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confuoco Dalnara

恋人たち-S(e)oul Cafe

バスをまつ。
オレンジがかった光の中は
よるがふけているのも、空気が凍っているのも忘れさせる。
そして、あしもとから上ってくる冷気も、橙いろのあわいに溶けて鈍くなってくる。

バスにのる。
カフェのネオン
ここはふたりで通ったところ。
バスの窓はかなりくもっていた。
体温と冷気、内と外にはさまれて、排気ガスを塗り付けられてくもっている。それを人差し指でなぞる。
狭い道に入るとバスは店の軒先に寄りかかっているよう、やがて追憶が接近する。
右足をふみだしたとたん腕が寄り添ってしまったり
こんどは左足が外側に向いてゆらゆらと離れてしまったり。ふたりは寄り添いたいのか離れたいのかが曖昧。

ハングルのくちのうごきをふり返った。

食べるくち。上下、右左、斜め。
買い物をするくち。大きく開いて。
恋を語る。美しいくちびるのかたちと、耳に心地よい響きを意識して。

恋人たちの眸はなかなかカフェから外には出ない。ささやきもバスまでは届かない。
恋人たちは相手の指のつめのきらめき、手の甲の青い血と筋肉の動きに目を奪われている。
窓外の光景よりも、相手のまぶたの筋肉、まつげの震え、鼻の雄弁な動きを見逃さないことに夢中なのだ。
信号が変わって恋人たちとカフェのあかりは去っていった。
ふたりがむきあうすがた。あかくなっている耳とあおじろくかがやく顔。
そうして恋人と恋人たちを思い出す。
バスの窓に息をふきかけて白く不透明なヴェールをかける。
カフェの光景と街の風景、そして記憶にヴェールをかける。

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