confuoco Dalnara

2023/01/01(日)16:27

メビウス

映画(1544)

夫(チョ・ジェヒョン)の度重なる浮気への報復として 息子(ソ・ヨンジュ)の性器を切り取った母(イ・ウヌ)は家出した。 自責の念に駆られる父がとった行動は... キム・ジェホン共演 김기덕監督『メビウス 뫼비우스 Moebius』(2013年) (以下、映画の核心に触れる部分もございます) 東京フィルメックスで 김기덕監督新作『一対一 일대일 ONE ON ONE』を観た際監督は 『悪い女 青い門』(1998年) チョ・ジェヒョン主演『悪い男』(2001年) 『春夏秋冬そして春』(2003年) 『メビウス』(2013年) で人間が生きていく上で避けられない痛みについて、 人間を取り巻く痛みについて描いてきたと話していたが... 男性が生涯気付くことがないであろう、 快楽に伴う痛みを可視化し戯画化し 生の深遠さを寓話的に提示している。 (女性は人生のさまざまなシーンで痛みを感じている。 子どもを授かる時、子どもを産む時... 一方、男性はそんな痛みとは一生無縁で、快楽しかない。 もし男性の無痛な快楽に痛みが伴うようになったら...という寓意も) セリフ無しの演出は実験的だが 過激な設定がもたらす痛みをやわらげ 悲劇と喜劇の間を往来するコミカルさを生む効果が。 また、セリフという言葉ではなく 演技という肉体、身体性がクローズアップされ、より観客に視覚的に迫ってくる。 言語を超えたセリフ無しの世界観は 韓国社会や韓国映画というボーダーをも超え、 普遍性を獲得しやすい余白、余地を生む。 メタ言語、言い換えれば観客の想像力を刺激する。 母親役の女優が逃げ出したため 愛人役のイ・ウヌが一人二役で母親役も演じたそうだが、 瓢箪から駒的に 結果的に演劇的効果をも生みながら 想像力を刺激されてさまざまな思いをめぐらせることに。 男が魅かれる女は妻に似ているのか、 母に似ているのか 女が魅かれる男は夫に似ている男なのか... 本能的に無意識に生物学的に 求める異性は循環し人類の記憶に連なるよう。 メビウスの輪のようにめぐり廻る、 男と女の間に起こることの不思議さに DNAの記憶を強力に喚起する演出、効果にもなっていた。 母親が父親に掴みかかって倒れ スカートがめくれあがって白いパンティが見えるシーンは 演劇的だなぁ(型があるなぁ)と思いつつ... 김기덕の映画にはキリスト教的な世界観、 聖母のような母性が出て来ることもあるが... (『嘆きのピエタ』)、 今回の作品はキリスト教ではなく 仏教が必然。 メビウスの輪が輪廻転生や再生、永遠回帰にも連なっているから... そして仏教的世界観とDNAの二重らせん構造が メビウスの輪で遥か人類につながっている感触も。 (監督曰く、性器のロードムービー) 設定も演出も粗さがあるけれど その分考えや想像をめぐらせる余地・余白が豊富で 解釈し続けるおもしろさがある(もっといろいろ書けそう...)。 俳優たちはしんどかっただろうなぁ、と思いつつも。 特にイ・ウヌさんや 『未熟な犯罪者 범죄소년 Juvenile Offender』主演の若いソ・ヨンジュさん... 太平簫태평소が響くような音楽が印象的。 余談ですが メビウスの輪 Möbius loopの Möbiusをハングル表記すると 메비우스でも매비우스でもなく、 より原語に近い뫼비우스表記になるのだなぁと感慨深い。 日本語圏に暮らしていると メビウス=메비우스と発想しがちだから。 サッカーワールドカップの際の国名表記も原語に忠実な傾向に気付いた... ちなみに フランスを代表するBDバンドデシネ作家、 パク・チャヌク監督もファンだというジャン・ジローこと メビウス Moebiusのハングル表記は뫼비위스らしい... to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2023 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、 写真・画像等も コピー・利用・流用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、切り刻んで翻案等も著作権侵害です。

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