2008/10/21(火)22:18
ショート
給料前の私の財布では
呑気に新宿を彷徨うことも出来なくって。
いつもの時間のいつもの電車に乗って
いつもの時間に駅に降りた。
一つしかない改札に
誰もが向かっていく。
私も押される波に飲まれるように階段を下りた。
ぼんやり少し前を見た。
あいつだ。
2ヶ月ぶりに見る顔だった。
あっ。と声が出そうだった。
一歩手前で出さずにいられたのは
その横に、女がいたから。
あの娘が、あいつの彼女だ。
私の前で、あいつが号泣して謝った相手だ。
その瞬間、私の思考回路はショートした。
逃げるように改札に向かった。
そんな時に限って、スムーズに行かない。
私と彼らの距離は
手を伸ばせば触れられそうな程、
縮まっていた。
改札を出るとき、
前をひたすら向いている私の目の端に
あいつの顔が見えた。
見つかったかな。
そう思った瞬間、
私は走り出していた。
気が付かれたかもしれない。
欲目から言うと、きっと気が疲れていないに違いない。
(まだ未練があるの?)
(会いたいとも思ってないじゃない!)
自問自答してみた。
だけど、なんか違う気もする。
大体、あいつの事を思う夜が最近あたかっつーの。
なのに、私は動揺していた。
とにかく焦っていた。
部屋の鍵を閉めて、チェーンも掛けた。
何のためかは分からない。
傷ついてる訳でもない。
何らかの期待を持っていたわけでもない。
引っ越したばかりで
常に整理整頓を心掛けてるのに
久々に服を脱ぎっぱなしにした。
コブクロのCDを掛けてみた。
どうも耳というか頭に入ってこない。
久しく吸っていないタバコを一本吸ってみた。
泣いてしまえば楽になるような気がしていた。
東京の空に煙を吐いてみた。
全くもって、泣けやしない。
泣く要素も見つからなかった。
「同じ駅に住んでれば、いつかは顔合わせるよ」
と言った、友達の言葉を思い出していた。
絶対ないと思ってた自分が
何を根拠にそう信じていたのかが
少しおかしくて、笑ってしまった。
笑いながら、やっぱり未練とは違うなと思った。
ただ、久々に再開するのに
この展開を私は予想していなかっただけなのだ。
予想していなかったから
逃げ出したのだ。
私たちの再会はもっと構えたものでなければいけないと思っていた。
結局、
失恋した相手には
失恋した時の、その瞬間の思い出の中にいて欲しいと
私は思っているのかもしれない。
また、一度でも飲みに行けば
そんな事もあったよねって笑って
水に流してしまおうって思ってたけど
ぼんやり、それは、本当はしてはいけないような気がした。
失恋は失恋なのだ。
まだ好き
とか
もう好きじゃない
とか
未練なんてないわ
なんて
そんな言葉は言い訳に過ぎない。
今、好きか好きじゃないかなんて事は
もう、きっと問題ではなくって。
その時、その瞬間に
私が傷ついたということは
ごまかしたり、水に流したり
出来る現実ではないのだ。
それをなかったことに出来るほど
多分、私もあいつも大人ではない。
どこかに気まずさが残る。
私はそれを知っていたのに
どうして、なかったことにしようと思ったのだろう。
それはきっと
中途半場な気持ちで恋心を抱き
中途半端な状況で告白し
中途半端に失恋し
中途半端に友達で繋ぎとめているからなのだ。
もう、二度と会わない。
とりあえず、最後に言いたいのは
あの電車の時間は
私のものだっつーの!!!!
先に唾付けてるっつーの!!!