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《櫻井ジャーナル》

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2023.02.14
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 アメリカのセレスト・ワランダー国防次官補は2月10日、ウクライナ軍によるクリミア攻撃に反対しないと語った。住民の意向には関係なくクリミアはウクライナ領だと主張しているが、アメリカ政府が支持しているウクライナの現体制は2014年2月にバラク・オバマ政権がネオ・ナチを利用したクーデターで樹立させたのであり、クリミアの住民はそのクーデターを認めていない。

 キエフで実行されたクーデターの直後、3月16日にクリミアではロシアとの統合を求める住民投票が実施され、80%以上の住民が投票に参加し、95%以上が加盟に賛成した。

 ウクライナ南部の港湾都市オデッサでは5月2日に反クーデター派の住民がネオ・ナチのグループに虐殺されたが、それでも5月11日にドネツクとルガンスクでも住民投票が実施され、ドネツクでは89%が自治に賛成(投票率75%)、ルガンスクでは96%が独立に賛成(投票率75%)している。

 クリミアは黒海に突き出た半島で、セバストポリはロシア海軍の黒海艦隊が拠点にしている場所。ロシアはこの拠点を維持するため、1997年にウクライナと条約を結んでいる。その結果、基地の使用と2万5000名までのロシア兵駐留が認められた。

 クーデター当時、この条約に基づいて1万6000名のロシア軍が実際に駐留していたのだが、西側の政府やメディアはこの部隊をロシア軍が侵略した証拠だと宣伝、それを真に受けた人も少なくない。

 ドネツクとルガンスクでは住民が反クーデター軍を編成、ネオ・ナチ体制に反対するウクライナ軍の将兵やSBU(ウクライナ保安庁)やベルクト(警官隊)の隊員も合流し、クーデター軍と戦い始めた。そうした経緯があるため、当初はクーデター軍が劣勢だった。

 そこで、アメリカ/NATOはウクライナへ兵器を供給するだけでなくネオ・ナチを主体とする親衛隊を編成し、その隊員や軍の兵士を訓練する。アメリカの傭兵会社から戦闘員も派遣された。ル・フィガロ紙の特派員、ジョージ・マルブルノによると、ウクライナでアメリカ陸軍のデルタ・フォース(第1特殊部隊デルタ作戦分遣隊)やイギリス陸軍のSAS(特殊空挺部隊)が戦闘に参加している。

 アメリカやイギリスの世界制覇プランにとってウクライナの植民地化は重要な意味があるのだが、ロシア語を話し、ロシア文化の影響下にある東部や南部を支持基盤とするビクトル・ヤヌコビッチは目障りな存在だった。

 そのヤヌコビッチを排除するためにジョージ・W・ブッシュ政権は2004年から05年にかけて「オレンジ革命」を仕掛け、新自由主義者のビクトル・ユシチェンコを大統領に据えたが、ユシチェンコの政策で庶民は貧困化し、2010年の大統領選挙ではヤヌコビッチが勝利した。

 2010年7月にヒラリー・クリントン国務長官(当時)がキエフへ乗り込み、ヤヌコビッチに対してロシアとの関係を断ち切ってアメリカへ従属するように求めたが、拒否される。オバマ政権は「カラー革命」での政権転覆は難しいと判断したようで、クーデター計画が立てられた。

 ワランダー次官補に限らず、西側ではウクライナのクーデター体制を正当なものだという前提で議論するが、その体制をクリミアなど東部や南部の人びとは認めていない。

 ウクライナを予定通り制圧するためには、そうした住民を屈服させなけらばならないが、当初は軍事的に劣勢だった。そこでウクライナの戦力を増強するための時間稼ぎが必要になる。「ミンスク合意」の目的がそこにあったことを​アンゲラ・メルケル元独首相​は昨年12月7日に認め、​フランソワ・オランド元仏大統領​はメルケルの発言を事実だと語った。ミンスク合意が守られることはなかったが、それは当然だろう。時間稼ぎにすぎないとウクライナ政府も認識していたはずだ。

 そして昨年春、キエフ政権はドンバスに対する軍事作戦を始める予定だったと言われているが、その直前にロシア軍が動いた。ロシア軍はミサイルで軍事空港を破壊して制空権を握り、アメリカがウクライナに建設していた生物兵器の研究開発施設を破壊している。戦闘員の本格的な投入を準備し始めたのは昨年9月21日に部分的動員を発表してからだ。

 そして現在、ウクライナ軍は壊滅状態にある。戦闘員も兵器も不足、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領の求心力は急速に低下しているようだ。戦争を煽ってきたアメリカやイギリスの勢力も混乱しているようである。そうしたところからワランダーの発言も出てきたのだろう。









最終更新日  2023.02.14 11:01:03



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