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カテゴリ:映画
シム・ウンギョン、松坂桃李主演
藤井道人監督『新聞記者』 (以下、映画の核心に触れる部分もございます) 原案の東京新聞望月衣塑子記者と、 南彰新聞労連委員長(望月衣塑子氏と共著あり)、前川喜平前事務次官 マーティン・ファクラー Martin Fackler 前ニューヨーク・タイムズ(NYT)東京支局長の座談会の映像が 繰り返し主人公吉岡エリカ記者(シム・ウンギョン)自宅の仕事机の上で流れる。 一方、内閣情報調査室などでもその座談会、同じ映像がモニターでチェックされているが その音声はスクリーンのこちら側には聞こえて来ない。 耳を傾ける側の人とただモニタリングしている側の人との対比。 映画はフィクションで描かれるが 公文書改竄や特区に(文科省や厚労省ではなく)内閣府主導で大学大学院新設など、 現実を髣髴とさせる、現実に引き写し現実に地続きな「問題」も描かれる。 日本の観客ならすぐに、あぁあのこと、と思い当たるような事件。 さらに劇中ノンフィクション、劇中ドキュメンタリーのごとく、 フィクションの中に現実の映像も、望月記者らの座談会映像が ドキュメンタリーのように埋め込まれコラージュされ 現実とフィクションを行き来するような趣も。 国会前の市民デモの実際の映像には取材する望月記者を捉えたカットも。 ただ、市民の姿、動きはなかなか見えてこない。 内調と記者間の葛藤がクライマックスを迎え、 調査報道記事は官邸から誤報の烙印を押されてしまう。 メディアは圧力を受け、官僚が実名で証言するかどうかという瀬戸際で 真の民主主義を獲得するため こっち側(メディア)とあっち側(政府)が結局共闘するのかどうか。 霞ヶ関の横断歩道のこちら側とあちら側で向き合ったままなかなか歩き出さない両者が 共闘できるのか、闘い続けるのかどうかはわからなかった。 しかも、杉原(松坂桃李)の口の動きは(ごめんなさい...)と言っているようだった。 だが、映画の中の現実の映像座談会で望月記者が個(人)の声を集め...(大意)と言っていたことを思い起こせば ボールは観客側に、一般市民の側に今度は投げられていると感じた。 韓国のドキュメンタリー映画『共犯者たち 공범자들』では 声を上げたジャーナリスト チェ・スンホ 최승호 氏や一人デモで孤軍奮闘していた記者に 市民が声をかけ始め、寄り添い、応援の輪も広がり それは結局ろうそくデモ、キャンドル集会、ろうそく革命のうねりになった。 日本もジャーナリストと市民の間に距離はあるかもしれない。 国民の知る権利が侵害されていても報道の自由度が年々低下し デービッド・ケイ特別報告者が国連人権理事会に提出した通り 「日本では政府が批判的なジャーナリストに圧力をかけるなど 報道の自由に懸念」があっても 事実はもみ消されたり「誤報」扱いされて知らされていないこと、 共有されていないことが多いのかもしれない。 しかし、お互いの声を聞き、その距離を埋めるのは、次の一歩は...と考えさせられる。 カタルシスのない映画かもしれないが 次はスクリーンのこちら側、私たち市民、有権者にボールが投げられているのだ、という感慨。 映画の中には傷つけられた人が多く出て来る。 国家がこれだけ国民を、政府側の国民も(神崎の遺書にも「国民として父として」とある) 民間側の国民(詩織さんを髣髴とさせるさゆりさん)も傷つけることが出来るのか、と愕然とさせられる。 しかし、傷ついて斃れる人もいれば、倒れても倒れても立ち上がる人もいる。 父を国家に「殺され」、最も傷ついたはずの吉岡記者が立ち上がり走り出す懸命な姿は 未来のカタルシスにつながる希望と清々しい余韻を残した。 「この国の民主主義は形だけでいい」を撥ね返すために、 倒れても立ち上がる人に駆け寄り、寄り添い、支えるアクションは こちらにかかっている、今度はこちらの番、と感じながら。 松坂桃李の演技は『孤狼の血』に引き続き、 正義とは?に苦悩し葛藤する姿を好演。 役名「杉原」はあの外交官も髣髴とさせる。 シム・ウンギョンが素晴らしい。 冒頭の怒りのシーンと 最後に多田から父の死の真相を聞かされて怒るシーンと 怒りの表現は違うが、どちらも「正しく」怒る姿を見せている。 恐らく韓国の俳優だからこそ、正しいか正しくないかに基づいた怒りを 「正しく」表現出来ているのだ。その演技力に圧倒された。 新聞記者からも官僚からも見える国会議事堂も象徴的だった。 音楽は岩代太郎。 to be continued...!? buzz KOREA Click... にほんブログ村 韓国映画 にほんブログ村 映画 にほんブログ村 映画評論・レビュー にほんブログ村 韓国情報 にほんブログ村 K-POP にほんブログ村 Copyright 2003-2025 Dalnara, confuoco. All rights reserved. 本ブログ、サイトの全部或いは一部を引用、言及する際は 著作権法に基づき出典(ブログ名とURL)を明記してください。 無断で本ブログ、サイトの全部あるいは一部、 表現や 情報、意見、 解釈、考察、解説 ロジックや発想(アイデア)・ 視点(着眼点)、 写真・画像等も コピー・利用・流用・盗用することは禁止します。 剽窃厳禁。 悪質なキュレーション Curation 型剽窃、 つまみ食い剽窃もお断り。 複製のみならず、 ベース下敷きにし、語尾や文体などを変えた剽窃、 リライト、 切り刻んで翻案等も著作権侵害です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Jan 21, 2024 02:50:28 PM
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