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《櫻井ジャーナル》

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2023.02.16
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 アメリカの亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を日本政府は2023年度に一括購入する契約を締結する方針だと浜田靖一防衛相は2月14日に語ったという。トマホークは核弾頭を搭載でき、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートル。「反撃能力」が強調されているが、このミサイルには言うまでもなく先制攻撃能力がある。主なターゲットとして想定しているのは中国だろうが、その戦略的同盟国であるロシアも視野に入っているはずだ。

 言うまでもなく日本はアメリカの属国であり、トマホークの購入はアメリカの戦略に基づいている。アメリカの対外戦略を支配しているのはネオコンだ。

 ネオコンは1991年12月にソ連が消滅した直後、アメリカが「唯一の超大国」になったと認識、1992年2月にネオコンが支配していた国防総省において、DPG(国防計画指針)草案という形で世界制覇計画を作成した。その時の国防長官はディック・チェイニー、国防次官はポール・ウォルフォウィッツだ。そのウォルフォウィッツが中心になって作成されたことから、DPGは「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。

 その第1の目的は「新たなライバル」の出現を阻止することだと宣言している。旧ソ連圏だけでなく、西ヨーロッパ、東アジア、東南アジアにアメリカを敵視する勢力が現れることを許さないというわけだ。言うまでもなく、日本がアメリカのライバルになることも許されない。







 ウォルフォウィッツ・ドクトリンに従うことを日本も要求されるのだが、日本側は抵抗する。そこで国連中心主義を維持しようとした細川護煕政権は1994年4月に倒され、1995年2月にジョセイフ・ナイは「東アジア戦略報告(ナイ・レポート)」を発表する。この報告書を受け入れた段階で日本はアメリカの戦争マシーンに組み込まれた。

 そのマシーンの一部として自衛隊は2016年に軍事施設を与那国島に建設し、19年には奄美大島と宮古島に作った。2023年には石垣島でも完成させる予定だが、そこに中国を狙うミサイルを配備すると見られている。その目的はアメリカの国防総省系シンクタンク「RANDコーポレーション」が昨年に発表した報告書のなかで明らかにされている。

 ​RANDの報告書​によると、アメリカ軍はGBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲しようとしているが、配備できそうな国は日本だけ。その日本には「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約がある。そこでアメリカはASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたとされている。




 日本は軍事拠点を作るだけでなく、高性能兵器の開発にも乗り出していると伝えられている。例えばアメリカと共同で音速の5倍以上で侵入してくるHGV(極超音速滑空体)を迎撃するミサイル技術の研究開発を考え、昨年7月24日には宇宙航空研究開発機構(JAXA)が鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で迎撃ミサイルに必要な速度に到達することが可能だとされるエンジンの飛行試験を初めて実施した。

 極超音速で飛行するミサイル自体も研究だと言われ、HGVではなくエンジンによって推進力を得る極超音速巡航ミサイル(HCM)の開発を目指しているという。2026年には九州や北海道の島々へ配備したいようだ。

 ​政府は国産で陸上自衛隊に配備されている「12式地対艦誘導弾」の射程を現在の百数十キロメートルから1000キロメートル程度に伸ばし、艦艇や戦闘機からも発射できるよう改良を進めている​と昨年8月に伝えられているが、その背景にアメリカのGBIRM計画があった。

 日本は​射程距離が3000キロメートル程度のミサイルを開発​し、2030年代の半ばまでに北海道へ配備する計画だとも伝えられている。それが実現するとカムチャツカ半島も射程圏内だ。

 しかし、アメリカの協力があっても日本がミサイルを開発をするにはそれなりの期間が必要。トマホークの購入によってアメリカの兵器産業が潤うことは確かだが、時間の問題もあるかもしれない。

 本ブログでも繰り返し書いてきたが、アメリカ政府は2014年2月にウクライナでクーデターを実行してビクトル・ヤヌコビッチ政権を倒したものの、クリミアとドンバスの制圧には失敗、ドンバスではクーデター政権と反クーデターとの間で内戦が始まったわけだ。

 反クーデター軍にはネオ・ナチ体制を拒否する軍人や治安機関員が合流したこともあり、クーデター軍は劣勢だった。そこでドイツやフランスを仲介役とする停戦交渉が始まり、ミンスク合意が結ばれるが、これはキエフ政権の軍事力を増強するための時間稼ぎにすぎなかった。この事実は昨年12月に​ドイツのアンゲラ・メルケル元首相​と​フランソワ・オランド元仏大統領​が認めている。

