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2009.06.05
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テーマ:本日の1冊(3649)
カテゴリ:カテゴリ未分類
ある地方都市の売り場面積的には中程度の書店で、河出書房文庫から出ている哲学者ジル・ドゥルーズと精神分析医フェリックス・ガタリの著作が平積みされていた。だいたい、難解で知られる彼らの本が人口15万ほどの町で何冊売れるんだろう、僕が店主だったらそのスペースはもっと売れる作者のものにするのだが、と余計な心配をしながら、責任者が失職しないように僕が一冊購入してあげたのだ、「アンチ・オイディプス」の上巻を。上下そろえて買わなかったところはさすがに年の功である、買ったところで読み終えるわけがない。

案の定、ぺらぺらとめくっても何が書いてあるのか全くわからない、欲望機械だとか器官なき身体だとか風変わりな言葉が何の定義も無しに戦場の爆弾のように炸裂している。しかし、1972年に出版されたこの著作は、英語のウィキペディアに拠ると、母国フランスではベストセラーであり、英語圏でも頻繁に引用されているそうだ。となると、おいしそうなお菓子や効きそうな薬品のテレビ・コマーシャルに滅法弱い僕としては試してみたいと思う、なんとも大衆消費資本主義の申し子なのだなあ。そしてまさに、コマーシャルで喚起されるような僕の心の衝動もこの本のテーマのひとつに違いない、副題が「資本主義と分裂症」というのだから。

解説書の助けを借りて読み進むと、ドゥルーズ=ガタリのこの本は<欲望>について、(少なくとも僕には)全く新しい見方を提示しているんだと、ぼんやりながらわかってきた。プラトン以来西欧思想の本流では、欲望は欠如に起因すると見られている、何かがないからあるいは足りないから欲する、欲望の対象を獲得することで欠如の穴を埋める。欠如を感じているのは誰か、<私>という主体だ。ドゥルーズ=ガタリはこの従来の欲望のモデルを木っ端微塵にしてしまい、それに代わるモデルを構築するために<機械>という用語・概念を使う。

「いたるところに機械があるのだ。決して隠喩的な意味でいうのではない。連結したり接続したりしているさまざまな機械がある。・・・ある機械は流れを発生させ、別の機械は流れを切断する。乳房はミルクを生産する機械であり、口はこの機械に連結される機械である・・・何かが生産される。この何かは機械のもたらす結果であって、単なる隠喩ではない。」(訳若干変更)。機械と機械の間を流れるのは物質であったり、エネルギーであったり、情報であったり。機械には人格も魂も神秘的な生命も入っていない、機械は構造的な統一体ではない、独立した個体でもなく、工業機械のようにある目的を効率的に達成するシステムとしてのまとまりを持ったものでもない。ドゥルーズ=ガタリはこの機械を欲望する機械(英 desiring machine)と呼ぶ。(訳者の宇野邦一は「欲望機械」と訳しているが、僕は動詞の感触を残すために「欲望する機械」としたい。)

すべては欲望する機械である、という言い方で二つのことが強調される。まず、「欲望する」という表現で、欲望を欠如と捉える伝統的な見方を捨て、欲望をただそこにある、そこに流れるある種のエネルギーと理解する。ネガティブではなくあるがままに見ることで、欲望はコントロールされなければならない何かではなく、ポジティブな何かに変貌する。

二つ目は、「機械」という表現で私という主体をなくしてしまったことだ。機械はあるまとまった主体(私)ではない、別の言い方をすれば、私は機械群を統合してコントロールする主体ではない。赤ん坊が母乳から口を離すとき、赤ん坊という主体がそう選択したわけではなく、欲望する機械の集合としてのある組織体がたまたまそうなっただけなのだ。

というのが、欲望する機械という概念についての(解説書の助けを借りた)僕の解釈なわけだが、松岡正剛はかなり違った見方をしている。
われわれは原始古代からずっと道具や器具を作りつづけてきた。その道具や器具とともに欲望や思索を開発してきたわけである。・・・こうした道具や機械とわれわれの思索や欲望や身体はくっついていると見なしたほうがいい。ドゥルーズ=ガタリはそのように人間の活動と道具や機械がつながっている状態になっていることを「欲望機械」とか「機械状」とかと名付けた。( 松岡正剛の千夜千冊より)
僕にはこの解釈は的外れのように思えるが、欲望する機械をどう見るか、何のためにこういう概念を作り出したのか、このあともう少し読み進めて探ってみたい。






最終更新日  2009.06.06 02:30:05
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