confuoco Dalnara

2021/08/23(月)04:40

群盗 군도

映画(1544)

あらすじ 朝鮮王朝 哲宗13年(1862年)の羅州。 自然災害に飢饉、官吏からの過酷な徴税、取り立てに 民は百姓は疲弊しきっていた。 貧しくも家族と幸せに暮らしていたペクチョン白丁トルムチ/トチ(ハ・ジョンウ)は あることをきっかけに大富豪チョ・ウォンスクの庶子 チョ・ユン(カン・ドンウォン)に復讐を誓って 義賊である群盗、智異山チュソルに合流した... イ・ギョンヨン、イ・ソンミン、チョ・ジヌン、マ・ドンソク ユン・ジヘ、チュ・ジンモ、ソン・ヨンチャン、キム・ビョンオク 特別出演キム・ヘスク、ハン・イェリ、イ・デビッド、キム・コッピ共演 ユン・ジョンビン監督『群盗 군도:민란의 시대(群盗:民乱の時代) KUNDO:Age of the Rampant』(2014年) (以下、映画の核心に触れる部分もございます) 水滸伝的義賊がウェスタン風に。 約150年前の李朝水滸伝っぽさも。 ジャンゴ Djangoのウェスタン音楽が使われてもいる。 庶子という社会から半分はじき出された(出世は限定される)、 存在感の不確かな社会の透明人間、半透明人間と 白丁で牛豚の畜殺業という卑しい身分ゆえ 社会から見えない・見られない、看過される存在である透明人間。 似たように社会に居場所なく存在(感)も限定されている チョ・ユンとトルムチが疎外者としての影と光のように対比されている。 既婚ではないのに髷を結っているユンが髷を切られた時は 髷の下から、仮面の下仮姿から本性が表れるようでもあるが... 髷を切られ 長い髪を靡かせるユンは(透明人間らしく)まるで幽霊。 復讐に滾る幽霊のような姿を見せ、 ユンが宙に翻る映像も幻想的になる。 そんな、幽霊のように長い髪を靡かせる 蒼白いユンは剃髪のトルムチと対照的でもある。 ある意味写し鏡のようなふたりの透明人間、社会から疎外された人物でありながら 一方は昏い欲望や殺意、ルサンチマンを抑制することを学び、 義賊ながら人間的な思想を持つコミュニティに染まって行く。 僧テンチュ(イ・ギョンヨン)がおしえる人間的に生きること、 人倫等の思想、言葉が トチを啓蒙するのだ。 (19世紀に「人間的」等と言う言葉、表現があったかどうかは不明だが) 抗日運動や民主化運動の舞台になった寺院、仏教(宗教)の 役割と人間(性)の啓蒙を想起もさせる。 実際、全羅南北道と慶尚南道にまたがる智異山 지리산は 仏教が排斥された朝鮮王朝時代には仏教寺院が寺基を求めた地。 華厳寺、燕谷寺、双渓寺、松広寺、実相寺等を擁する。 甲午農民戦争や抗日運動の拠点ともなり 抵抗の地として象徴的な存在でもあるのが智異山。 その精神、反骨精神をも包蔵し、歴史に繋がる象徴的な設定。 宿阿のようなチョ・ユンと赤ん坊との因縁も興味深い。 チョ・ユン11歳の頃には自分の存在を守るため、 レゾンデートル raison d'etreのためであるかのように 生まれたばかりの異母弟を殺そうとし 成人になってはまたもや自分の存在を脅かす新たな赤ん坊、 甥を殺そうとし... 透明人間のチョ・ユンを完全に影の存在に引き摺り下ろすように 赤ん坊という存在が刺客のように宿命のように二度にわたって 彼を脅かすかのように彼の人生に迫り、現れる。 そんな、自分の存在を脅かす赤ん坊を亡き者にしたいのに クライマックスでは 赤ちゃんを抱えて生かしたまま戦うチョ・ユンの状況と、 そのアンビバレントな心境が印象的。 殺戮と死を体現するようなチョ・ユンの手の内にある生命(=赤ちゃん)。 アクションは カメラの動きも変えなかなか工夫している。 スローモーションも交えショー・ブラザーズからのカンフー映画的 伝統の香りも。 敵の首を中心にして360度回転するユンの剣技が新鮮でおもしろい。美しくもある。 