2005/12/02(金)13:29
元、軍人と犬
最強婆さん(カテゴリ)が忙しかった為
小学生の頃の 夏休みと春休みは彼女の身内の家で過ごしていた。
都会行きと田舎行きの二者選択だ。
春休みは 最強婆さんの出身地、東京の彼女の兄宅へ。
ここには従姉妹がたくさんいるので 遊べる。
夏休みは 現在の住居から車で1時間あまりの田舎の田舎へ。
彼女の叔父宅。ここには 彼女の従姉妹が2人いるが
私にしては 年の離れた大人のお姉さん2人と叔父だ。
どちらも楽しいのだが 私の好きな方は田舎。。
なぜなら 叔父宅には 猟犬が4匹と猫がいたからだ。
子供の頃から動物が大好きだった私には何よりも此処が天国だった。
戦争で軍人だった叔父は もの凄く恐い。
仕事を引退した後は 猟師として猪狩り をしていた。
猟から帰った後 猟銃を黙々と磨く姿は目に焼きついている。
それが終わると 3匹の犬を連れて夕方の散歩に出る。
叔父が「黒」と「寅」2匹。私が「ナカ」をひく。
「ナカ」はお婆ちゃんで 大人しかったから子供の私でも大丈夫だった。
夕暮れの中、鳥のさえずりだけが聞こえる森林の道だ。
煙草を吸いながら歩く叔父の背中を見ながら
「ナカ」に半分、引っ張って貰いながら歩く。
私達が遅れると 叔父達が待っててくれる。
こんな時の叔父の顔は 家では見せない優しい顔だった。
何も話はしなくても 凄く嬉しくて走っていったものだ。
犬の食事を済ませた後 夕飯を食べるのだが
この時には もう鬼軍曹の顔になって食事の仕方を注意される。
食べるのが遅かった私は だらだらしてしまう。
ぼうっとしていると こらっ!と来る。食べる順番もだ。
お姉さん達も 叔父がいるとピリピリしている。
叔母が亡くなった後 叔父はよりいっそう恐くなってたから。。
よく怒られては自分の部屋で泣いていた。
「くま」という犬を 叔父は叔母の代わりの様に大事にしていた。
この子は 1番長生きしてくれて
叔父以外には 誰が何をしようと懐かない忠犬だ。
お姉さん達が 似た者同志だと微笑んでいたものだ。
小学6年間の夏休み。毎年行った此処への記憶が
子供の頃の何よりの記憶の宝になっている。
こんな叔父が最近92歳で亡くなった。。
涙が止まらなかった。周りに恥ずかしい位、泣いた。
亡くなった後、昔の戦友から写真が送られてきた。
外国で馬に乗って行進している 若き頃の軍服姿の叔父の写真。
軍服姿で笑って 皆と話している顔。
この笑顔だ。 長い散歩の途中で見せる叔父の顔だ。
ただ ただ見つめ続けた。
そして、とても立派に誇らしく思えた。
いつか その写真をお姉さんから借りて
私も持っていたい。
その時は ここにも記したい。