃して国を解体、さらにアフガニスタン、イラク、リビア、シリアなどに侵略戦争を仕掛け、破壊してきた。彼らの矛先は現在、ロシアや中国へ向けられている。こうした​アメリカの動きとロシアの対応についてウラジミル・プーチン露大統領は2018年3月にロシア連邦議会で説明​した。

 本ブログでは繰り返し書いてきたが、NATOはヨーロッパを支配する仕組みとしてアメリカやイギリスの支配層によって創設された。ソ連軍の侵攻に備えるという目的もゼロとは言わないが、限りなくゼロに近いとは言える。NATOの初代事務総長でウィンストン・チャーチルの側近だったヘイスティング・ライオネル・イスメイはNATOを創設した目的について、ソ連をヨーロッパから締め出し、アメリカを引き入れ、ドイツを押さえつけることのあると公言している。







 現在、軍事的な緊張が高まっているが、この問題ではアメリカによるABM条約(弾道弾迎撃ミサイル制限条約)からの離脱が大きな節目になったとプーチンは考えている。

 この条約は1972年5月に締結されたが、​2001年12月にジョージ・W・ブッシュがロシアに対して条約からの離脱を通告、翌年の6月に脱退した​。そしてアメリカで創設された組織がミサイル防衛局である。

 アメリカはアラスカとカリフォルニアにミサイル防衛システムを設置し、NATOを東へ拡大させることでルーマニアとポーランドにもミサイル防空エリアを新たに作った。その時点で日本や韓国へのミサイル配備が予定されている。

 ブッシュ政権の政策はネオコン系シンクタンクPNACが2000年に発表した報告「米国防の再構築」に基づくが、この報告のベースは1992年2月に国防総省の「DPG草案」として作成された世界制覇プラン。国防次官補だったポール・ウォルフォウィッツが中心になって書き上げられたことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」と呼ばれている。

 こうしたプランの背後にいた人物が国防総省内のシンクタンクONAのアンドリュー・マーシャル室長。CIA内部でソ連に関する偽情報を発信していた「チームB」と連携し、マーシャルは冷戦時代にソ連脅威論を発信。このチームにはウォルフォウィッツも含まれている。ソ連消滅後、マーシャルは中国の地対地ミサイルなどが東アジアの基地や空母にとって脅威になるとしてミサイル防衛の必要性を強調、中国脅威論を主張していた。

 マーシャルの主張を現実化する上で好都合な出来事が2001年9月11日に引き起こされる。ニューヨークの世界貿易センターやバージニア州アーリントン郡にある国防総省本部庁舎(ペンタゴン)が攻撃されたのである。アメリカ国内はファシズム化が進み、国外では侵略戦争が本格化した。

 アメリカがABM条約から脱退、それまで禁じられていたミサイルの開発を始めたことを受け、ロシアも新兵器の開発に着手したとプーチンは語った。例えば新型のMIRVミサイル「Sarmat」、低高度で飛行する核エネルギーの推進装置を搭載したステルス・ミサイル、深海を移動するステルス核魚雷、超音速ミサイル、大陸間をマッハ20で滑空するミサイル、レーザー兵器などだ。アメリカは核戦争で生き残れないと宣言したのである。

 ロシア製兵器の性能が良いことは2015年9月にシリア政府の要請で軍事介入してから明確になった。アメリカのバラク・オバマ政権は2011年春からリビアやシリアなどへアル・カイダ系武装集団を利用して侵略戦争を開始、その年の10月にムアンマル・アル・カダフィ体制を倒し、カダフィを惨殺した。

 その際、NATO軍とアル・カイダ系のLIFGが連携していることが明確にされている。そのダメージを弱めたのがアル・カイダを指揮しているとされていたオサマ・ビン・ラディンを殺害したとするオバマ政権の発表。2011年5月にアメリカの特殊部隊が殺したことになっているが、証拠はない。

 その後、アメリカ政府は兵力をシリアへ集中するが、バシャール・アル・アサド政権を倒せない。そこでオバマ大統領は2015年にホワイトハウスを好戦的な布陣に変更した。2月に国防長官がチャック・ヘーゲルからアシュトン・カーターへ、9月には統合参謀本部議長がマーチン・デンプシーからジョセフ・ダンフォードへそれぞれ交代したのだ。

 アル・カイダ系武装集団を危険視していたデンプシーが退任した5日後、9月30日にロシアはシリア政府の要請で軍事介入、アメリカの手先として活動していたムスリム同胞団やサラフィ主義者の戦闘集団を敗走させた。

 現在、NATO軍はウクライナでもロシア軍との戦闘に深く関与している。アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターも指摘しているように、​ロシア軍と戦わせる相当数の兵士はNATO加盟国で軍事訓練を受け、またアメリカの統合参謀本部は「ウクライナ司令部」を創設するとしている​。

 そのほかアメリカ/NATOは兵器を供給衛星写真を含む軍事情報をキエフ軍へ提供、作戦を指揮しているとも言われている。12月5日にはロシア領内、ウクライナとの国境から北東450キロメートルの場所にあるディアギレボ基地と東550キロメートルのエンゲルス基地がドローンに攻撃され、長距離爆撃機2機が軽い損傷を受けたという。いずれの基地とも核戦略に関係している。

 ロシアで1970年代に製造された偵察用ドローンTu-141に新しい誘導システムを取り付けて巡航ミサイルに改造、アメリカの衛星に誘導されて攻撃したとされている。ドローンを飛ばしたのはロシア領内へ侵入した工作員だと見られているが、もし国境の外からの攻撃だった場合、ロシア軍の報復核攻撃もありえたと言われている。それだけ欧米の戦争推進派は追い詰められていると言えるだろう。







最終更新日  2022.12.19 11:22:24



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