カテゴリ:コラム
頭の中の消しゴム・・・映画をご覧になった方もいらっしゃるかと 先日の部落のおばあちゃんの話しの続編 プラムのおばちゃんが下の町まで目薬を処方してもらいにいくので、行きはバスがあるからそれを利用するけれど、帰りにはバスがないので迎えにきてもらえるかと・・・ 歩いて登ると1時間近くかかるので、寒くなければ散歩がてら登るらしいが、寒い上にあまり具合もよくないから、と頼まれました。 たいした距離ではない往復しても10分ほどなので、引き受けたのですが迎えにいったら、おばちゃんが大笑い 休診の曜日を1日間違え、せっかくいったのに休診で処方してもらえなかったと・・ 何度も謝り、自分の頭の記憶がどんどんおかしくなっていることを詫びた。 『あのおばあちゃんのようになっちゃうと、きっともっと迷惑をかけるんだろうなあ・・困ったなあ~こんな迷惑かけてしまって、本当に困った・・』と。 翌日、代理で私が薬を貰いにこれるように受付の方にお願いして戻りましたが、ずっと謝りっぱなし。 山を登ってくる途中で、前に軽トラ・・・ 軽トラは坂をなんどもエンストし、止まりながら登って行く。 『危ないから離れていけっし~』とおばちゃん その運転手は80過ぎのおじいちゃん 軽トラも古いのだろうけれど、頭はもっと古く、いつもこの部落を20キロあまりのスピードで交通ルールーも無視して走っている おばちゃんが運転を気をつけるよう言ったところ、気をつけろとは何事だ、俺はなにも悪くないと怒鳴り散らしたという。 言うこともやることも滅茶苦茶になってきていて、とても危険だから、みかけたら近づかないほうがいいと・・・ 昔ながらの黙って耐える妻がいるものの、激情型のおじいちゃんを抑えることはできず他に誰もおじさんをたしなめることができる人はいないという。
頭の中の消しゴムは、年と共に様々な部分を消していく。 私も、1日に何を何回忘れて、どんなドジをするか、書いたらきりがない。 去年はジャムをなんど焦がしたかわからない。 持っていたはずのハサミをどこかに置いてしまって、庭中探して、見つかったときには何をしていたのか忘れている・・・そんなことはしょっちゅうある。 言った言わないで同居人といい争いになることもあるが、 『そう言ってたぞ』といわれ、しばらく考えると確かに言ったような気がするときもあるし、全く思い出せないときもある。 それでもいっしょに暮らす人がいるから、自分の頭の中にある消しゴムが、正しく動いていないことはわかっている。 そもそも人間には皆この消しゴムは存在する。 忘れることができるから、人は生きていかれるとさえ言われるくらい、過去のことをパーフェクトに覚えている人間など存在しない。 頭にある消しゴムは正しく機能している分には、それを自覚する必要もない。 映画では病気で若いうちに発生し、愛する人のことも自分のこともすっかり忘れてしまったけれど、年齢と共に病気とまでいかなくても、消しゴムはとんでもないことを消してしまうことがある。 いっしょに暮らす人がいれば、ある程度までそれを自覚する機会も多く、自分の記憶が既に定かではないことを考慮して人と接することができる。ある程度までは同居人は防波堤になれるようだ。 私の祖父は祖母が生きている間は、いつも祖母が防波堤になって、そういっていましたよ、あれをやっていたんですよ、と喧嘩しながらも大きな被害はなかった。 でも祖母がなくなって、一度にそれは悪化し、汚い話で恐縮ですが祖父のあとに入浴すると浴槽にうんちが沈んでいたり、お昼を食べさせてくれないと町中に言って歩いたり・・・それはもうひどい状況だった。 そして何より同居していた私達家族が嘘をついていると、たまにしかこない父の兄弟に言われ母はののしられ、最後はいっしょに暮らしていた家を祖父が勝手に契約し売り払い、両親は祖父と売ったお金をすべて兄弟に渡して、縁を切ることになった。 その後1ヶ月もしないで引き取った兄弟が、両親に土下座して謝り祖父は病院に入れられた。 共に暮らす人がどれだけ大変な思いをしているのか、回りが理解すればそんな事態にはならなかったであろうに・・ 頭の中にある消しゴムは、その人の記憶だけでなく人間関係をも消していく。 自覚できる年齢、環境であればお互い笑って済ませることもできるのだろうけれど・・・・ ここのところ、特に消しゴムの活動が盛んな私の頭の中。 間違ってもこの消しゴムのせいで人とのつながりまで消すことがないよう、努力したい。 消しゴムで消されてしまった記憶を指摘されたとき、相手をののしり、相手を悪者にし、さらに被害妄想になっても、いつかその消された記憶が戻ることがあるのだろうか? すでに消してしまった人間関係を元に戻すのは難しい。
危ない運転のあとを離れておばちゃんを家まで送った。 この部落もこういう危ない高齢者が急増中だ。 部落だけでなく日本中が・・・ 『笑い話にしておくからね!』 何度も謝るおばちゃんにそういって戻ってきた。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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