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幸せは撃ったばかりの銃

ビートルズのジョン・レノンのB面的名作に「Happiness is a warm gun」というのがある。「warm gun」というのは撃ったばかりでまだ温かい銃のことで、「幸せは撃ったばかりの銃」というのだが、この意味を僕は長い間性的なものと考えていた。あるいは、それと似たようなコンセプトだが、幸せとは情熱の通り過ぎた後の生暖かい虚しさ、というロマン的な意味もつけてみた。

When I hold you
And I feel my finger on your trigger
I know no one can do me no harm
Becuase happiness is a warm gun

最近読んだウエッブのある掲示板によると、ジョンがこのフレーズを眼にしたのは、マネージャーのジョージ・マーティンがジョンに見せたアメリカの銃マニア雑誌の中の広告だったそうだ。そこには、こう書かれてあった。

Happiness is a warm gun in your hand
Get ready for the long hot summer with a rifle
Come and buy them now

撃った後のまだ温かい銃を手にしてる時ほど幸せな時はないぞ
ライフルを手にして長い、暑い夏に備えよう
さあ、一丁買おうぜ

ジョンはこの広告に虫唾が走ったが、どう言うわけか出だしのフレーズが歌詞として気に入って、それを曲に入れたそうだ。

この曲は後にドラッグ文化のニュアンスがあるということで放送禁止にされたそうだ(確かに、warm gun には使ったばかりの麻薬の注射針、という俗語の意味もある)。「竹田の子守唄」の境遇と似てるではないか。読者の読み必ずしも作者の意図ではない、ということだ。

1980年12月のある朝、僕はアメリカ中西部のグリーンベイという小さな町で脱サラ学生をして「鉛の行動に与える影響」について発表をするために教室に入ったところだった。学生の一人が「・・・が撃たれたのよ」と話をしているのが聞こえた。

「誰が?」
「ジョン・レノンよ、元ビー・・・」

人の記憶が衝撃の大きさに比例するとしたら、僕にとって衝撃だった事件は、ジョン・ケネディの暗殺、三島由紀夫の割腹自殺、9・11自爆テロ、そしてジョン・レノンの殺害だろう。

ジョンが5発の銃弾を撃ちこまれて死んだのは、彼の平和主義メッセージがアメリカの銃文化を刺激しすぎたからだろうか。NRA(全米ライフル協会)が幅を利かせているアメリカは怖いのである。


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