 クーデターから8年後の2022年春にアメリカ/NATOを後ろ盾とするキエフ政権軍は約12万人をドンバス周辺へ集中させていたとも言われ、ドンバスへの軍事侵攻を少なからぬ人が予想していた。それに対してロシア軍は2022年2月24日にウクライナをミサイルなどで攻撃し始める。キエフ軍によるドンバス制圧が成功した場合、NATO軍が合流するとも考えられたが、そうした展開にはならない。

 ウクライナの政治家​オレグ・ツァロフは昨年2月19日に緊急アピール「大虐殺が準備されている」を出し、キエフ政権の軍や親衛隊はこの地域を制圧、自分たちに従わない住民を「浄化」しようとしていると警鐘を鳴らしている​。ドンバスを制圧し、キエフ体制に従わない住民(ロシア語系住民)を「浄化」、CIAの下部機関と化しているSBU(ウクライナ保安庁)はネオ・ナチと共同で「親ロシア派」の粛清を実行することにもなっていたという。

 その攻撃中にロシア軍がウクライナ側で回収した文書によると、​ゼレンスキーが1月18日に出した指示に基づいて親衛隊のニコライ・バラン上級大将が1月22日に攻撃の指令書へ署名している​。2月中には攻撃の準備が終わり、3月に作戦を実行することになっていたという。

 3月に攻撃が実行された場合、ツァロフの警告が現実になった可能性がある。ドンバスでは大多数の住民が虐殺され、ドンバス以外でもロシアを敵視しない住民は殺されただろうが、「死人に口なし」を利用して虐殺の責任を西側の政府や有力メディアはロシアに押し付けたはずだ。後にブチャでウクライナ内務省の親衛隊によって実行されたような虐殺がウクライナ全域で行われた可能性がある。

 調査ジャーナリストのシーモア・ハーシュによると、​ロシアからドイツへ天然ガスを運ぶために建設されたパイプライン、「ノード・ストリーム(NS1)」と「ノード・ストリーム2(NS2)」の爆破計画をジョー・バイデン政権が検討し始めたのは、彼が大統領に就任してから半年ほど経ってから​。ジェイク・サリバン国家安全保障補佐官を中心とする対ロシア工作のためのチームを編成している。

 そのチームには統合参謀本部、CIA、国務省、そして財務省の代表が参加、12月にはどのような工作を実行するか話し合い、2022年初頭にはCIAがサリバンのチームに対し、パイプライン爆破を提案している。

 その年の1月27日にビクトリア・ヌランド国務次官はロシアがウクライナを侵略したらノード・ストリーム2を止めると発言、2月7日にはバイデン大統領がノード・ストリーム2を終わらせると主張、記者に実行を約束した。ハーシュによると、3月にはサリバンのチームに属すメンバーがノルウェーの情報機関に接触、爆弾を仕掛けるために最適な場所を聞き、ボルンホルム島の近くに決まった。

 爆破から1分後にイギリスの首相だったリズ・トラスはiPhoneでアメリカのアントニー・ブリンケン国務長官へ「やった」というテキストのメッセージを送ったと昨年10月30日に報じられた。その前日、​ロシア国防省はこれらのパイプラインを破壊したのはイギリス海軍だと発表​、トラスはその4日前に辞任している。

 ハーシュの記事が正しいなら、バイデン政権は2021年の後半にノード・ストリームの爆破を考えている。これはロシアからドイツへ天然ガスを輸送するためのパイプライン。これをアメリカが破壊したわけであり、戦争行為だ。

 ウクライナでのクーデターもそうだが、この爆破や「経済制裁」でロシア経済をアメリカ政府は破壊しうとした。ロシアは天然ガスや石油を売るだけの国にすぎず、生産力はないというイメージにネオコンなどアメリカの好戦派は取り憑かれていたようだが、実態は違った。1970年代から製造業を破壊したアメリカとは違い、ロシアでは産業が育っていたのである。アメリカの政策で経済が大きなダメージを受けたのはEUだった。それに拍車をかけたのがCOVID-19騒動だ。

 その結果、社会が混乱するだけでなく、ウクライナに対する武器弾薬の供給でロシアに対抗できていない。戦争になるとロシアはミサイルや弾薬が不足すると西側は思い込んでいたようだが、実態は違い、そうしたことになったのは西側だった。そこで東アジアに手が回らないという事態になり、日本への期待が高まっているようだ。










最終更新日  2023.02.16 00:00:12



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