PMC: 더 벙커
『テロ, ライブ 더 테러 라이브 THE TERROR LIVE』のキム・ビョンウ監督とハ・ジョンウが再びタッグ。南北軍事境界線 DMZ の地下トンネルで作戦に挑む多国籍な傭兵が集まった民間軍事会社(PMC)ブラック・リザードを率いるのは韓国人のエイハブ(ハ・ジョンウ)。今回のミッションは10分で成功裡に終わるはずだったが...ハ・ジョンウ、イ・ソンギュンジェニファー・イーリー、ケヴィン・デュランドマリク・ヨバ、スペンサー・ダニエルズ出演 キム・ビョンウ監督『PMC:ザ・バンカー PMC: 더 벙커 Take Point』(以下、映画の核心に触れる部分もございます)『PMC』の方が恐らく製作は先だと思うが...第92回アカデミー賞で撮影賞、視覚効果賞、録音賞を受賞、サム・メンデス監督が第一次世界大戦西部戦線の塹壕戦を描いた『1917 命をかけた伝令』(2019年)の全編ワンカット(風)POVやFPS:First Person Shooter(~ファーストパーソン・シューティングゲーム)的視点、没入感が共通し興味深い。着眼点が新しいアクションとして前作の『テロ, ライブ』に引き続き演出が興味深かった。近未来(2024年頃)の設定ではあるが現職米大統領(トランプ)の問題と相当オーヴァーラップして現実と地続き且つセリフの英語率も70~80%でハリウッド製作映画の趣も少々、大統領選予備選(民主党)の真っただ中で観る今感慨深くもある。加えて、スーパーの警備員での暮らしを捨てた新入りローガンの動機及び生活やアメリカ出身の傭兵が語る「無保険」状態を嘆くセリフもリアルに切実に迫る。トランプ政権下で国民皆保険の医療保険「オバマケア」は白紙に戻され医療の面でもまた格差が広がったアメリカの現実にも思い至るから。『パラサイト』のように、ローガンのように格差社会で何とかもがき上昇しようと、しがないSC警備員から一攫千金の夢を見て危険な道、傭兵(PMC)に飛び込まざるを得ない若者の追い詰められた選択は今も、そして恐らく近未来も共通し普遍的だろう。映画の舞台となった地下壕(バンカー)は北朝鮮DPRKが「南侵用」に掘った(とされる)複数のトンネルのうちの一つ。実際に見学出来るツアーもあり(行ったこともあり)、そこが舞台になるとは地上で最後の分断国家で休戦中の韓国ならではの、そして米朝会談を通して実際に非核化が進められようとしつつも停滞している世界情勢とリンクし鬩ぎ合うような発想、視点だった。DPRKの非核化問題はトランプの弾劾問題等を経て進展がない状況だが、CVIDかPVIDかFFVDか、落としどころの行方とは別に大国の大統領選のために「北風」も吹く(吹かせる)シナリオは純粋に半島の平和を模索するには程遠い、「ディール」好きな現職大統領ならさもありなんというシニカルな視線で興味深いが、分断の痛みを孕んでもいた。監督言うところの「軍隊と資本主義が結びついた」設定や「戦争もビジネス」というモチーフが繰り返されてもいるよう。「敵はおれたちの犠牲者」と言うほど、仲間を助けてこそ生きるモットーで仲間思いな隊長エイハブだが、大国の思惑で作戦がひっくり返される中、その信念を捨てざるを得ない状況も訪れる。(戦時作戦統制権返還問題も想起)かつて軍隊で空中で選択を迫られた時のように、助かるためには仲間を捨てるのか守りぬくのか...生存戦略が揺さぶられる中、究極の選択を強いられる苦悩がジグザグに訪れる。映画がバンカーをジグザグに進みながら、選択を迫られるポイントも並走するようにジグザグに訪れる。命の軽重を一瞬で決め判断することは出来ないのに、その決断を迫られるポイントが何度もジグザグに訪れる残酷さと苦悩。動けないエイハブがこれ以上血を流すことはないが、生存戦略のターニングポイントが訪れるたびにエイハブの心は傷ついていく。休戦でさえなければ、分断さえなければそんな困難で残酷な選択を迫られることもないのに...アルフォンソ・キュアロン監督『ゼロ・グラビティ』やイ・ジョングク監督『ブルー 블루』などにも表れた苦しく痛みを伴う「選択」を想起もしつつ暴力的な決断を迫る「戦争(戦争状態)」の苛酷さに息を呑んだ。 北と南のバディものとしてはお互いをお互いの言葉、呼び方で「北韓 북한」「南朝鮮 남조선」とそっけなく呼ぶ、距離感、距離のある淡白なバディは従来の南北もののようなベタなバディ感、外連味を外したところがなかなか印象的。『テロ, ライブ』と共通するのはリモートな(距離のある)バディである、というところ。『テロ, ライブ』では住む世界が違う、アンカーと「テロリスト」という社会の上下間の距離(そして、見えない「テロリスト」という物理的な距離も)の、リモートなバディだった。今作では休戦ラインをはさんだ南と北、言うなれば初めから左右の距離があるようなリモートなバディがひとつ。また、エイハブは身動き出来ない状態ゆえ物理的にも距離のある北の医師(イ・ソンギュン)の指示をリモートで受け、「キング」の延命を図るという意味でも距離があり破格なバディだった。そして南側は人を殺す傭兵で、北側は人を助ける医師という、生き方の非対称性にも距離がある。しかし、어이 북한!남조선고맙다...북한というそっけない会話の、名も知らぬ(呼ばぬ)距離のあるバディが遂に「リモート」ではなくなり疎通し協働して命を守り、空中で...のクライマックスは現実の分断の悲劇を少しは慰撫するようなカタルシスだった。ファンタジックだとしても微かな希望の余韻を纏っていた。彼らが共に着地した地が南なのか北なのかあるいはどちらでもないDMZなのか、気になりつつも。チョン・ジェホン監督『豊山犬』とはまた位相の異なる、南と北のあわいで。折しも、DPRKの委員長から韓国の大統領に届いた親書には「남녘(南側)の同胞」の健康と安全を祈る言葉が。もはや「リモート」ではない、疎通できる距離にいる、という微かな希望がまた。エンドクレジットにSAG-AFTRA(全米映画俳優組合)。韓国映画ではなかなか見なかったクレジット。ブラック・リザードのメンバー役俳優たちの半数は軍人・傭兵の経歴があるとか。to be continued...!?buzz KOREAClick...にほんブログ村 韓国映画にほんブログ村 映画にほんブログ村 映画評論・レビューにほんブログ村 韓国情報にほんブログ村 K-POPにほんブログ村Copyright 2003-2025 Dalnara, confuoco. All rights reserved.本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、表現や情報、意見、解釈、考察、解説ロジックや発想(アイデア)・視点(着眼点)、写真・画像等もコピー・利用・流用・盗用することは禁止します。剽窃厳禁。悪質なキュレーション Curation 型剽窃、つまみ食い剽窃もお断り。複製のみならず、ベース下敷きにし、語尾や文体などを変えた剽窃、リライト、切り刻んで翻案等も著作権侵害です。