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カテゴリ:第10話 遥かなる虹の民
こうした複雑で緊迫した状況下において、光明の一つは、クリオーリョ(植民地生まれのスペイン人)や混血児(スペイン人とインカ族の混血の人々)を率いた革命軍の存在である。 彼らは、様々な立場や身分、人種という壁を超えて、トゥパク・アマルの此度の解放運動に賛同を示している。 その革命軍の総指揮官、シモンとの協調行動が、今後、いっそう重要な鍵となることであろう。 かつて、トゥパク・アマルの陣営まで、遠路、馬を馳せて面会に訪れてきたシモンと、初めて対面した夜のことが、そして、あの時に交わした会話が、トゥパク・アマルの脳裏に甦る。 『さて、シモン殿――、ゆっくり話しをしたいところだが、この状況ゆえ、分かってくれたまえ。 早速だが、そなたの用件を聞かせてもらいたい』 シモンは、怒涛の勢いで馬を飛ばしてきた名残の乱れた前髪を素早い手つきですき上げ、居住まいを正した。 『トゥパク・アマル殿、わたしは、此度のあなたの解放闘争に、賛同する者です』 トゥパク・アマルの沈着な瞳の奥で静かに燃える蒼い光を見据え、シモンもまた、力強い光を目の奥で閃かせながら、続けていく。 『この植民地生まれの我ら白人たちもまた、インカ族や黒人の者たちと同様、スペイン本国の圧制から解放されたいと切望していることは、トゥパク・アマル殿もよくご存知の通りです。 それは、あなたが、この反乱の大義として掲げていることの一部でもある』 そこまで話を聞くうちに、トゥパク・アマルは、そのしなやかな褐色の指先を己の輪郭に添え、もう、とうに、何もかもを察しているという目になっている。 そんなトゥパク・アマルの眼差しを見据えながら、シモンは、さらに続けていく。 『もし、その気になれば、わたしは、この国中に溢れ返っている貧しい白人たちを、多数、兵士として募り、すぐにも新たな義勇軍を組織する準備があるのです』 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) ≪シモン≫(白人の革命軍) ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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2017.06.06 23:52:17
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