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カテゴリ:第10話 遥かなる虹の民
「アレッチェ様を殺すだなんて、そんなことするはず……」 そう擦れ声で答えながら、コイユールは悲しげに目を伏せた。 (アレッチェ様、いつも以上に荒れていらっしゃる…。 治療の効果が全然見えてこないのですもの…無理もないことだけど……) 一方、アレッチェは、そんなコイユールの心を見透かすように、いよいよ歪んだ嘲笑を浮かべながら、吐き捨てるように言う。 「だいたい、おまえのような小娘にわたしの世話を任せること自体、間違っていたのだ。 こんな無能な奴に看病されているわたしの惨めさがわかるか? おまえが看病すればするほど、ますますわたしの身体は悪化していくぞ!!」 「アレッチェ様、申し訳ございません……! そのように大きな声を出してはお身体に触ります。 私は下がりますから、どうか……」 「貴様……! このわたしに指図するとは、生意気にもほどがあるぞ! いかがわしい妖術使いめがっ!!」 アレッチェは激昂して寝台から起き上がろうとするが、激痛が走り顔を歪める。 「何を騒いでいる? さっきから怒鳴り声が響いているぞ!」 扉の外から、見張り役のインカ兵が厳しい顔を覗かせた。 「ふん、黙れ、下民どもが。 わたしを誰だと思っているのだ。 おまえらこそ、口を慎め!」 アレッチェは不機嫌そうに言い放つ。 「申し訳ございません、アレッチェ様。 ですが、どうか落ち着いてください。 アレッチェ様のお身体のためにもよくありません。 今は、ゆっくりとお休みください」 「なんだ、その口の聞き方は!? ふざけているのか? この端女(はしため)が!!!」 アレッチェはさらに猛り狂って、包帯の巻きつけられた腕で荒々しくコイユールを突き飛ばした。 「……あっ!! おやめください!!」 その時、扉の向こうから聞き覚えのある靴音が響き、誰かが入ってくる気配がした。 「何事だね?」 低く艶やかな声でそう言って、床に打倒されていた己に手を差し伸べた相手を見上げて、ハッと、コイユールは息を呑んだ。 「トゥパク・アマル様!? どうして、ここに…?」 ひとキャラメッセージ アンドレスたち共々、こちらの方も何卒宜しくお願い致します」byとぅぱく・あまる☆ 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) ≪アンドレス≫(インカ軍) ≪コイユール≫(インカ軍) ≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫(スペイン軍) ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 目次 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちら ★いつも温かく応援してくださいまして、本当にありがとうございます!
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