テーマ:テニス(3332)
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アメリカでよく使われる表現に「It ain't over until it's over」というのがある。終わるまで結果はわからないという意味で、形勢の悪い方に僅かの望みをかける時に使われる。昨晩のアンドレ・アガシのヒロイックなパフォーマンスがこの言い方にぴったりだった。結果はニューヨーク時間の午前1時を過ぎて出た。
全米オープンはテニスの4大イヴェントのひとつで、男子の場合5セットのうち3セットを先取しなければならない。アガシの出だしは悪かった、というより対戦相手のジェームス・ブレークの出来が恐ろしくよかった。動きの速さ、威力あるグラウンドストロークの正確さでアガシを圧倒した。ブレークがいきなり2セットをもぎ取ったのだ。第3セットもアガシのサーブを破って3-2とリードした。誰もが35歳アガシの限界を感じた。次世代の一翼を担うブレークにバトンを渡す日が来たのだ、と解説のマッケンローも思っただろう。 アガシ自身はどう感じていたのだろう。「試合が始まった時の感触は悪くなかった。ところが、ブレークがバシバシ打って来るんで、なんか自分もつられてリズムを崩してしまった。」つまり、相手のペースに巻き込まれたのだ。 「Go for broke」という表現がある。太平洋戦争中に日系アメリカ人の部隊がこの言葉を合言葉にして勇猛な戦いぶりを示した。当たって砕けろとかやるっきゃないという感じに訳せる。アガシがそう感じていたかどうかわからないが、見ている僕達にはそう映った。リスキーな左右のコーナーへしっかりときめ始めた。と同時に、息切れしたのか、ブレークがサーブをダブルフォールトし始めた。アガシが第3セットをものにした。 テニスは非常にメンタルなスポーツだ。技量の接近したもの同士の対決、コートの左右の角にボールを正確に打たない限り勝てない。ボールの正確な打ち分けは精神面の強さがないとできない。自信を失くしたら負けだ。 第3セットをとってアガシの自信が復活した。ブレークに焦りが見え始め、なんでもないミスが増えた。第4セットもアガシがとった。 最終の第5セット、エピック・バトル(epic battle)と呼ぶに相応しい二人の打ち合いだった。深夜にもかかわらず1万数千人の観客が一球一打に歓声を送った。試合後アガシが言っていたが、「シュールリアルな(現実を超越した)雰囲気」がミッドナイトの靄のようにアーサー・アッシュ・スタジアムを包み込んでいた。 第5セットはどちらも譲らずタイブレーカーに縺れ込んだ。4大イヴェントのうちで最終セットにタイブレークを実施しているのは全米オープンだけだ。他の大会では、最終セットはどちらかが2ゲーム差にするまで戦われる。1ゲームは4ポイントを最低2ポイント差で先取すれば決まる。タイブレークの場合は、どちらかが7ポイントを最低2ポイント差で先取すれば終わりだ。 タイブレークはアガシが8-6で制し、準決勝への進出が決まった。 ジミー・コナーズを覚えているだろうか。1991年に39歳で全米オープンの準決勝まで進出した、童顔で茶目っ気たっぷり時に審判に食ってかかったサウスポー、マッケンローとともにアメリカのテニス界を代表した男。35歳で準決勝に出るというのはコナーズ以来の快挙だ。 試合後ブレークが言った。「試合に負けてこれほど気分がいいことはまずないだろうな。いつもだったら負けた時ってすごく落ち込むもんだけど、今日は別だね。アガシは俺のアイドルさ。」 「今日の試合までは観衆はずっと俺に声援を送ってくれたけど、今日ばかりはアガシへの声援の方が多かったな。」 「アガシがいつ引退するかって話題になってるけど、俺に言わせると、何でさ、と思う。アガシは今も世界のトップ選手だよ、何で引退しなくちゃいけないんだ。アガシ自身がこのゲームを楽しんで自分を奮い立たせることができるんなら、まだまだ続けるべきだよ。」 一方のアガシは試合後のインタビューで観客に向かってこう言った。「まず最初に一言、真夜中の午前1時15分に2万人もの人がまだ観客席にいる。こんなことってちょっとありえない。今晩の試合で勝ったのは僕でもなければジェームスでもない、今晩勝ったのはテニスというスポーツだと思う。」 