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カテゴリ:第10話 遥かなる虹の民
![]() しばしのときが静かに流れた後、アンドレスが穏やかな笑顔を見せる。 蝋燭の炎が小さく揺れ、その横顔を淡く照らしている。 「今日のことをトゥパク・アマル様にご報告させていただいてもいいでしょうか?」 アリスメンディは、微かに眉を緩め、「もちろんだ」と頷いた。 「わたしが今日話したことは、トゥパク・アマル殿に全て伝えてもらってかまわない。 むしろ今後は連携をとって動いた方が、互いにとって有益であろう」 「仰る通りだと思います!」 アンドレスたちは意気揚々と同意した。 石壁に囲まれた空間は、外界の音をすべて遮断し、耳に届くのは蝋燭の芯が時折小さく爆(は)ぜる音と、衣擦(きぬず)れの微かな気配だけである。 だが、彼らの胸の奥には、凍てついた冷気を溶かしていくような希望の炎が燃えていた。 一方、アリスメンディは、ロカ神父のように、モスコーソが自分の居場所を突き止めるために過去に関わりのあった聖職者たちを捕えて尋問していることに、かなり心を痛めているようだった。 「私もそろそろ表に出ていかねば、他の神父や修道女たちに、さらに迷惑をかけることになる」 そう言い添えたアリスメンディの声が、石壁に低く反響する。 その言葉が出兵を暗示しているのではないか、と察したアンドレスは、思わずアリスメンディを引き留めるようにまた身を乗り出した。 蝋燭の炎が、二人の間に落ちる影を揺らす。 「モスコーソがいるクスコへは、トゥパク・アマル様も出陣の時を見計らっているはず。 ですから、どうかくれぐれもご無理はなさらないでください。 アリスメンディ殿がこうしてこの国でご健在でいてくださることが、真っ当なカトリック信者たちにとって何よりの拠り所であり、信仰の灯(ともしび)になっているはずですから」 真剣に語るアンドレスに、アリスメンディも鋭利な目を細めて、ゆっくり顎を引いた。 「わたしも動く時は慎重にするゆえ案じるな。 だが、ありがとう」 その声音には、感謝と決意が静かに滲(にじ)んでいた。 その後は、連絡手段をどうするか──当面は、互いの伝令鳥などに活躍してもらうことに決め──などの細々としたことを話し合っているうちに、そろそろアリスメンディは戻らねばならない時間になってしまったようだった。 地下室の天井から垂れこめる冷気が、蝋燭の炎を小さく震わせる。 アリスメンディは、去り際に、旅の4人組とマリオに軽く礼を払いながら、ふと思い出したように口にした。 「アンドレス、そういえば、そなたとマリオは幼き頃に会っているのを覚えているか?」 「えっ!?」 アンドレスもマリオも驚いて、思わず顔を見合わせる。 【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆ ≪トゥパク・アマル≫(インカ軍) ≪アンドレス≫(インカ軍) ≪ジェロニモ≫(インカ軍) ≪ペドロ≫(インカ軍) ≪ヨハン≫(スペイン軍) ≪マリオ≫(インカ側) ≪リリアーナ≫(インカ側) ≪アリスメンディ≫(インカ側) ≪モスコーソ大司教≫(スペイン軍)
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