一語楽天・美は乱調の蟻

2018/07/14(土)04:09

Forever MineのPV

眠れない夜、例によってユーチューブで羊を数えていたら、山下達郎の「Forever Mine」という曲のPV、短いストーリー仕立てになっている、に出会った。達郎のファンではあるけど、熱心に追いかけてるわけでもなく、たまたま見つけたのが、この曲と「ずっと一緒さ」で、どちらもテレビドラマや映画の主題歌になっていたようだ。 Forever Mine のPV版(2018年7月現在、ユーチューブではPVはすべて削除されたようです、映画のクリップの背景に流れるものはここにあります)が今のところユーチューブにある。これがかなりの傑作で、僕はPVなどほとんど見ないのだが、思わず涙してしまうほどのショートストーリーだ。 「あまりの孤独にその男は悲しんだ」という字幕で始まる、なが~い顔の嶋田久作が演じる浮浪者風の青年、冬の夜のベンチでかじかむ手を息で温めながら、男は何かに憑かれたようにゆっくりと両手を前に伸ばす、ピアノの前奏が始まり、男の両手が見えないピアノを弾き始める、口元には鼻水が垂れ、男は切ない顔で歌いだす、 <僕だけがあなたを守れる、この世界で一人、僕だけがあなたを愛せる、他のどんな誰より> 男の顔と両手とのあいだをカメラは行き来して、<絹の雨にぬれながら、夜明けまでずっと抱きしめていたい、このまま>と、男の切なさは頂点に達したかのように前かがみになった、その時サビが始まる、<さあ、僕の胸で、腕の中で、忘れていた夢の続きを>と高く飛翔するこの部分で男は幾分生気を取り戻し、男の前に幻のようにグランドピアノが現われる。<さあ、呼び覚まして融けてゆこう、僕と本当の愛のしじまへ>、と一番が終わったところで、グランドピアノは掻き消え、代わりに若い女性がホログラムのように出てくる、高津飛鳥というモデルの方らしい、日本人の絶望した青年なら大抵はこのキャスティングに満足するんじゃないかというような、ずば抜けて美人ではない清純な雰囲気の女性で、久作くんの肩に顔を埋めるこの構図は、達郎君の好みだろうか、PVの監督のそれだろうか。 <いつだってあなたを見ていた、意気地なしの黄昏、強がりと孤独なプライド、すべてはもう幻、二度と目覚めなくていい、美しい横顔に崩れ去ってしまえる> <さあ、時の中へ、あなたは今ありのままの自分に戻る、さあ、口づけして落ちていこう、僕と永遠の愛のしじまへ> 達郎の曲や詩はいつものようにかなりの出来だと思うけど、このPVはそれを食ってしまうほどの出来だ、と思うのは僕だけだろうか。

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