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confuoco Dalnara

殺人の追憶

東京国際映画祭で『殺人の追憶』を観ての感想。

夜がこんなに暗闇でなかったら
この事件は起こらなかったかもしれない。
すこしだけそう思った。
戒厳令の夜が続いた時代。
映画は暗闇が孕んでいたもの、人間の心の闇を描ききった。

韓国の現代史に起こったこと、
多くの韓国人が経てきたことがいくつも映し出され
歴史は韓国の自画像となり
事件と重なり合って追憶されている。

国としてはまだ発展途上で
誰もが非力で弱く、苦悩していたという姿を
事件をとおして率直に描き出している。
被害者が受けた心の傷、
刑事たちの苦悩、容疑者たちの諦念と悔しさ
民主化運動の参加者やその家族の痛みなどが
重層的に迫ってくる。
主演俳優のソン・ガンホが「心の痛み」を描いた映画だ、と語っていたのがよくわかる。
国民の誰もが
観れば、胸を痛めながら歴史を想起し、民族の自画像を意識して共感する映画だ。
最後に犯人について語られる言葉は戦慄を与える。
その思いは観客の国籍は関係なく国境を超えて普遍的だろう。
犯人は普通の人、平凡な人という印象だったという言葉...。
この言葉は
ポン・ジュノ監督の『ほえる犬は噛まない』での手法を思い出させる。
その映画では市民に潜む悪意や罪が描かれていた。

『殺人の追憶』は実際に起こった事件を通して
ひとつの歴史の読み方を投げかけている。
事件を振り返る(追憶する)のと
歴史を振り返る(追憶する)のと
この2つの追憶する行為は
自分の姿や国や社会の自画像を正視する過程でもある。
過去があって
その歴史の流れがあって今の姿もよく見ることができる。

ヴァイツゼッカー元ドイツ大統領の言葉がいくつか思い出された。
「過去に目を閉じるものは現在にも盲目となり、未来を語ることはできない」
「非人間的な行為を心に刻もうとしないものは、またそうした危険に陥りやすい」
「われわれの義務は誠実さであの過去を心に刻むということを通してしか前に進めない」

殺人を記憶し追憶すること、歴史をおぼえているということは
すべて現在につながり未来へ続くことで、
私たち人間の土台に、根っこになるもの、
忘れてはいけないとつよく感じさせる映画だった。

影法師が長く伸びている
歴史の追憶の影法師は過去から現在、そして未来へと長く伸びている。


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