2023/10/19(木)15:06
ガザで迷走するネタニヤフとバイデン
ガザのアル・アフリ・アラブ病院が10月17日に爆破され、500名以上の患者や避難民が殺されたと伝えられている。その後の報道では700名以上だという。 現地に入っている西側の記者もイスラエルによる攻撃だった可能性が高いとしているのだが、イスラエルはパレスチナ側の誤爆だと主張。ハマスの通信を傍受した会話と称する音声も公表されたが、方言の分析などから信憑性はないようだ。その信憑性のない話をイスラエル訪問中のジョー・バイデン米大統領は受け入れた。 イスラエル側がハマスの通信を傍受しているという主張に苦笑する人は少なくない。通信を傍受できるのなら10月7日のハマスによるイスラエルに対する奇襲攻撃はなかったはずだからだ。 病院を攻撃したのはイスラエル軍だということになると、誤爆だったのか意図的なのかという問題が生じる。意図的だったとするなら目的は何かということになるが、イスラエル建国の前からシオニストはパレスチナからアラブ系住民を殺害、あるいは追放しようとしてきた。民族浄化だ。アメリカでヨーロッパからの移民が行い、ウクライナではネオ・ナチがロシア系住民に対して行っている。 ウクライナでネオ・ナチ軍は学校や病院を軍事拠点にし、そこからドンバスの反クーデター派住民を攻撃していた。その学校や病院をロシア軍は攻撃したが、その際、そこに一般市民はいないことを慎重に確認している。 アル・アフリ・アラブ病院に武器弾薬がなかったことは攻撃後に二次爆発がなかったことから確実だと言われている。イスラエル軍は病院がハマスの軍事拠点になっているかどうかを確認できていない。 病院が爆撃される前日、国連の安全保障理事会ではロシアが提出した決議案が否決された。この決議案はガザにおける民間人に対するあらゆる違法な暴力を非難、停戦を求めているが、アメリカ、イギリス、フランス、日本はハマスを名指しで非難していないとして反対している。 この4カ国はイスラエルによるパレスチナ人弾圧は容認しているわけだが、ハマスを作り出したのはイスラエルである。イスラム世界には日米英仏の4カ国がイスラエルに病院爆撃を許したと考える人もいる。 ハマスは1987年12月、シーク・アーメド・ヤシンによって創設された。ヤシンはムスリム同胞団の一員としてパレスチナで活動していた人物で、ガザにおける同胞団の責任者。シン・ベト(イスラエルの治安機関)の監視下、彼はムジャマ・アル・イスラミヤ(イスラム・センター)を1973年に創設、76年にはイスラム協会を設立、77年の選挙で軍事強硬派のリクードが勝利するとイスラエル政府はイスラム協会を人道的団体として承認した。ハマスはイスラム協会の軍事部門だ。 シーモア・ハーシュによると、前回、つまり2009年に返り咲いた時、ベンヤミン・ネタニヤフはPLOでなくハマスにパレスチナを支配させようとした。そのため、ネヤニヤフはカタールと協定を結び、カタールはハマスの指導部へ数億ドルを送り始めたという。 イスラエルの中でも特にハマスとの関係が深いネタニヤフは汚職事件で窮地に陥っていた。今回のハマスによる攻撃でとりあえず窮地を脱することができた。彼は早期の停戦を望んでいないだろう。 イスラエルがハマスを作った理由はヤセル・アラファトが率いるPLO(パレスチナ解放機構)のファタハを弱体化させることにあった。アラファトのライバルを育て、内部対立させることで運動を弱体化させようとしたのだ。 しかし、イスラエルは2004年3月にヤシンを暗殺、その年の11月にアラファトも死亡した。アラファトも殺された可能性が高い。アラファトの死でPLOの影響力は大きく低下、イスラエルにとってハマスの存在意義は薄らいだはずだが、2009年にネタニヤフはハマスを使った。つまり関係は切れていない。 イスラエル軍はGBU-43/Bを使う可能性があるが、それが使われなくてもガザで住民の虐殺が続いた場合、ヒズボラが介入する可能性が高まる。イスラエル軍の地上部隊が2006年7月から9月にかけてレバノンへ侵攻した際、ヒズボラに敗北している。その際、イスラエルが誇る「メルカバ4」戦車も破壊されてメルカバ神話が崩れ去った。 ハマスはガザに地下施設を建設、イスラエル軍の侵攻を待ち受けているが、ヒズボラは精密誘導ミサイルを含む約15万発のロケット弾やミサイルを保有、イスラエルのどこでも攻撃できる。しかも戦闘慣れした数千人の兵士が存在、様々な種類の軍事用ドローンを保有している。 イランがハマスを支援しているという話は眉唾物だが、ヒズボラとは関係が深い。