キリオス敗退
ニック・キリオスの株を買うとしたら今でしょう、何しろ底値に近い評価額なのでこの後は上がるしかない、それも近い将来ストップ高になる可能性は十分ある。なにしろテニスの才能と身体能力は誰もが高く評価している21歳、あとは心の問題といえる。オーストラリア・オープン(AO)の二回戦、四大大会ではめったに三回戦を突破したことのない(AOでは2013年と2015年に四回戦まで進出)、現在のランキング80位代後半のアンドレアス・セッピに敗れたキリオス。二セットを先取してあっさり三回戦進出かと地元ファンも期待していただろうに、続く二セットを落とし、最終セットも10-8で大会を去った。キリオスのエネルギーが試合の進むにつれて衰えてきたのは明らかで、第五セットの後半、ちょっと動けば普通に打てる球を、もう動きたくないとでも言うように股間ショット(英tweener)を放つという怠慢さで、これにはコメンターも観客も対戦相手のセッピも驚いた。ちなみに、全力を尽くさずに試合を投げることをtankingというらしいが、昨年もしばしばこの種の非難を受け、とうとう10月の上海トーナメントでの怠慢プレーによって罰金と出場停止を課せられた。インタビューの時、ファンに対して申し訳ないと思いませんかと尋ねられたキリオスは、「いったいそれってどういう意味?観客には別に悪いとは思ってないよ。俺のプレーが気に入らないんだったら見に来なきゃいいんだ」と言いたい放題だった。AOの試合後インタビューでは、不機嫌面ではあったが、悪態もつかず彼としては極めて<紳士的な>対応だった。「(試合後に観客からブーイングを受けたのは)そりゃいい気分じゃないさ、でもこの大会に向けての準備も万全じゃなかったし、体のあちこちがボロボロだったし、だいたい最終セットのスコアはいくつだったんだ、10-8か、そう10-8だったよな」。「(ジョン・マッケンローが、キリオスは試合の後半は全力を出してなかった、とコメントしていたと言われて)体中痛かったんだ。ジョン・マックがそう言ったのか?Good on him, good on him」と答えたのは、皮肉を込めた「あんたは偉いよ」という感じだろうか。「(大会に向けての調整に失敗したのか、と訊かれて)自己管理の失敗だ、多分ね、おれ自身の責任さ、オフシーズンにやらなくてもいいことをやり過ぎた(バスケットボールらしい)、体の状態が万全じゃなかった。人生とは歩みながら学ぶということさ」。「(準備に失敗したというが、将来はどう対処するのか、コーチをつけるのか、と訊かれて)そう、コーチを付けるかどうかは、俺にとっては大問題だ、真剣に検討しなきゃならない問題だ、トップ100の選手の中でコーチがいないのは俺くらいだろう、これはなんとかしなきゃいけない」、キリオスにコーチがいないとは知らなかったが、誰かを雇ったとして、どのくらい持つのだろう、コーチと口喧嘩するのは火を見るより明らかで、悪態に耐えられる忍耐力を持ったコーチを探さないといけない。AO序盤で敗退したキリオス(14シード)以外の男子シード選手は、7シード=マリン・チリッチ、16シード=ルカ・プーユ19シード=ジョン・イズナー、22シード=パブロ・クエバス、26シード=アルベル・ラモス・ビノラス、28シード=フェリシアーノ・ロペス。女子の方はより混戦状態なので(圧倒的に強い選手が少ない)去って行ったシード選手の数は多分もっと多いだろう(確認していないが)。