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今週も引き続き、国税庁長官からコロンビア大使、そして今は横浜銀行頭取に天下りしている寺澤辰磨さんです。
最初は国税庁長官時代の功績について誇りますが(本当にこの人はあっけらかんとして自分の功績?を喋られる人ですね)、寺澤さんいわく、行政は最大のサービス産業であり、それは国民から税金を徴収する税務署でも同じ、と胸を張ります。そして顧客(納税者)の便宜を図るために納税時期である2月は日曜日にも相談を受け付けるように改革しました、と語ります。 そして一般人の嫌がる国税査察も、国民に税の透明性、公平性を納得してもらうためにやるものです、と建前を言って恥じません。これはある意味で立派なこと。でも本当に巨額の脱税をしている者たちに司直の手が本当に入っているのか、疑問です。 さらにコロンビア大使時代の話では、コロンビアの素晴らしさをたっぷり紹介してくれましたが、ここでもコロンビアの立場に立つ建前のスピーカー、という印象でした。さてそのコロンビア讃歌ですが。 コロンビアは言われているほど危険な国ではない。行ってみるととてもいい国。中南米の国とほとんど同じラテン系で同じキリスト教文化を持ち、同じような風土ながら、経済運営だけはまるで違うのです。 南米の多くの国はハイパーインフレを起こし、軍事クーデターがあって、しかもデフォルトしていますが、コロンビアではそれが一切ありません。これはなぜか、と調べてみてわかったことは「ポピュリズムがない」ということでした。政治家の中にポピュリストがいないのです。 それはどうしてか、と言うことで研究者の論文を紹介してくれましたが、3つの理由があるようです。一つはコロンビアの政治制度は歴史的に大都市所有者がいて彼らが票を持っているというもので、一般大衆に媚びて票を集める必要がないということ。この地方のボスたちは、インフレは困るので財政規律をちゃんとやれ、とずっと言ってきたとのこと。 もう一つは大蔵大臣以下全員がアメリカの大学を出たテクノクラート、官僚であり政治家ではない。彼らは政治家から経済政策で責められるが大統領制の下で守られていて、大衆にこびる政策をとる必要がないということ。 最後は言論の自由があるということ。テクノクラート官僚の政策に対して学者や財界からガンガン批判がなされるがそれも自由。ただし批判していた学者も政府に入ることがあり、お互い、第三者的な議論ではなくて、自分だったらこうする、という建設的な議論ができていると言います。 まったく素晴らしい?体制ですね。幸田さんは、日本にも似たような感じもあるが、本質的に違っているところもある、と首をかしげます。 さらにすごいのは1980年代、コーヒーブームに沸いて景気が良かったときに、IMFなどから積極的な投資を進められたがそれを断って過去の債務を返済したのです、と寺澤さん。幸田さんも立派、と褒めますが、この投資を断って経済発展の芽を摘んででも財政規律超重視で債務返済に向かうという姿勢、まさに今の日本の財務省のやり方そのまま、ということで、改めて寺澤さんの立ち位置が分かります。彼が素晴らしいポストを歴任できている理由も薄っすら想像できます。 ここで中間です。 後半は2002年から2010年まで大統領を務めてコロンビアを安定させたウリベ大統領の讃歌です。 ウリベ大統領は就任後、真っ先に増税を行い、それにより軍隊と警察を増強して治安対策をキッチリしました。おかげで首都ボゴタはワシントンよりも安全と言われるようになり、その結果海外からの投資も増え、株式総額は10倍になりました。 そのため大統領の人気も高く(任期中の平均支持率が80%)、本来は1期しかできない大統領を憲法改正により2期やったのです。さらにもう1期やらせるための国民投票法案を出したのですが、これは憲法裁判所が拒否しました。そういう意味で司法もきちんと機能しています。(それにしても2期、3期と任期延長を望み、仕掛けたのは大統領ではないのか、という当然の疑問もわきます) さらに任期の最後にも増税をして治安対策を維持しましたが、これも国民は支持しました。これができるのは国民のあいだに民主主義が機能しているからです、とコロンビアを絶賛。 増税には政府と国民の間に信頼関係が必要。日本にはそれが今なくなっている、と幸田さん。 なぜ信頼関係があるかというと政策が首尾一貫しているから。保険料を上げたり、年金を減らしたり厳しい政策をしても国民は治安維持を第一に考えて支持しているのです。 コロンビアの人口は100年間で11倍に増えて4000万人くらいとか。まあ日本も20世紀に3倍くらいにはなっていますが。 ただ残念なことに貧富の差は大きいのです。国民の45%は貧困者。でも全体の93%が今の生活に満足しているのです。貧困層が満足しているのは社会保障がきちんとしているから。 コロンビアの政界は保守党、自由党の2大政党に20%の左翼ゲリラ出身の議員がいるという構造。2大政党の間に入って、ゲリラ勢力がキャスティングボードを握っている状態にあり、その結果、福祉的な政策が採用されているのです。 結局、増税しながら治安を維持して、貧困者はいるが適度な福祉もあって国民は満足している、ということでしょうか。盛んに国民の支持、と言いますが、投票は地域のボスに支配されているということで支持の真実はわかりません。 第一、日本でマネしようもない政策ばかりです。日本は国民一人一人がボスに影響されずに投票できるわけだし、治安は増税する必要もなく安定しています。年金、医療も世界でも類を見ない立派なものですし、貧困者もそれほどいません。 結局、寺澤さんは財政規律がしっかりしていることが最優先で、そのためには経済発展も二の次、それでもコロンビアは成功したのだから日本も増税から財政規律を一番にやれ、そう言っているようにしか思えませんでした。 最後に幸田さんが「横浜銀行をどうするか」と聞きますが、「地元の銀行がしっかりすることが大切で、これによってお客様のニーズをしっかりとらえていきたい」と答えて終わりです。さっそく日曜日も支店を開けることを始めた、と自慢していました。 幸田さんは、「寺澤さんはどんどん改革をやる人。地銀から金融力を発揮してほしい」とエールを送って終わりです。 なんか文句を言ってばかりで自分でも情けなくなります。それなら聴かなければいいじゃないか、とも思いますが、もう習慣になっているのですね。「継続は拘束力」になっているのかも。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.07.02 21:29:52
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