ちょうちょを追いかけて À la poursuite du papillon

2023/12/16(土)12:21

サンサシオンを意識する 山口晃のジャム・セッションに行ってきました

備忘録(5)

先月、ジャム・セッション「石橋財団コレクション×山口晃 ここへきて やむに止まれぬ サンサシオン」を観てきました。 時間が足りなかったのもあり、様々な要素がてんこ盛りな展示を一言で語るのは難しいのですが、山口晃さんが絵師として背負っているものとその先にある表現に目が行きました。 前回の東京開催されたパラリンピックの公式ポスターを担当していらっしゃったわけですが、これがもう生命力や躍動感が満ちて、素晴らしい絵でした。 それからこの仕事を請け負った背景や依頼を受けた際のご自身の中での葛藤などを伺い知れる内容になっていました。 「天才には天才の悩みがあるんだな」とシンプルに思う私ですが。 オリンピックと政治の関係、そして芸術が歴史上でどう扱われてきたのか、などにも及ぶ話ではあります。(私でもナチスドイツとベルリンオリンピック、とか国威とか、メディチ家がパトロンだった件など、浅い知識でも思い浮かぶことはあります。) アーティゾン美術館とのジャムセッションということで、所蔵品の中から雪舟の水墨画やセザンヌの絵などを分析し、模写し、再構築するような試みもありました。 特にセザンヌの絵に秘められた、奥行きの捉え方が面白いと感じました。 これまではセザンヌの絵について「素朴でガサッとした作風の後期印象派画家だったかな?」くらいの解像度しかなかったので、ハッとしました。 タイトルの「サンサシオン」については、山口晃氏曰く、 「感情にいたる前の感覚のこと。 ポール・セザンヌが制作について話す時によく用いた言葉でもある。」 とのこと。 美術手帖に山口氏のインタビュー記事がありますが、私は「大向こう」と称される西洋絵画の影響を突っ切って、最終的には『「誰に見せるでもない、ただ一人で描く絵」をもとにするようになった』という言葉に集約されるのかなと解釈しました。 私はこの方を「すずしろ日記」から知ったのですが、今回の展示にもこの漫画形式のものが大量にあり、「ああ、時間が足りない」と後悔しながら楽しみました。 もっとじっくり観たかったです。 インスタレーションの面白さも相変わらずで、日本のアートもいいよ…ととてもシンプルな感動を伝えてくれる展示でした。 眼福です! 山口晃 大画面作品集 [ 山口晃 ] ヘンな日本美術史 [ 山口晃(1969生) ] すずしろ日記大好き。 すゞしろ日記(参) [ 山口晃(画家) ]

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