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一語楽天・美は乱調の蟻

2004.08.28
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滅ぼされたカタリ派 7
1209年に始まったアルビジョア十字軍は、二つの政治的、宗教的野望がその背景にあった。南フランスの地に広まったキリスト教の異端カタリ派を滅ぼし、カトリック教会の宗教的覇権を守るという、ローマ法王イノケンティウス3世の野望。もう一つは、オイル語圏の北フランス勢力が、トゥールーズ家を中心とする南フランス・オック語圏の領土を手に入れようという野望。

1229年、ここまで抵抗していたトゥルーズのレモン7世は、遂にアルビジョア十字軍の攻勢に屈服し、カタリ派の追討に協力すること、トゥルーズの防衛を解くこと、城を明渡すことなどを約束した。これにより、ラングドック地方の独立は終わり、フランス王朝の支配下に入った。1229年11月にトゥルーズに異端審問(Inquisition)が設定された。

異端審問の追っ手を逃れたカタリ派たちは、モンセギュール(Montsegur)に逃げ込んだ。約30人の騎士と150人の兵士を含めて約500人が立て篭もった。カトリック教会から「悪魔のシナゴーグ」と呼ばれた山城。このときテンプル騎士団がモンセギュールを助けたという伝説がある。

カタリ派連載の第3回で触れたカルカソンヌから南東へおよそ80キロ、モンセギュールはピレネー山脈の麓にある。南フランス文化の中心からやや離れているため、アルビジョア十字軍の数十年間の侵攻にも拘らず、このときまで侵攻を免れていた。

標高1207mの岩山(写真A)の頂上に城があったという。現在残っている城跡(写真B)は、最近の調査で(1964年-1976年)、アルビジョア十字軍当時のものではないことが判明した。






写真 A写真 B写真 C
写真をクリックすると若干拡大で見られます。

1243年に始まった包囲作戦は困難を極めた。強大な投石器を射程距離にまで運び上げることができなかったのだ。1244年1月、遂に山の北西の地を奪った十字軍側は、投石器(写真 C)の攻撃で砦に向けて徐々に進んでいった。

1244年3月、モンセギュールの領主ピエール=ロジェ・ミルプワはとうとう降伏することを決め、十字軍側と降伏協定を結んだ。カタリ信仰を捨てさえすれば単なる追放で済む、比較的穏当なものだった。

殆どのカタリのPerfecti(儀式を通過した「完全な者」)はもちろん信仰を捨てることを拒否した。そればかりか、傭兵、騎士、兵士などの中から、26人がConsolamentum(慰めの儀式)を受けカタリに帰依することを選んだ。

降伏協定交渉の休戦期間の前後に、数人のカタリ派信者が山を抜け出したという。この時彼らが何かカタリの秘宝を持ち出したというのが、その後の聖杯伝説のもとになっている。

聖杯伝説はナチの興味を惹き、ナチスのオットー・ラーンは聖杯伝説とカタリの繋がりをもとに2冊の小説を書いた。1982年に出版された「Holy Blood, Holy Grail(レンヌ=ル=シャトーの謎 イエスの血脈と聖杯伝説)」では、カタリ派の持ち出した秘法とはイエスの家計図であったと推測されている。

1244年3月16日の朝、信仰を捨てることを拒否した200人前後のカタリ派信者が、モンセギュールの南側の斜面を下って、用意された火炙りの処刑場に自ら身を投げた。

自由と寛容の一陣の風を吹かせて去っていった、カタリ派。スペインのイスラム教徒やユダヤ人のカバラ主義者達ともネットワークを持ち、聖杯伝説やテンプル騎士団にも関わり、吟遊詩人たちとも共鳴した。カタリ派はしかしやがて来る宗教改革の先駆けとなった。その思想の跡はグノーシス主義にも見出される。カタリ派についてのウエッブサイトは数多くあり、その伝説は人々の興味を捕らえてやまない。

カタリ派は、・・・滅んではいない。






最終更新日  2004.08.29 14:41:15
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