試合中はコーチを受けることは許されず自分だけが頼りだ、5セットを勝ち抜くためにはマラソン並みの持久力と100メートル走並みの瞬発力を要求される、チェスやゴルフと同じような集中力と自分に対する自信を持たない限り並み居る強豪に競り勝つことはできない、140マイルのサーブと7色のスピンを確実に把握する眼力と逆にそれを打ち出す筋力を鍛錬すること、左右に打ち分けたりドロップショットで相手を揺さぶったりサーブの場所を分散させる戦略がなければ勝てない、審判の誤審に怒って冷静を失ったらそのゲームはおろかセットも落としかねない、これだけいろいろな面での技量を要求される個人と個人の戦いも珍しい。 深夜の熱戦でその技量のすべてを堪能した観客は、試合終了直後のアガシとブレークの男と男の抱擁に今日味わった感動をもう一重深く心の断層に刻み込んだ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
フェデラー(ゆーぐるとさんに依ればフェデレルが原語読み)はほぼ完璧ですからねー。アガシにはこれといってフェデラーが恐れる武器がないんじゃないかと思うんですよ。ナダールには足の速さと強烈なトップスピンがあったでしょ、だからフェデラーに勝てたと思うんだけど。アガシは正確なグラウンドストロークが武器だから、緊張するとその正確さが乱れる。そうすると終わりですね。だめもとという気持ちでリラックスして行けば、何とか・・・・
(2005.09.12 01:39:37)
夜中の1時半まで決勝戦を見ていました。
ひさしぶりに熱くなった・・・というより、スポーツ観戦きらいなんで、ほとんど熱くなることもないんですが。 アガシの全身全霊をかけた試合はすごかったし、それに答えるフェーデレルも熱かった。 応援席のアガシの奥さんグラフ・・・わたしがテニス少女だったころのみんなの憧れの女性。 ああ、あんなにいい試合なかなかないよな~。 (2005.09.12 18:48:48)
フェデレル、強すぎる、上手すぎる、ここという時に信じられないショットを打つ。アガシには勝ち目なかったですね。アガシ自身が言ってました、サンプラスはまだ弱みがあったけど、フェデレルにはないって。強い時のグラフみたいですね。終わってからアガシはもう抜け殻だったけど、一生懸命フェデレルを褒め称えていたね。それに答えて、フェデレルもアガシを褒めちぎってた。あと何試合もこういうのをやろうなってよびかけてたね。
(2005.09.13 01:12:15)
cozycoachさん
やっぱりね、フェーデルが落ち着きいいみたい。ごめんね何度も。 耳がさ、まだ日本人だからなかなか正確に聞き取ろうとすると困難です(笑) アガシもよくがんばったと思います。前回のフェーデルとの試合のときよりも、驚くほど動いたし、速かったもん。でも、スタミナが10歳も違えば当然違うよね。フェーデルもアガシとの試合はたぶん好きなんだと思う。準々決勝でのヒューイットとも以前2度くらいみたことがあるけれど、ヒューイットも今回は本腰入れていたよね。結婚して子供がこれから生まれる人はやっぱり意気込みが違うなぁって思った。でも、フェーデルは坊さんのように最初から最後まで絶対に取り乱さず、最後の最後では必ずバンカイして強さを発揮するから面白いです。 彼バックはあまり得意ではないのでは?って今回思いました。アガシがバックばっかり攻めていたもん。 (2005.09.13 18:04:30)
そうですか、フェーデルね、なんかスペルからするとフェデレルのほうがいいけどね、現地の報告を信頼しましょう。
そうね、ほとんど取り乱さないのが、すごいね。昔の強豪、スェーデンのビヨン・ボルグみたいだ。でも、こういうストイックな選手は、もちろん尊敬はされるけど、今一人気が出ないんだな、アメリカでは。ナダールなんかは観客を興奮させる要素があるでしょ、だから人気出るんじゃないかな。あ、でもアガシも今ではストイックだな。しかし人気はすごいな。 とにかく、来年の全米はジェームス・ブレークがフェーデルのお相手をします。 (2005.09.14 01:48:16) |
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