confuoco Dalnara

2024/02/14(水)15:23

コリアン・シネマ・ウィーク 許三観 허삼관

映画(1544)

あらすじ 朝鮮戦争直後の公州、 貧しいホ・サムグァン/許三観(ハ・ジョンウ)は 血を売って大金を得て ひと目ぼれしたホ・オンナン/許玉蘭(ハ・ジウォン)とついに結婚、 イルラク/一楽(ナム・ダルム)、イラク/二楽(ノ・ガンミン)、 サムラク/三楽(チョン・ヒョンソク)と三人の息子に恵まれた。 が、長男イルラクが オンナンと元恋人ハ・ソヨン/何少勇(ミン・ムジェ)の間の子ではという 噂が立ち、子煩悩なホ・サムグァンは苦悩する... チョン・ヘジン、チャン・グァン、チュ・ジンモ、 ソン・ドンイル、チョン・マンシク、チョ・ジヌン、 イ・ギョンヨン、ユン・ウネら共演 ハ・ジョンウ監督『ホ・サムグァン(許三観) 허삼관 (いつか家族に)』(2015年)を コリアン・シネマ・ウィークで。 原作は中国でベストセラー、世界各国で翻訳版が出版されている 余華の「血を売る男(許三観売血記)」 あとがきによると 韓国と香港でまず舞台化もされていたそうだが... 映画版の脚本は舞台版と共通するのかしら? (以下、映画の核心に触れる部分もございます) 韓国と中国では歴史的背景が異なるため、 原作の、 安定した国営工場労働者→「大躍進」政策失敗による大飢饉 →文化大革命、批判集会→下放... などといった中国政治史、共産主義の失敗、中国現代史は映画に反映されていない。 しかし、それをもって韓国映画の限界と一方的に断ずるのは あまりに拙速且つ非知性的(反知性的とも言うか)で非論理的。 文革のない韓国に どのように文革の設定を創作して映画を製作することができるというのだろう... 他の原作もの映画を全て精査している訳でもなく、 韓国関連の場合にのみ厳しい基準を適用し 一方的に、不公正且つ不公平に断ずる偏見の宿痾... ただ一方で... 文学作品の映画化は、 文学的な余韻をエンタメ性高い映画のフレームにおさめることは なかなか難しいと思う。 原作はホ・サムグァンの髪が白くなるまで続き 彼がぼやくような、庶民のちいさな胸の裡が余韻を残す。 また、文革時、批判集会の矢面に立たされた妻オンナンの姿、 熾烈な運命に言葉を失う。 余談だが戦争中日本軍慰安婦にされた中国女性は 原作のオンナン同様、文革時批判の矢面に立たされたそう。 また、この頃(文革前後、中国に)登場した壁新聞(大字報 대자보)は 韓国にも伝わっている(韓国ではインターネット時代の2013年頃になって復活も)。 閑話休題。 献血/売血は 「孝経」の 身體髮膚 受之父母 不敢毀傷 孝之始也 (身体髪膚、之を父母に受く。 敢えて毀傷せざるは、孝の始めなり)により、 容易からざる行為だが... 文化的に近い中国の原作だけあって、 親子、特に息子の血統を重視する価値観が強い韓国だからこそ 血のつながりのない息子のためにも血を売り続ける行為に重みがある。 家族、血縁を繋ぐ血という、「日の当たる」血の概念、陽の面と対照的な、 血を売って息子たちを、血の繋がっていない息子をも 食べさせ、育てるという陰の面、そしてアイロニックな状況は ある時ある場所でのぎりぎりに追い詰められた生の描出でありながら、 究極の無償行為で... 父の愛、親子の情の普遍性に思い至る。 ハ・ジョンウ監督による映画化は 韓国的な情緒とややファンタジックな(新派的雰囲気も少々)演出で 血(血統)によってもっとも遠く離され憎しみ合い疎遠になりそうだった父と子が 血(売血)によってもっとも近づけられ、心を寄せ合う奇跡のようなドラマ、昂揚を伝える。 原作者の余華はハ・ジョンウの作品はすべて観ている、と メッセージを寄せるほどだったが、 韓国版『許三観』をどのように観ただろうか... 少なくとも ふたつの血、 親子を引き離したはずの血(血統)が 今度は親子を結びつける役割=売血の血として現れる転回、転換による カタルシスは映画版にも映し出されていると思う。 血統への思いに揺らぎ、血の二面性に翻弄される人間が 前近代的な価値観を捨て、ただひたすらな人間愛に目覚める過程。 公州から少しずつソウルに上がって行く道行、 凄絶な売血記は、血を売りながら古い価値観を捨て人間の業を捨て 生まれ変わる過程のよう... 余談ですが 原作では売血後豚レバーの炒め物を食べ 韓国映画版はスンデを食べ。 家族五人で布団の上に横になり サムグァンが言葉で料理をこしらえていくシーンで 長男が食べたがる饅頭(肉まん)は原作では紅焼肉、 オンナンが食べたいと言うのは紹興酒も入ったフナの塩煮込み。 韓国映画版は食べ物のシーン(特に後半お店でのシーン)が おとぎ話のような雰囲気の描写で... 「めでたし、めでたし」というファンタジックな余韻を残す。 そこが、原作と少々雰囲気の異なるところ。 意外にも 主人公の名前は漢字が全て原作といっしょ。 読み方は韓国語読み。 韓国人の名前らしくない雰囲気もあって よりファンタジックな印象をもたらしているかも... 昨年のコリアン・シネマ・ウィークで上映された 『晩餐』主演チョン・ウィガプがムーダン(巫堂)役で出演、韓国らしいアレンジ。 to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2025 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察、解説 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、 写真・画像等も コピー・利用・流用・盗用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、 ベース下敷きにし、語尾や文体などを変えた剽窃、 リライト、 切り刻んで翻案等も著作権侵害です。

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