手回し砲の連射(がらんガランとゆっくり目)や 二丁拳銃代わりの二丁肉切り包丁(トチが屠殺で握り慣れた包丁)遣いが ウエスタンっぽくも、 銃とは異なるテンポも作って韓国らしい。 칼의 웨스턴=刀・剣のウェスタン。韓国時代劇の味を出している。 トルムチが竹やぶで竹を引っ張る訓練は『ベスト・キッド』っぽい。 チ・サンミンらが武術監督。 뭉치면 백성, 흩어지면 도적 「集まれば百姓、散れば盗賊」も含蓄がある。 百姓の、百姓としての集合、その力を尊重もしている。 市井の民を信じてもいい、期待もしている、という思いが。 姜文監督『さらば復讐の狼たちよ 譲子弾飛 Let the Bullets Fly』の、 臆病で周りを、様子を伺うばかりで動かない大衆と対照的な描写。 集まれば合集すれば変えられる、革命になる...という希望だろうか。 百姓・民と大衆のギャップ。 現代にも通じるメッセージを孕んで。 (百姓を騙して土地を奪う官吏は 植民地時代の日本、総督府のやり口を想起もさせて興味深い) 2014年はチェ・ミンシク主演『鳴梁 명량』をはじめ、 『海賊:海へ行った山賊 해적:바다로 간 산적』 『王の涙 -イ・サンの決断- 역린』等の時代劇が人気を集めていたが... 今作は社会(問題)や人間の生き方・尊厳、リーダーシップ等についても考えさせ 時代精神を伝える点で 後者一作や 『風と共に去りぬ!? 바람과 합께 사라지다』に近いようなスタンス...かも。 史劇・時代劇の表現力、拡張性については2013年に記していた通り、 歴史上の人物や出来事等を通して(時代背景を借りて) 現代社会と共通する問題を描出して提起し、政府等お上を批判し 観客の共感、カタルシス (即ち、韓国でよく使われる言葉代理満足)を庶民が得ることが出来る、 韓国らしい時代精神を込めることが出来る話法のひとつ。 ウェスタン活劇に込められた時代精神という奥行き。 それは、 韓国の現代社会で問題となっている甲乙関係 갑을관계が 絶対的な上下関係や 強者と弱者の間の対立や問題にとどまらず 弱者間でも 弱者同士また相対的な甲乙関係を作っている現代の状況を 白丁トルムチと庶子チョ・ユンという 二人の「乙」、日陰者、社会から疎外された、透明人間同士の対立にも投影している奥行きが 感じられるから。 言葉について。 イ・テギ(チョ・ジヌン)は慶尚道っぽい訛りに聞こえたが トチは거시기を使って全羅道っぽい訛りだった。 全羅南北道と慶尚南道にまたがる智異山という立地、土地柄が よく出ているかも... ユン・ジョンビン監督前作 『犯罪との戦争:悪いやつらの全盛時代 범죄와의 전쟁:나쁜놈들 전성시대』に続いて 今作もタイトルに時代が入っていることに注目した。 『悪いやつら』は 厳しい時代をくぐり抜け生き延びた 無名の父たちを記録し記憶する作品だったが、 今作も無名のまま歴史に埋没してしまうような白丁と庶子という ふたりの「乙」、疎外された者の葛藤を描いて、単なるウェスタン活劇を超えて 記憶に残る。 どちらもアンチ・ヒーローで、その光と翳のような行く末に 屈折した心理、葛藤と共に。 名も無き男たちの歴史と心情を記憶する。 エンド・クレジット Thanks to にリュ・スンワン監督の名前も д・) to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2022 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や情報、意見、解釈、考察 ロジックや発想(アイデア)・視点(着眼点)、写真・画像等もコピー・利用・流用することは 禁止します。剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、切り刻んで翻案等も著作権侵害です。

続きを読む

このブログでよく読まれている記事

もっと見る

総合記事ランキング

もっと見る