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一語楽天・美は乱調の蟻

癒しきれない孤独

オリバー・ストーンのわりとB級の作品に(いや、僕はB級がとても好きなのだが)「Uターン」というのがある。ショーン・ペン主演であのジェーローことジェニファー・ロペスが悪女を演じている。そのサントラの一曲にサミ・スミスが歌う「一人ぼっちの夜(Help me make it through the night)」が入ってる。

「Me and Bobby McGee」を書いたクリス・クリストファソンの作品で、あるウェッブサイトによると史上もっともカバーされた曲ということになっている。なんと320ものバージョンがあるそうだ。ちょっと目に付くだけでも、元奥さんのリタ・クーリッジ、アニマルズ、アン・マレー、ボブ・ディラン、エルビス・プレスリー、グラディス・ナイト・アンド・ザ・ピップスなどが歌っている。

別のウエッブサイトに拠れば、サミ・スミスの歌ったバージョンはなんとラジオで400万回以上流れたそうだ。ラジオで流れた回数で言うと、これはもっとも人気のある100曲の一曲ぐらいになる。ちなみにトップ5はライチャス・ブラザーズの「ふられた気持ち(You've Lost That Lovin' Feelin')」、ビートルズの「イエスタディ」、アソシエーションの「ネバー・マイ・ラブ」、オーティス・レディングの「ドック・オブ・ザ・ベイ」、そしてベン・キングの「スタンド・バイ・ミイ」。

さて、このクリス・クリストファソンのCDを一枚手に入れたが、この男非常に変わっている。ローズ奨学金を受けオックスフォード大学で英文学を学んだ(ということはかなり頭がいいということだ)。West Point というアメリカ陸軍士官学校の英文学の教職を蹴って、カントリー・ウエスタンのメッカ、ナッシュビルにやってきたのが1965年、29歳のときだ。一匹狼フレッド・フォスターという男が立ち上げた、Monument というレコードレーベルに自作の曲を持ち込んだ。フレッド・フォスターはその場でクリスの才能に惚れ、雇うことを決めた。

数日後、フレッドがMonumentのビルの中の作曲家・ブドゥローのオフィスを訪ね、打ち合わせの都合でそのオフィスと自分のオフィスを何度も行き来した。ブドゥローのオフィスは新しい受付嬢・Barbra McKee を雇ったところだった。ブドゥローはフレッドをからかった。

ブドゥロー「なんだい、今日はずいぶん受付の前を行ったり来たりするね。Bobbie(Barbraの愛称)に気があるのかい?」
フレッド「ボビー?知らなかったの、僕とボビー・マキーのことを?(Me and Bobbie McKee)」

こうして「Me and Bobbie McGee」のアイデアが生まれたというわけだ。この後一週間の内に「Help me make it through the night」「Sunday morning coming down」という名曲が立て続けに誕生した。作詞・作曲はクリス・クリストファソン、「Me and Bobbie McGee」だけはフレッド・フォスターとの合作になっている。

クリスの書いた噛んでも噛んでも味わいの尽きない言葉の中から、二節ほど紹介。

Sunday Morning Coming Down
(二日酔いのひどい頭痛を抱えて歩く日曜の朝の光景)

On the Sunday morning sidewalks
Wishing Lord that I was stoned
'Cause there's something in a Sunday
Makes a body feel alone
And there's nothing short of dying
Half as lonesome as the sound
On the sleeping city side walk
Sunday morning coming down

日曜の朝の歩道、(こんなザマで教会に行くより)ああ酔いつぶれていたかったよ
日曜ってなんか身体が一人歩きしてるみたいなんだよ
死ぬこと以外にこれほど淋しく感じることはないよ
日曜の朝のまだ眠りこけてるような町の歩道。

Help Me Make It Through the Night(ひとりぽっちの夜)

Take the ribbon from your hair
Shake it loose and let it fall
Laying soft upon my skin
Like the shadows on the wall
All I'm asking is your time
Help me make it through the night

髪を束ねてるリボンを取ってごらん
そう、髪を振って長くおろして
その頭を僕の肌にそっと横たえて
まるで壁に映る影のようにそっと
たった一つのお願いだから
今晩だけ、夜が明けるまで僕のことを支えていて欲しい

恋人と二人で過ごしながらもどうしても消し去ることの出来ない、孤独感。ボニー・レイットの秀作「I can't make you love me」のイメージは、クリスのこの曲から来てると思うのだが。

Turn down the lights, turn down the bed
Turn down these voices inside my head
Lay down with me, tell me no lies
Just hold me close, don't patronize
Cause I can't make you love me if you don't
You can't make your heart feel
Something it won't here in the dark these final hours

灯りを消して、ベッドを寝れるようにして、
私の心の中の雑音を消して
私の横に寝て、嘘は言わないで
じっと抱きしめて、気休めの言葉はやめて
だって、あなたが自分から変えない限り、私にはあなたの心を変えることは出来ないし
あなたは自分の心を偽ることは出来ない
私たちの最後の時間のこの暗闇で、どうしたってそんなことは起こるわけないわ


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